日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第279夜  替りに出して

今朝方に観た短い夢です。

オレはマンションの13階に住んでいる。
ネットオークションで物を売っているので、郵便物を日に30通は出す。
毎朝、沢山の封筒や小包を抱え、エレベーターで上り下り。

ある日、いつものように郵便物を抱えて階下に降りた。
エレベーターの扉が開き、フロアに出る。
玄関口から外に出ようとすると、後ろから声を掛けられた。

若い男が立っている。
「コンニチハ」
ああ、この男は同じマンションで暮らしているらしい外国人だ。
日本人の若いヤツと違い、会う度にきちんと挨拶をする。
この国の子には、しっかりした若者も多い。

「これから郵便局に行かれますか?」
敬語だった。
きちんと日本語を学んでいるんだな。
「そうだよ」
「じゃあ、お願い事をしても良いですか。この封筒を一緒に出して頂きたいのですが、ダメですか?」
手元を見ると、A4サイズの封筒で、見たところ、数十枚の書類が入っているように見える。
「切手貼ってある?出すだけでいいなら、局内のポストに入れてあげる」
若者が微笑む。
「全部やってあります。出すだけで結構です」
「じゃあ、いいや」
30通も出すのだから、1通2通増えたところでどおってことはない。

車で郵便局に向かい、窓口に立った。
「差し出しだけです。全部に切手を貼ってあります」
オレの出した封筒の束を局員が受け取り、ひとつ1つ重さを量り始める。
早く済むように、規格を揃え、同じ金種の切手を貼ってあった。

女性局員の手が止まった。
「これ。口が破れていますよ。貼っておきますか?」
イケネ。あの若者のヤツだ。封筒を抱えて車から降りる時に、「ビリッ」と音がしたが、あの子の封筒だったか。
「すいません。貼り直してください」
この局員は若いのに、よく気が回る。
しかも、数人しかいない小さな局で働いている割には、かなりの美人だ。
身長がそれほど高くないのでモデルは難しいだろうが、●K●ならかなりきれいな方だろう。
そんなくだらないことを、立ったままぼおっと考えた。

女性局員がスティック糊で、敗れた所の周りを擦る。
その拍子に、封筒の中身がちらっと見えた。
中は切手のような紙の束だった。もしくはシールだな。

「あれ?」
女性局員が声を上げた。
「この住所間違ってますよ」
局員が指差したのは、差出人の方だった。
「ソンさん。ほら。これはこの市内の住所ですよね。ところが、こんな町丁は無いですね」
「オレはソンじゃないよ。これは他人から預かっただけなんだ」
封筒を覗き込むと、確かに、よく似ているが違う住所が書いてある。おまけに郵便番号がデタラメだ。
これじゃあ、日本の反対側だよな。

「書き直します?ソン・セイギさん」
「オレはソンじゃないよ。それは同じマンションに住むヤツから頼まれたんだ」
ここで、オレは今の事態とよく似た話を思い出した。

「ちょっと持ってって」と軽く言われ、安請け負いで運ぼうとしたら、中身が違法な物だった。
そんな話はよくある。
外国なら、運び屋にされる典型的な例だから、「旅先で気を付けるべき事柄」の筆頭だ。
旅慣れていれば、これに引っ掛かるヤツはいない。
これで騙されるのは、よほどの無知か、確信犯だ。
運び屋をやらせようとするヤツらだって、成功率が低いこの方法で、大金を無駄に捨てたりはしない。
大体は「自分は頼まれただけ」という言い訳にしているのだ。
振り込め詐欺で、金を取りに行く役目のヤツが、「オレは取って来いと言われただけ」と言い訳するのと同じで、もちろん自分が何をやっているのかは承知している。

だが今はこの国の中の話だ。
人に頼むより、自分で運んだ方が早いし、安全だろ。

しかし、さっき見た中身は気になる。
紙に麻薬を染み込ませる手口だってあるからな。
「ちょっと待ってくれる?この封筒だけは、出さなくともいいや。やはりオレに頼んだヤツに返そう」
オレは女性局員に向かって、右手を出した。
局員は一旦、オレのことを見て、それから横の机の男の方に目をやった。

男が立ち上がって、カウンターの横に立った。
「ちょっと待ってくださいね。ソン・マサヨシさん」
「オレはソンじゃないって言ったろ」
不味いなあ。嫌な展開になってきた。
「私は麻薬課の刑事です。今は特別警戒中で、捜査のためにこの局に来ています」
後ろの扉が開き、もう1人の男が入ってくる。こちらは制服姿で、あろうことか犬を連れていた。
ありゃりゃ。あれって麻薬犬?

犬の鼻先に封筒が差し出される。
犬は瞬時に「ワンワン」と吠えた。
「畜生。アイツめ。オレを嵌めやがったな」
やはり、オレはあの国のヤツに関わると、ロクなことが無い。
この話が終わったら、誰でも良いからあの国のヤツを何人かぶっ殺そう。

だがオレも不良の仲間だ。
叩かれると埃が出る。
この局面を乗り切るのはやっかいだぞ。

ここで覚醒。