日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第127夜 ビルの受付にて

午後8時を過ぎたくらいに、ビルの前に立っていました。
10階建てのビルですが、そこの5階に勤務先があります。
出先から戻るのが、この時間になったということですね。

ああ、ここは昔勤めていた会社だ。
玄関のガラス窓に映る顔は、26、27歳くらい。よって、私がまだ院生で、かつ研究所勤務だった頃の設定になってます。
これって、夢だよね。(最近は夢の中で、夢にいるという実感があります。)

玄関から中に入ると、右手に受付のカウンターがあります。いつも、夕方までは女性が座っていますが、夜は守衛の男の人が座っていることになってます。
しかし、見たところ、今夜は誰もいません。

誰もいないや。この辺は事務所荒らしが多いのに無用心だな。
セキュリティ・ロックとかが無い時代なので、9時に玄関を閉めたら、ガードマンが頼りです。

エレベータに向かいます。
ドアの前で、スイッチを押そうとすると、ランプが消えています。
故障かよ。
5階とはいえ、階段を上がるのはキツイぞ。今日はたっぷり働かされたからなあ。
非常階段に向かいますが、こちらのドアには鍵が掛かってます。
守衛のオジサンを待つしかないわけね。
案内まで戻り、椅子に座ります。

そのまま10分くらい座っていますが、誰も戻ってきません。
9時に近くなって、照明が半分落ちてしまいます。節電だけは自動で動きます。
あと10分で全館が閉まるわけね。
ぼーっとしていると、不意に目の前に女の子が現れました。
まだ5歳になるかならないかくらいの子どもです。

夢に出てくる最初の異性は「自分の心が形を替えたもの」というなあ。ってことは、差し詰めこの子は、オレ自身かあ。
一瞬、そう考えます。

「独りでどうしたの?」
「お母さんを探しに来たの」
「ふうん。この中にいるの?」
うん、と女の子はこっくり頷きます。
「じゃあ。呼んであげようか」
また、こっくり。
「何階?」
「10階に行くって言ってた」

受付のカウンターの裏に回り、マイクのスイッチを入れます。
こんな機械は使ったことが無いので、テキトーです。
「お名前はなんていうの?」
「さくら」
「名字は?」
「サカシタ」

「えー。緊急連絡です。サカシタさくらちゃんのお母さんが館内にいらしたら、玄関までお願いします。さくらちゃんが待ってます」
10階のフロアだけでなく、全館放送になってしまいました。
やや恐縮します。

10分経ってもやはり誰も来ません。
「お母さんどうしたかな」
女の子は下を向いてます。
ここで、さっきはエレベータが動いていなかったことに気付き、エレベータに向かいます。
やっぱり、ランプが消えていて、横に回ったところにある非常階段にも鍵が掛かってます。
「これじゃあ、ここに来ようとしても来られないよね」

チン。
背後で音がしました。
エレベータのドアが開いた音です。
あれ、動いてるじゃん。

もう一度エレベータ側に回って見ると、受付近くには女性が立ってます。
35、6歳の痩せた女性でした。

「さくらちゃんのお母さん?」
女性は無表情にこっくり頷きます。
「良かった。さくらちゃんがここでずっと待っていたんですよ」
女性は、女の子の右手を取ります。
「どこ行ってたの。一緒にいなさいと言ったのに」
この女性の声は、細々と沈んだ声した。
女の子の方は、俯いて床を見ています。
「お母さん。もう家に帰ろうよ」
女の子は小さく呟いてます。

女性は、女の子の手を引き、エレベータの方に歩き始めます。
女の子は、半べそを掻き、「もう帰ろうよ」と何度も言ってます。
この辺で、私はようやく不審に思い始めます。
おかしいな。このビルにはオフィスしか入っていないはずなのに。
この時間に、母子が何の用でここに来てるのかな。
鳩尾の辺りがずしっと重くなります。

チン。
エレベータのドアが閉まりました。
小走りで前まで行くと、エレベータはさっきと同じに、灯りが全部消えてます。
「何これ!」
嫌~な感触です。

マイクを使って、守衛のオジサンを呼ぼう。
受付のところへ走ります。
スイッチを入れ、声を出そうとしました。

どっしーん。
玄関の外でとんでもなく大きく、重い音がしました。
ちょうど、人が2人、屋上から落ちたような音です。
ああ、やめてくれえ。
母親が娘と心中するのを、オレが幇助しちまったわけなの?
とてつもなく暗い気持ちになります。

ここで覚醒。

何を象徴する夢なのか、今のところ全く分かりません。