今朝方に観た短い夢です。
オレはマンションの13階に住んでいる。
ネットオークションで物を売っているので、郵便物を日に30通は出す。
毎朝、沢山の封筒や小包を抱え、エレベーターで上り下り。
ある日、いつものように郵便物を抱えて階下に降りた。
エレベーターの扉が開き、フロアに出る。
玄関口から外に出ようとすると、後ろから声を掛けられた。
若い男が立っている。
「コンニチハ」
ああ、この男は同じマンションで暮らしているらしい外国人だ。
日本人の若いヤツと違い、会う度にきちんと挨拶をする。
この国の子には、しっかりした若者も多い。
「これから郵便局に行かれますか?」
敬語だった。
きちんと日本語を学んでいるんだな。
「そうだよ」
「じゃあ、お願い事をしても良いですか。この封筒を一緒に出して頂きたいのですが、ダメですか?」
手元を見ると、A4サイズの封筒で、見たところ、数十枚の書類が入っているように見える。
「切手貼ってある?出すだけでいいなら、局内のポストに入れてあげる」
若者が微笑む。
「全部やってあります。出すだけで結構です」
「じゃあ、いいや」
30通も出すのだから、1通2通増えたところでどおってことはない。
車で郵便局に向かい、窓口に立った。
「差し出しだけです。全部に切手を貼ってあります」
オレの出した封筒の束を局員が受け取り、ひとつ1つ重さを量り始める。
早く済むように、規格を揃え、同じ金種の切手を貼ってあった。
女性局員の手が止まった。
「これ。口が破れていますよ。貼っておきますか?」
イケネ。あの若者のヤツだ。封筒を抱えて車から降りる時に、「ビリッ」と音がしたが、あの子の封筒だったか。
「すいません。貼り直してください」
この局員は若いのに、よく気が回る。
しかも、数人しかいない小さな局で働いている割には、かなりの美人だ。
身長がそれほど高くないのでモデルは難しいだろうが、●K●ならかなりきれいな方だろう。
そんなくだらないことを、立ったままぼおっと考えた。
女性局員がスティック糊で、敗れた所の周りを擦る。
その拍子に、封筒の中身がちらっと見えた。
中は切手のような紙の束だった。もしくはシールだな。
「あれ?」
女性局員が声を上げた。
「この住所間違ってますよ」
局員が指差したのは、差出人の方だった。
「ソンさん。ほら。これはこの市内の住所ですよね。ところが、こんな町丁は無いですね」
「オレはソンじゃないよ。これは他人から預かっただけなんだ」
封筒を覗き込むと、確かに、よく似ているが違う住所が書いてある。おまけに郵便番号がデタラメだ。
これじゃあ、日本の反対側だよな。
「書き直します?ソン・セイギさん」
「オレはソンじゃないよ。それは同じマンションに住むヤツから頼まれたんだ」
ここで、オレは今の事態とよく似た話を思い出した。
「ちょっと持ってって」と軽く言われ、安請け負いで運ぼうとしたら、中身が違法な物だった。
そんな話はよくある。
外国なら、運び屋にされる典型的な例だから、「旅先で気を付けるべき事柄」の筆頭だ。
旅慣れていれば、これに引っ掛かるヤツはいない。
これで騙されるのは、よほどの無知か、確信犯だ。
運び屋をやらせようとするヤツらだって、成功率が低いこの方法で、大金を無駄に捨てたりはしない。
大体は「自分は頼まれただけ」という言い訳にしているのだ。
振り込め詐欺で、金を取りに行く役目のヤツが、「オレは取って来いと言われただけ」と言い訳するのと同じで、もちろん自分が何をやっているのかは承知している。
だが今はこの国の中の話だ。
人に頼むより、自分で運んだ方が早いし、安全だろ。
しかし、さっき見た中身は気になる。
紙に麻薬を染み込ませる手口だってあるからな。
「ちょっと待ってくれる?この封筒だけは、出さなくともいいや。やはりオレに頼んだヤツに返そう」
オレは女性局員に向かって、右手を出した。
局員は一旦、オレのことを見て、それから横の机の男の方に目をやった。
男が立ち上がって、カウンターの横に立った。
「ちょっと待ってくださいね。ソン・マサヨシさん」
「オレはソンじゃないって言ったろ」
不味いなあ。嫌な展開になってきた。
「私は麻薬課の刑事です。今は特別警戒中で、捜査のためにこの局に来ています」
後ろの扉が開き、もう1人の男が入ってくる。こちらは制服姿で、あろうことか犬を連れていた。
ありゃりゃ。あれって麻薬犬?
犬の鼻先に封筒が差し出される。
犬は瞬時に「ワンワン」と吠えた。
「畜生。アイツめ。オレを嵌めやがったな」
やはり、オレはあの国のヤツに関わると、ロクなことが無い。
この話が終わったら、誰でも良いからあの国のヤツを何人かぶっ殺そう。
だがオレも不良の仲間だ。
叩かれると埃が出る。
この局面を乗り切るのはやっかいだぞ。
ここで覚醒。