日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第187夜 死ぬ夢

土曜の夜はほとんど寝ずに仕事をし、眠りについたのが朝方です。
ダルビッシュ、川崎選手の出た試合を見ながら、延長13回くらいで眠り込んでいました。
すぐに夢を見始めます。
 
気がつくと、私は病院のベッドの上にいました。
心臓の病気が悪化したので、長らく入院することになったのです。
突然、ドキドキと動悸が始まったかと思うと、鳩尾がズキズキ痛み出し、動けなくなったしまいます。
 
目の前には医師がいました。
「いよいよ移植が必要ですね」
「・・・」
「番号が近いですから、適合する心臓が出ればすぐに手術をします」
「そうですか」
いよいよ手術か。治療を待っているうちに、いつの間にか五十台に達していました。
病気になってから、「移植の必要ある」と言われていました。
ところが、その手術を待つ患者は私の前に200人以上いました。
絶対に自分の順番は来ないと思っていたのですが、手術を待つ前の人たちはドナーが現れる前に次々に亡くなって行きました。
私は2年間持ち堪えたので、次の番になれるのです。
 
医師が去った後、何気なく向かいのベッドに目をやると、高校生くらいの男の子が寝ていました。
顔には酸素マスク。苦しそうです。
ああ、この子は・・・。
私と同じ病気で、しかも、私よりも悪くなっています。
その子は最近入院したばかりですが、もはや重篤患者でした。
 
看護師さんが近くにいましたので、話しかけます。
「あの子はオレより症状が重い。オレみたいなオヤジジイより、あの子の方を優先すべきじゃないの?」
背が高く、腕の太い看護師が答えます。
「きまりですからね。こればかりは」
登録した順になっているのです。
「そうかあ」
眼を戻すと、男の子は苦しそうに息をしていました。
 
数日後。
医師が急ぎ足で病室を訪れました。
「Kさん。心臓が出ました。3時間後に手術です」
どなたかが脳死状態になったのです。
心臓移植は誰かの死が前提でなりたっていますので、受ける側としても複雑な気持ちです。
「はい」
今日明日中に、この先生き残れるかが決まります。
手術中に亡くなる例もありますので、あと何時間化の命かもしれません。
 
医師が去った後、視線を向かい側に向けると、やはり高校生が苦しそうに呻いていました。
ここで私はある決断をしました。
呼び出しのベルを押します。
「どうしましたか?」
「〇〇先生をお願いします」
医師が再び病室に来ました。
 
「先生。向かいの子は適合しないのですか」
ベッドの前に下がった札には、私と同じ血液型が書いてありました。
「Kさんより、いくらかパーセンテージが低いんです」
「私のことを抜いたら、可能性はあるんですか」
「はい」
私は自分で決めたことを話します。
「じゃあ、今の心臓はあの子にあげてください。あげるという表現はドナーの方に対して適切な表現ではないと思いますが、今は火急の事態ですので」
「しかし、Kさんも2年待っておられたんでしょ」
「私は若い頃から、十分に人生を楽しんで生きてきました。この齢でなにも他人の命を踏み台にして長生きをしようとは思いません。でも高校生には、私よりももっと多くの時間が必要です。もう数時間で心臓が届きますよね。私が辞退したら、次の順番の人には間に合いません。ならあの子に」
医師はしばらく沈黙していましたが、ようやく口を開きます。
「前例がありませんので、少し他の医師と相談して来ます」
「はい」
 
医師が去った後、視線を戻すと、向かいの高校生が目覚めています。
私たちの話を聞いていたのです。
私はその高校生に向かって、Vサインをしました。
「腹をすえろよ。坊や。すぐに手術になるからな」
高校生が小さく頷きます。
 
ここで私は、トイレに行こうとベッドの脇に下りました。
2、3歩前に進むと、鳩尾がびくびくと動きました。
不整脈が始まりそうです。
またベッドに戻り、横になりました。
鳩尾から胸全体がずしんと重くなってきました。
これは・・・。
最初に倒れた時と同じです。
 
ベルをならそうかと手を伸ばし、途中で止めました。
なるほど。オレが手術できない状態なら、次はスンナリあの子になるわけです。
そっか。
人生の最後くらいは、人のためになることをしないとね。
私の心臓はいよいよ不規則なリズムを叩き始めました。
 
ここで覚醒。
死ぬ夢ですが、夢の中で死ぬのは、開運の証と言われています。
どういうことなんでしょ。