日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第389夜 学食で

月曜の朝の5時半頃に見ていた夢です。

どこか食堂のようなところにいる。
テーブルにつき、リュックに本を入れたり出したり。
今日、必要な本を点検しているのだ。
ここが高校なのか、大学なのかは分からない。
私服なので、きっと大学だ。

テーブルの俺の前には、封筒と1万円札が1枚ある。
支払袋に現金を揃えて入れようとしていた。
たぶん、1万580円くらい入れるつもりだ。
そうなるとリュックで探していたのは、本ではなく小銭かも知れない。

食堂の向かい側のテーブルには男が1人座っている。
カッパみたいな頭で、漫才師の誰かに似ている。名前は知らない。
十単釮諒?砲錬掘■舷佑集まって座っていた。

唐突に、向かい側の男がこっちのテーブルに来て、俺の1万円札に手を伸ばした。
「あ。お金が落ちている」
テーブルの上で、俺の目の前だから「落ちている」はないだろ。

カッパ男が後ろの方の奴らにその金を見せる。
「ほら、金が落ちてたぞ」
ははん。仲間なんだな。
俺の金を見て、取り上げたくなったか、あるいはここでひと騒動起こして、後ろにいる仲間を呼び、俺のことを殴る蹴るしてやろうと言う魂胆だ。

ここで急に頭の中で声がする。
「Kちゃん。分かってるだろうな」
あ。この声は。
Aさんの声だ。
Aさんは暴力団で、俺の麻雀仲間だった。
ぐりぐりのモノホン暴力団で、Aさんと雀荘に居る時にはよく暴力事件が起きた。
卓の上で何か諍いがあったらしいが、突然、殴り合いが起きるのだ。
そう言えば、面子全員が違う組のヤクザ同士だったよな。
最初は心底びっくりした。
本物のヤクザは、ケンカを始める時に「コノヤロー」とか「死ね」とか何ひとつ言わない。
ある一瞬に、突然、ガツンと殴り合いが始まるのだ。

何度かその雀荘で同じことを体験して、「なぜケンカが起きるのか」、「いつ始まるのか」が見えるようになった。
ヤクザ者は自分の領域の回りには、きちんと線を引いてある。
「ここからは踏み込んで来るなよ」という線だ。
お互いにその線を認識して、跨いだり踏み越えたりは絶対にしない。
素人はそれを知らずに、大口を叩いたり、他人をコケにしたりする。
ケンカはその一線を越えた瞬間に始まるのだ。

俺はそれが分かってからは、こういうのが平気になった。
雀荘でことが始まる時には、その寸前で、自分の金と椅子をさっと引いて、壁際で待つようになった。
もちろん、争いには加わらないし、止めたりもしない。
変なとばっちりを食ったり、巻き込まれては面倒だし、本来、当事者同士でかたをつける問題だからだ。

その辺の態度が気に入られたのか、Aさんには可愛がられた。
組の新年会にも呼ばれたことがある。
「正月だから、Kちゃんも来いよ」
軽く言われたので、指定されたその店に行くと、顔つきの悪いオヤジが百人くらい座っていた。
素人は俺と、Aさんが入院していた時に世話になったと言う看護師2人だけだった。

そのAさんは中国人の不良に殺されて死んだ。
酒を飲んでいた時に、中国人の強盗が入って来て、いきなり後ろからAさんを撃ったのだ。
それをきっかけにして、それから1年くらいの間は地元の地回りと中国人の不良との間で抗争が続いたんだっけな。

頭の中の声はそのAさんの声だった。
そっか。見よう見真似だが、今が知識と経験を役立てる時なんだな。

カッパ男は俺の顔をチラチラと見ている。
俺はすぐ脇に有った椅子を持ち上げると、奥の奴らに投げつけた。
そいつらは横を向いて、こっちに顔を向けないようにしていたので、椅子はまともに1人の男の頭に当たった。
「わあ」
さすがに驚いている。
すかさず別の椅子を3つくらい続けて投げつける。
相手は8人なので、もちろん、俺は「殺すつもり」でやっている。
そうしないと、後で自分がそう言う目に遭うのだ。

木造りの椅子がバラバラに壊れている。
俺はその木片を拾うと、最初のカッパ男の所に走り、尖った先をそいつの首に突き刺した。
ものすごく気持ちが良い。

そのまま引き返して、8人組の奴らに刺して回る。
1人はさすがにヤバイと思ったのか、食堂から自分独りで逃げ去っていた。

食堂の片隅には、教員らしいオヤジと女子学生がいた。
2人は恐怖心のためか、固まっている。
俺はそいつらに走り寄り、そいつらのことも刺した。
一部始終を見ていたからだ。この2人、ツキが無かったよな。

その間、俺はAさんに教わった通り、ひと言の声も出さなかった。
Aさんの声が聞こえる。
「そこは玄人っぽいよ。よく覚えたよな」

相手を威嚇するのに「テメエ」とか喚くヤツがいるが、それを聞いた瞬間に、俺は「こんなヤツは簡単に殺せる」と思う。
モノホンの不良は暴力を振るう時の前提が「威嚇する」ことではなく、「ぶっ潰す」ということだからだろうな。
そこはAさん仕込みだ。

あの頃、どこか自分に似たところがあるから、Aさんは俺のことを可愛がったのだ。
この時、初めて俺は昔の自分の状況を悟った。

俺には本物の不良の血が流れていたのだ。
「そっか。俺はこれまで道を誤ってたかもしれないな」
そうでなければ、Aさんが死してなお、俺の傍に寄り添っているんだろ。

ここで覚醒。