日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第256夜 自動ドア

昨夕、仮眠を取った時に観た短い夢です。

目が醒めると、ホテルのロビーのようなフロアに立っている。
「あれ。ここはどこ?オレは誰?」
すぐに思い出す。
オレは会社の経営者で35歳。ここには人と会うために来たのだ。

平日の昼のホテル。
誰に会うかと言えば、もちろん、女性だ。
オレは妻子持ちなので、夜や週末は使えない。
だいたい、仕事が忙しすぎて、平日の昼飯時の数時間しか、空いた時間はない。
世の中には、あまり働いていないのに、羽振りの良い「青年実業家」がいるが、ソイツが働いているのではなく、金が勝手に働いているのだ。
その証拠に、見栄えの良い青年実業家は、10年も経たぬうちに皆落ちぶれてしまう。
金が独りで働いているのに気づかず、「自分の能力」を過信してしまうからだ。

しかし、実際の青年実業家たちは、夜昼あきれるほど働いている。
仕事のことを考えるので、ろくに眠れないし、それ以上に先のことを画策するのが楽しい。
そうでなければ、勤め人のほうがはるかにましな境遇だ。
何せ経営者は、奴隷のように働いても、結果的に借金を背負うことがよくある。
勤め人は会社が潰れて、給料が貰えないことはあっても、役員として保証を入れていない限り、ゼロまでで済む。
経営者は、概ね割の合わない身の上だ。

脳の中では、事業欲は、たぶん性欲に近いところにある。
事業拡大に精を出すオヤジは、もちろん、女性にも関心がある。
営業目的の接待は欠かせないわけだし、すぐ身近なところにきれいな女性がごまんといる。

だが、オレが密会しているのは、かつての大学の同級生だ。
もはやいいトシだし、亭主と子どもがいる。
女性としての魅力は、もはやぎりぎりだ。
美貌だけでゼニが取れるのは、やはり「アラ30」までだろう。
しかし、オレはこの女性とは、妙に馬が合う。
若い頃の時間を共有しているので、気が楽だからだろう。
お互いに、絶対に秘密を守らねばならないが、こちらがガードを下げても、相手も警戒を怠らないので、安全だ。
電話やメールは一切寄こさないが、決まった日の同じ時刻に、必ずここのレストランに来る。
都合が悪くて、片方が来られない時は、独りでゆっくり食事をして帰るのだ。
暗黙の了解ってヤツだ。

しかし、テーブルに座り、予定の時刻がきても、その女性が来ない。
「今日は何か用事が出来たんだな」
オレはあまり食欲が無かったので、シャンパンだけを頼んだ。
いつものウエイターがグラスを運んで来る。
視線が何かを伝えたそうだ。
「ん。何?」
このウエイターとは気心が知れており、一度、地方の祭り見物に連れて行ったりした。
ウエイターが目配せをする。
「いらしてますよ。昨夜から」
オレと同じくらいの年恰好のウエイターは、ひと言そう言うとすぐに立ち去った。
「ここに泊まってたのか」
なら、あの部屋だな。

すぐに立ち上がり、レストランの外に出た。
なんとなく、いつもの部屋の方に向かう。
30階でエレベータを降り、廊下の一番奥の部屋がその「いつもの部屋」だ。

その部屋のほうに歩いて行くが、途中で「あること」に気がついた。
「前の日から泊まっているのに、レストランには来ない。なら来ないなりの事情か理由があるんだろうな」
部屋の前に着くと、ドアが半開き。
ドアの下に扉止めが挟んである。
ちょっと自動販売機まで飲み物を買いに行きました。そんな状況だ。

てことは、中には2人以上の人がいるわけだ。
「こりゃいかん」
男と一緒だろ。
ドアに背中を向けて、もう一度エレベータの方に戻る。
エレベータの近くには販売機コーナーがあるが、その前を通った時に、ちょうど男が出てきた。
「ありゃ。こいつはミュージシャンの・・・」
かつて「かなり売れた二人組の歌手」の片割れだ。
「なるほど。昨夜からコイツと派手に過ごしているわけだな」
シャブでも使ってたりして。

「仕方ないな」
その女は若い頃から男出入りが派手だった。
学生時代だって、まさに「入れ食い」の状態。いつも違う男を連れて歩いていた。
当時もオレと出来ていたが、オレは女性に対する独占欲が薄く、自分が「その女が付き合う男たちの1人」でも気にしない性格だ。
むしろ、のめり込んでくれないほうが有難い。
「結婚して」とは言わず、「子供ができた」とブラフを仕掛けることもしない女の方が、オレにとっては助かる。言わば、ストーカーの真逆の考え方だ。

「今はまるで自動ドアなんだよな」
気づかぬうちに、オレの隣にあのウエイターが立っていた。
ワインと何か軽い料理を運んできたのだ。
「誰が来ても、すぐに扉が開く。トシを取ってきたら、一層こうなってきた」
ああ、あの部屋に持って行くんだな。
オレもウエイターに頷き返す。。
「本当だよな。あの女の男の中に、もし独占欲の強い男が混じってたら、刃傷沙汰まで起きそうだ」
ここで「昔からこうなんだよな」とウエイターが呟く。

(ありゃ。お前もあの女に関わってるの?)
このオレの視線に気づいたのか、ウエイターがぼそっと呟く。
「実は私はあの女の亭主だったんですよ」

ここで覚醒。

なんだか不思議な夢でした。
深く関わっているのに、女性とは恋愛関係ではなくて、まるで友だちのよう。
その「前のダンナ」のウエイターも、あっさり・さっぱりと恬淡とした物腰でした。