日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

(相撲)八百長のどこが悪いのか

プロレスの試合の醍醐味は、相手の技を正面から受けて、これを跳ね返しつつ、ねじ伏せるというものです。
相手の繰り出すチョップを、逃げずに胸で受け止めるのは、それがプロレスだから。
もし中途半端に逃げようとすると、偶然、急所に当たり命に係わるかもしれない。
 
昔、キラー・カーンというレスラーが、大巨人アンドレ・ザ・ジャイアントにコーナポストからニードロップを敢行したのですが、それが偶然、アンドレの脚に当たり、アンドレが骨折したことがあります。
当たり所が悪ければ、骨折どころか死ぬ場合も多々あります。2代目タイガーマスク三沢光晴選手が試合中に亡くなった事故も、まだ記憶に新しいですね。
 
怪我をしたら、興行を生業とするレスラーは、飯の食い上げです。休んでしまえば、生活の保証がありません。
相手が技を繰り出そうとしたら、正面から受けるほうが安全だという意味もあります。
コーナーからのニードロップは、完全にかわす体力がないのなら、じっとしていて胸で受けるほうが危険が少なくなります。
しかし、かつては、そのことを「八百長だ」という人がいました。
明らかに当たりに行ってる。そんなの真剣勝負ではない、というわけです。
 
格闘技での「真剣勝負」とは、要するに、命の取り合いのことですよ。
これはナンセンスな話で、毎試合毎試合、選手生命を賭けてはいられないし、それに見合う報酬を選手たちは貰っていません。
数年前の大晦日に行われた総合格闘技のイベントで、Aという選手は、逆関節を決めた後、攻撃の手を緩めず、相手の肩の骨を折ってしまいました。
その場面は、テレビ観戦でも、不快なこと不快なこと。
格闘技も、「客に見せる」ものですよ。技術や体力を較べてこそ、面白いのであって、ただの殺し合いなら、刀を振り回し、棒で殴れば良いという話です。そんなの誰が見たいですか。
 
相撲の八百長の話も、一方的に力士たちが、ファンを騙している図式にされていますが、酷いのは相撲のシステムです。
30歳を過ぎた男に相撲を取らせるのに、給料を払わないってことが、他のどんな世界に存在しますか。
相撲協会は毎年3億円の留保金を出しているとのこと。もし最低保証ラインを500万に設定すれば、あと60人には報酬を払えます。
もしくは、勝ち星に応じ、報奨金を払うとか、成績が上がればその都度報酬が貰えるシステムも考えられます。
そういう方向に変えなければ、同じ事は何度も起きます。
月給百万円が、来場所からゼロになるのでは、たまらない。
ちょっとした怪我で、生活できなくなってしまいます。
そんな不安を毎場所抱えていたのでは、力士たちのやる気も失せてしまいます。
 
真剣勝負を求めるなら、それに見合う報酬にしないとね。
裾野の力士に犠牲を強いる運営方法が間違っていたのであって、力士のモラルを問うのは、あまりに酷だろうと思います。
相撲を国技だと言うなら、公務員にしてやれよ!
 
タダで働かせているのに、モラルを求めるなんてこと自体が誤りですよ。
それで、今のご時勢で、誰が力士になろうと思いますか。
日本人力士が弱くなるのも、番付下位の力士に八百長が起きるのも、システム自体が時代に合わなくなっているからですよ。
私は、とても八百長力士たちのことを責める気になりませんね。