日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

思いやりのない社会

昨年、震災津波復興支援政策の一環として、被災地の高速道が無料だった時期があります。
対象となったインターチェンジを通ると、それまでの高速料金が無料になりました。
この時、被災地とそうでない地域の境目になる福島のICでは、関東を迂回してそこを出口とする大型トラックが多数出現し、これが問題となりました。
 
この時のメディアの論調は、「支援活動を悪用するあこぎなドライバーがいる」「不正通行だ」というものでした。
わざわざ、ICの近くまで撮影に行き、「ほれみたことか」の画像を流しました。
もちろん、本来の意図からみれば、確かに不正通行と言われても致し方ありません。
 
しかし、なぜ大型ドライバーの皆さんが、わざわざ迂回してまでして、無料で通ろうとしたか、考えてみた人はいるでしょうか。
仕事なんだから、高速料金は必要経費だろうに、なぜ無料にしたいのか。
自分のお小遣いにでもするつもり?
 
もちろん、全然違います。
大型トラックの輸送での必要経費は、人件費と燃料費のみで、高速料金は入っていません。
500キロだろうが、1千キロだろうが、一般道を走る勘定です。
しかし、宅急便を例に取るとわかりよいですが、いまや島嶼部を除き、ほとんどの地域で翌日配送の時代となっています。
到着時間の制限ももちろんありますので、もし間に合わなさそうな場合は、ドライバーは自分の懐から高速料金を捻出します。
関西から関東へ輸送する規模となったら、高速料金で報酬が飛んでしまいそうです。
こういう事情から、わざわざ遠回りしてまで福島に向かったのです。
 
もちろん、「だからやってよい」という言い訳にはなりません。
しかし、ある程度、事情を汲んであげる心の持ちようも必要です。
鬼の首を取ったように、「こんな不正ドライバーがいる」と報道したメディアの姿勢には、賛成しかねます。
 
日本社会全般に、余裕の無さが蔓延しています。
他の人の事情を思いやる姿勢は薄れ、短絡的、一面的な捉え方になっています。
「刺青=悪」という大阪の考え方も同じで、「1かゼロか」で仕切る風潮がまかりとおる。
他人の落ち度をあげつらう寸前に、「状況をよく推し量る」ことが、必要だろうと感じます。