日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第400夜 旅客機の中で

◎夢の話 第400夜 旅客機の中で
 土曜の午前10時頃に観た夢です。

 目を開くと、旅客機の中にいる。
 物音ひとつせず、しんとしていた。
 首を伸ばして、周りを見ると、座席の半分くらいに人が座っていた。
 「オレはなんで飛行機に乗っているんだろ」
 まったく思い出せない。
 随分と長い間飛行機に乗っているような気がする。
 きっと北回りかなんかで、ロシアを越えてどこかに行くんだろうな。
 時計を見ると、夜中の11時54分だった。

 何だか、やたら喉が渇いている。
 水でも貰おうか。
 呼び出しボタンを押す。
 しばらく待ったが、誰も来ない。
 気圧の関係なのか、頭がぼおっとしている。
 「来ないなあ」
 あれ。客室乗務員のことをなんて言ったっけ。
 昔はスッチーだったが、今は何?
 FAだっけか。FAってトレードの時に使う言葉だよな。
 まったく頭が働かない。

 「仕方ねえな」
 立ち上がって、前の様子を見る。
 前の方は真っ暗で、人がいる雰囲気じゃない。
 だいたい、電気も点いていないしな。
 手さぐりで歩き、トイレに行く。
 手を洗いながら、「この水でも良いか」と思うが、思い直して外に出る。
 旅客機のタンクは清潔とは言えんからな。

 トイレの外に出て、座席に戻ろうと歩き出す。
 「うわ。なんだこりゃ」
 客が誰一人として動かない。「じっとしている」のではなく、まったく動かないのだ。
 近くにいた若い女性を覗き込む。
 ぶしつけなやり方だが、相手の顔の間近に自分の顔を寄せた。
 くっつきそうな距離だ。
 しかし、女は蝋人形のように固まったままだった。

 「こりゃおかしいぞ。何かとんでもない事態が起きてら」
 そう言えば、旅客機の中の割には静か過ぎる。
 これで、空を飛んでいると言えるのか。
 外を見れば分かるだろうけど。

 窓のブラインドは、どこもかしこも閉まっている。
 どれかを押し上げて、外を見ようか。
 しかし、どことなくそら恐ろしい。
 「そうは言っても、じっとしているわけにはいかんな」
 意を決して、ブラインドのひとつを開けて見た。

 なんてこった。
 オレがいたのは、空の上ではなく、水の中だった。
 「おいおい。もしかして、この旅客機は・・・」
 墜落したんじゃあ。
 「そんな筈は無いな。もし海に落ちたのなら、旅客機はバラバラになる。水圧でひしゃげ、中にどんどん水が入って来る筈だ」
 いったいどういうこと?
 ここで、オレは時計を見た。
 時刻はさっきと同じ11時54分だった。
 ありゃ、時間が進んでないぞ。
 しかし、よく見ると、さっきは秒針が14秒のところを指していたのに、今は16秒だった。
 「あれこれ動いたのに、2秒しか経っていない」
 時計が壊れたのか。

 その途端に頭の中で声が響いた。
 「そうじゃないよ」
 回りの人を見れば分かる。
 回りは皆、蝋人形みたいにカチカチで、息をしているようには見えない。
 まるで時間が止まったようだ。

 ここでオレは今起きている事態に気が付いた。
 「止まっているのは、オレの意識だ」
 旅客機が墜落し、海に落ちた。
 オレはその瞬間、自分の死を予感した。
 誰だって、こんな死に方はしたくない。
 だから、オレはオレ自身の意識の動きを停止させたのだ。
 すなわち、オレの頭の中では時間が漸近線を描くように、進行を緩めているのだ。

 だが、それも時間間隔が遅れるだけで、進行方向を変えたり、元に戻すことは出来ない。1秒を「あたかも1時間」のように感じることは出来るが、それでも必ず時は過ぎる。
 オレは自分の死を確信した。
 そこで瞬時に「時間が止まってくれればいいのに」と念じたのだ。
 そのせいで、今の事態が起きている。

 それなら、このままじっと停まっていてくれれば良い。
 この飛行機がバラバラになり、海中深く没するまで、あと何秒も掛からない。
 その数秒間が永遠に続いてくれ。
 ずっとこなままなでいるは、それはそれで怖ろしいが、オレはまだ死ぬ覚悟が出来ていないのだ。

 ここでオレが外を見ると、沈みゆく旅客機の近くを、鯨が泳いでいるのが見えた。
 ここで覚醒。

 第399夜は非公開なので、番号がひとつ跳んで400夜となりました。