日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第383夜 石造りの宝箱

2夜続けて、息子、娘と一緒に、映画の「美女と野獣」を観ています。
昨夜がドイツ映画、今夜がフランス映画で、いずれ「昔のディズニー映画を観直したり、米国実写版を観るようにすれば、国民性の違いが分かるんじゃ?」というのが次女の意見です。
父子で映画を一緒に観る機会など、子どもたちが小学生の時くらいまで。
それなら、と付き合うわけですが、いつも開始15分で父親は寝入ってしまいます。
目が覚めるのは、ラスト5分です(苦笑)。
話が合わなくなるので、父のみ朝方にもう一度観ることにしています。

これは映画が始まって、いつも通り寝てしまった時に観た夢です。
(目覚めてすぐに書き始めたので、誤変換が多数出るかもしれません。)

私は28歳。夫と2人で会社を経営していたが、ついに倒産することになった。
借金はかなりの額で、とても返せない。
たとえ首を吊ったとしても、債権者が許してはくれない額だ。

いよいよという時になり、夫が言った。
「これではどうにもならない。金貸したちが『返せ』と叫ぶ姿を観るのはもうウンザリだ。逃げよう」
夫は有無を言わさず、私を車に乗せ、家を出発した。

夫の田舎は北国だが、そっちに逃げたのではすぐに見つかる。
そこで、私たち夫婦は自分とは縁も所縁も無い南の島に行くことにした。
その島は、夫がかつて仕事のため訪問したことのある島で、人はほとんど住んでいない。
さらに夫は前回ここを訪れた際に、人が一切立ち入ることの無い崖下に洞窟を見つけていた。
そしてその洞窟には、昔は人が住んでいたらしく、住居の跡が残っている。

「ほとぼりが冷めるまで、ここで暮らそう」
崖の上に上げれば真水はあるし、魚や貝類などがふんだんに獲れるから、食べ物には困らない。
まあ、住居跡だけは古くて、今にも崩れ落ちそうだが、洞窟の中なので、雨風をしのぐことは出来る。
温暖な島なので、裸同然でも暮らすことが可能だった。

しかし、さすがに古い住居跡で、すぐに床に穴が開いた。
「床板だけは替えないといかんな」
夫が床下を覗き込んだ。
「ありゃ。こりゃ何だ」
私も夫の隣で下を見た。床の下には、真下に向かって穴が掘ってあった。
階段も付いているから、その中に降りることが出来る。
「ここは何だろう」
夫と私はこの穴の中に入ってみることにした。

20段くらいの階段を降りると、思ったより広い部屋に出た。
20畳はありそうな部屋だ。
おまけに、奥には扉があり、さらにその奥にも部屋があった。
扉を開き、そっちの部屋の方に入った。

すると今度は50畳の広い部屋が待っていた。
部屋の中央には、何やら四角い物体が置いてある。石造りだった。
四方の壁面には、天使のような美しい人たちの姿がレリーフに彫ってあった。
「何百人分だろ?」
「きれいね。まるで生きてるみたいだわ」
ミケランジェロの絵に似ている。

私たちは中央の四角い石のところに戻り、周囲を点検してみることにした。
この石にも何か凸凹と彫ってある。
夫が石の上の埃を「ふう」と吹き払うと、文字が出て来た。

「もしお前がこの世で最高の富を求むなら、左側の穴にお前の血を一滴入れろ。もし、愛と安寧を望むなら、右側の穴にお前の涙を一滴こぼせ」

夫はその文字を読み上げると、さらに周囲を見回した。
「見ろ。この石には宝石が埋め込んである。こいつは宝箱だよ。南海の島に海賊が宝を隠したと言う伝説があるけれど、それはここだったんだ。やった。僕たちは大金持ちになるぞ」
私の方は、何となく心に引っ掛かるものがあった。
「でも、血か涙を入れろ、なんて、ちょっと趣味が悪いわよ。何か仕掛けがあるんじゃないの」
夫が首を振る。
「箱を開けるための鍵がそれなんだよ。血や涙が下の何かに作用して、この蓋が動くようになるわけだ」
何だか、都合の良い解釈に聞こえるけど・・・。

箱の上を調べると、短い方の辺の両方に小さな穴が開いていた。
私は夫が箱を掃除する姿を眺めていて、「何だかこの箱は棺に似ている」と思った。
「この回りに付いている宝石だってルビーなんだし、これを何個か貰うだけでお金には不自由しなくなるよ」
箱には卵くらいの大きさのルビーが幾つも埋めてあった。
「なら中にはダイヤモンドだろ。絶対にこれを開けよう」

ここで夫はナイフを取り出した。
「何をするの?」
「もちろん、掌を少し切って血を流し入れるんだよ」
「え。涙じゃないの?」
私は、夫が私と一緒に過ごす「愛と安寧」の暮らしを求めるだろうと思っていた。

「ねえ。私は何だか嫌な予感がする。血も涙も、どっちにも罠があるのかも。止めて、もう上に上がりましょうよ」
ここで夫は生来の強情さを顔を出した。
「冗談じゃない。せっかく再起できるチャンスがあると言うのに、ここで止められるか」
目がぎらぎらと光っている。
ああ、ダメだ。私たちが失敗を重ねたのは、夫が性急に事業を拡大しようとしたせいなのに。
挫折の経験は、夫を成長させることをせず、逆に夫の心を捻じ曲げてしまったのだ。

夫は私の目の前で、自分の掌を傷つけ、流れ出る血を穴に流し込んだ。
しばらくの間は何の変化も無かったが、5分ほどすると、「ゴゴゴゴ」と音を立てて、良いのはこの蓋が動いた。
ガタンと音を立て、蓋が箱から転がり落ちる。

夫は箱に近寄ったが、すぐに「わあ」と声を上げた。
箱の中に入っていたのは、人の死骸だった。
たぶん男だ。
その額に夫の血が付いていたが、その赤い色が根を張るように、男の顔に広がった。
「ねえ。とっても不味い気がする。ここから逃げようよ」
しかし、夫は男の回りに置かれていた沢山の宝石の方を見ていた。
「スゴイ。やはり宝石だらけだった」

ここで、その石の棺に寝ていた男が目を開いた。
「おお」
夫と私は驚き、壁際まで下がった。
この2人の見ている前で、むっくりと男が体を起こした。

男がこっちに顔を向ける。
「どうも有り難う」
私たちは体が強張って、身じろぎひとつ出来ない状態だ。
「長い間、閉じ込められていたが、ようやく自由になれた」
夫が口を開く。
「お前は・・・、あなたは誰なんだ」

男が夫の問いに答える。
「俺はキリストが生まれる3万年前からこの地上に居る者だ。再び言うが、この俺を起こしてくれて有難う。そのお礼に、お前たちのことはなるべく苦しまないように食ってやるからな」
その言葉を聞き、夫が叫んだ。
「この世で最高の富をくれるんじゃないのかよ!」

ここで男がくつくつと笑った。
「お前たちを食ったら、その骨はこの棺の中に入れてやる。見ただろう。この世で最高の富がここには入っている」
「そんなの意味が無いだろうが!」
男は何かを急に思い出したような表情を見せた。
「そう言えば、鬼たちもいたな。俺が食った後、鬼たちがお前らの骨を齧るから、跡形も残らなくなるかもしれんな。ああスマン」
「畜生。僕らをだましやがって」

男は棺から外に出ると、大きく背伸びをした。
「ねえ。見て分からないのか?俺はイエネラだ。キリストが生まれた後では悪魔とも呼ばれる。悪魔ってのは、基本的にウソツキなんだよ」

背中の壁が動き出した。
ついさっきまでは天使のレリーフだったのに、今は見るもおぞましい鬼の姿に形を変え、しかも壁から抜け出そうとしていた。

ここで覚醒。

ちなみに、映画の方はドイツ版が「筋が立っている」らしいです。