◎死刑宣告を覚悟したが
普段、週に三日通っている病院の方は、それぞれが非常勤医師の担当になっている。その上、その担当が数週で交代したりする。
カルテに目を通すのは1分で、それで診断を下すから、かなり怪しい。そもそも診断そのものが医師毎に違ったりする。
「アレルギーが原因で食欲が失せている」と話すと、前半をまるで聞いておらず、「食欲」だけ耳に残ったのか、「胃カメラをやりましょう」というタコ医者までいる。
そもそも三人とも「藪」を超える「蛸」の域だ。
「こいつらに四の五の言われ、その都度方針を替えられたら、命が幾つあっても足りない」と思ったので、心臓の主治医の病院に行くことにした。
これが今日十八日の話。
検査結果の送りを持参したが、レントゲンと心電図はやはり採り直した。これは当たり前だ。
ここで問診となったが、医師は私と同じ年格好だから、気易く話せる。
「三月にアレルギー症が酷くなり、そこから気管支炎、肺炎みたいな症状に発展し、ぜんそくに進んで、今はその喘息がのこっているんですよ。心臓喘息なら怖いと思って来ました」
心臓喘息なら心不全のかなり進んだ状態で、事実上、死刑宣告に近い。最初の一年で20%が死ぬ。五年で50%になっているが、これは概ね心臓だけ病気の人。私などは腎臓など他にも持病があるから、多臓器不全症で、ほぼ「死ぬ20%の内」「50%の内」になる。確実に棺桶行きで、末期がん患者よりも先行きは暗い。
すると医師はあっさりと答えた。
「心臓は特に悪化したわけではないようです。レントゲンで見ると、肺にだいぶ水が溜まっていますね。腎臓の医師と相談して除水量を増やして貰って下さい」
なあるほど。私も「心臓ではない」と思っていた。心筋梗塞だろうが心不全だろうが、複数回経験があるので、「その症状とは違う」ことは分かる。
ま、現状では血中酸素飽和度が90を切ったりするので、入院してもおかしくない状態のようだ。
これで途端に気が楽になる。
医師は「専門医であればすぐに分かる筈だけどね」と言う。
いやいや、人間のお医者さんなら分かるかもしれんが、「タコ」じゃあね。
三人集めてもタコはタコのまま。
これからが大変だ。私は悪戯者で皮肉屋だから、いつ何時タコ連中をからかってしまうかもしれん。しかも都市生活者をからかう時よりも数段上のキツいやつでだ。
ぞれに気付いたら、世間の荒波に揉まれたことのない知識人は「この患者を殺そう」と思うだろうな。
さて、今日の内に「即死刑」の宣告を受けたりはしなかったようだが、「ほとんど入院が必要な状態」であることには間違いない。
何とか乗り切って、土俵の中で勝負しなくては。
いつも「崖っぷち」「徳俵の上」でダンスをしている気分だ。
ちなみに、「息が苦しい」に加え、「血圧の上昇」、「喉や脇の下の鈍痛」「鳩尾が重い」などが重ねて現れたら、まずは心筋梗塞だ。症状は一二分で消えるが、「治った」わけではない。
予行演習なしに「突然死」を迎えることがあるので、中高年は要注意だ。
ところで、最近、五六㍍近くに「母」の気配を感じることが増えたから、かなりビビっていた。姿は見えずともさすがに気配で母と分かる。四十数キロの体重と息遣いを感じる。
母が「お迎え」に来たかと思い、かなりビビったが、実際には心配して見に来てくれていたわけだ。
これじゃあ、まるで「死に掛けの息子 死せる母を走らす」だな。