日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第388夜 公園の女

26日日曜の昼に観た夢です。
MLB中継を見ながら眠りに落ちたのですが、胸が苦しかったせいか、悪夢を観ました。
「三途の川便り」にある公園の写真を添付してありますが、その場所で知人が経験した話です。
その話を聞いてから、数年に1度ずつ夢に観ます。
少し気持ち悪い話ですので、そのつもりで。

村山ヒロシは、新しく知り合いになった女の子と公園に行くことにした。
(出発点が知人の体験談なので、夢の話ですが三人称とします。)
その相手はつい数日前に合コンで知り合った女の子だ。
比較的近所に住んでいたので、その公園には歩いて行けることもあり、誘いやすかった。

その当日。公園の入り口で待っていると、その娘(名はタマミ)が現れた。
タマミは20センチはあるような高さの靴を履いている。
「まるで舞妓だ。公園に来るのに、こんな靴を履いて来るとはな」
ヒロシは頭の中であきれたが、まあ、タマミに求めているのは知性ではない。
その娘の尻の軽さは有名で「すぐにやれる」という噂を聞いていたので、ヒロシは声を掛けたのだ。

実際、タマミが関心を示すのは、芸能人かファッションの話だけだ。
「コイツとは到底長くは付き合えないな」
時間が経つごとにそう思うが、しかし今回のヒロシの目的は別だ。
長く付き合う「彼女」が欲しいわけじゃない。
1時間か2時間ほどこの公園で遊び、夕方になったら食事に行き、さらに1杯飲んで、その流れでどうにかするという段取りだった。

広い公園で、端から端まで1キロくらいある。
歩いて回るだけで疲れそうなので、どこかに腰を下ろすことにした。
敷物を持って来ているし、軽食も支度した。
タマミは「サンドイッチとかがあれば楽しいだろう」などと気の回るタイプではないので、ヒロシの方で買ってあった。
しばらくの間、木陰に座り、2人でごろごろした。
タマミの服装はタンクトップにミニの軽装で、ほとんど半裸に近い。
「公園に来るのにこの姿だものな。虫がいるかも、とは考えないのかな」
半ばあきれるが、ヒロシにとってすれば、これはこれで目の保養になる。

だが、まだ数時間もあるのに、あまり先走って興奮していても何だから、ビーチボールで遊ぶことにした。
空気を入れて膨らませる、あのビニールのボールだ。
タマミの靴はボール遊びには向かないが、芝生の上なので靴は脱げばよい。
タマミが「足の裏がくすぐったい」と騒いでいるところは、それなりに色っぽく見える。

ボールを蹴って遊んでいると、そのボールが風に乗って遠くに転がった。
そのボールが植込みを飛び越えて姿が見えなくなったので、ヒロシはそのボールを追い駆けて、茂みの後ろに走った。
ボールは灌木の茂みの向こう側にある。木の根元だ。
その木に向かおうとすると、藪のすぐ後ろに誰か人がしゃがんでいた。
ヒロシは危うくその人を蹴飛ばすところだったが、その寸前で足を止めた。
「すいません」
ヒロシが謝ると、その人が顔を上げた。
そこにしゃがんでいたのは女の人だった。
齢は30歳くらいで、青白い顔をしている。
女は驚いたような表情でヒロシを見上げた。

ボールを抱えて、ヒロシはタマミのところに戻った。
再び、2人で遊んでいると、何となくヒロシは自分を見ている誰かの視線を感じた。
「何だろう」
回りを見回すが、誰もいない。
「ちょっと休憩しようか」
タマミと一緒にシートに腰を下ろす。
タマミは打ち解けて来たのか、ヒロシのすぐ隣に座った。
ヒロシはごく自然にタマミの腰に手を回した。
手の平には、若い女の張りのある肌の感触がある。

だが、何となくまだ視線を感じる。
ヒロシは唐突に振り返って、後ろを見た。
すると、先ほどボールを取りに行った茂みの下に2つの足先が見える。
裸足だった。
「あれは、さっきの女の人だな」
たぶん、あの陰からこっちを見ているのだ。
あれから、その女がずっと自分たちを見ていたとすると、少し薄気味悪い。

「せっかくのデートなのに」
しかも、噂通りで、タマミは腰が軽そうだ。
今日が初めてのデートなのに、タマミは早速、ヒロシの肩に頭を預けている。
さりげなく唇を寄せると、タマミは抵抗せずキスを許した。
「あらら。こりゃ行ける」
すぐにホテルに直行しようか。
しかし、さすがにまだ日が高い。
そろそろ店が開く時間だし、軽く一杯飲んでからでも大丈夫だろ。

「暑いから、ビールでも飲みに行く?」
「うん」
立ち上がって、シートを畳み始める。

帰り支度が出来たところで、ヒロシは何気なく、さっきの茂みの方に目を向けた。
すると、やはり女がいて、今度は茂みの上から顔を出してこっちを見ている。
ここはヒロシ1人を凝視していると言った方が正確な表現だ。
その女の顔つきは、何かに取りつかれたような印象だ。
「さ、行こうか」
タマミと一緒に歩き始める。

「まさか後をついてきたりはしないよな」
後ろを振り返る。
すると、さっきの女は散歩道まで出て、そこに立っていた。
ヒロシはこの時初めて、その女が紺色のワンピースを着ていることに気付いた。
「何だか薄気味悪いよな」
それをヒロシは声に出して言っていた。
タマミがそれを聞き止め、「え。何のこと?」と訊き返す。

「30辰らい後ろに、女の人が立っているだろ。あの人。ずっと俺のことを見てるんだよ。気持ち悪いよな」
タマミが後ろを振り返る。
「え。後ろには誰もいないよ」
ヒロシがもう一度後ろを向くと、その女がこっちに向かって歩き始めるところだった。
「うわ。もうここを出よう」
ヒロシはタマミの手を取って、足早に歩き始める。
公園の出口までは2百辰らいある。

「まさか走って追いかけてきたりはしないだろう」
そう思いつつ後ろを見ると、あろうことか、あの女が小走りでついて来ていた。
つい先ほどまで白かった顔色は、今は青黒く変わっていた。
「まるで死体みたいな色だ」
ヒロシはタマミの手を引き、出口に向かって走り始めた。
「ちょっと。そんなに引っ張ったら痛いよ。この靴じゃあ走れないしさ」
タマミが文句を言う。

「どうにも薄気味の悪い女が追い駆けて来るんだよ。早くここを出ないと」
タマミが後ろを向くが、この女には何も見えていないようだ。
「誰もいないよ。もう、手を引くのをやめてよ」
ダメだ。コイツはバカなだけじゃなく、あきれるほど鈍感だ。

「俺にしか見えていないのか。じゃあ、あの女はきっと幽霊だ」
たぶん、こんな具合だろ。
あの女はずっとあそこにしゃがんでいたが、誰1人として自分がそこにいるのに気づかない。
たまたまヒロシが女の姿を見れていると分かったので、ヒロシについて来ようとしているのだ。
「なら、あの女の目的は俺だよな」
後ろを向くと、もはや女は十辰里箸海蹐泙杷?辰討い拭
「うわあ。俺は先に行くからな」
ヒロシはタマミから手を離し、全速力で走り出した。
タマミにはまったく見えていないのだし、きっと大丈夫だろ。
「たぶん」だけどな。

ヒロシはおそらく高校の運動会以来の速さで走った。
だが、ヒロシは自分の背中のすぐ後ろに女が近づいているのを感じる。
「わあ」
さらにスピードを上げたが、もはや手の届きそうなくらいの距離に女が来ていた。
息遣いまで聞こえて来そうだ。

女の指がヒロシの頭の後ろの髪を触っている。
ヒロシのことを掴もうとしているのだ。
ヒロシは捕まるまいと、一層気合を入れて走った。
今まさにヒロシの首に女の指が掛かりそうになった、その寸前に、ヒロシは公園の出口から転がり出た。
言葉の比喩ではなく、実際に縁石に躓いて転がったのだ。
「イテテテ」
あまりの痛さに、一瞬、ヒロシの思考が分断された。

そのことが幸いしたのかどうかは分からないが、ヒロシが起き上がった時には、あの女の姿が無くなっていた。
「危なかったなあ」
恐らくあれは幽霊で、自分に取り憑こうとしていたのだ。
あんな悪霊に取り憑かれたなら、一体、どんな目に遭わされたことか。

タマミを公園の中に置いてけぼりにしていたが、もちろん、中に引き返すつもりはない。
それどころか、タマミのバカさ加減、鈍感さにすっかり嫌気がさしていた。
幽霊のせいで、興が醒めてしまったのだ。
そこで、ヒロシはタマミのことを待たず、公園に背を向け、駅に向かって歩き出した。

ひとつ角を曲がると駅が見える場所まで歩いたが、ヒロシはそこで公園の入り口の方を振り向いた。
すると、その入り口の柵に手を掛けて、あの女の幽霊が立っていた。
その女は、悔しそうな目でヒロシのことをじっと睨んでいた。

その後、ヒロシはタマミにまったく連絡しなかったので、タマミがどうなったかは知らない。
だが、あの時の様子では、たぶん大丈夫だったことだろう。
そしてそんなことがあったあの公園には、ヒロシは近づいていないし、2度と近づく気持ちはない。

ここで覚醒。

知人が実際に経験した出来事で、具体的にどの辺りだと場所を特定できるところが、気色悪いです。
従前より、薄気味悪い場所だと思っていましたので、私もその公園には行かないようにしています。
描写を少し足せば、ホラー小説にはなりそうですが、純然たる作り話ではないので、気を付ける必要があります。

実話には続きがありますが、夢で観た範囲までとしました。