月末なので、各種支払いに半日掛かりました。
その後で、有馬ダムで一服し、高麗神社に参拝しました(153日目)。心不全で三途の川を渡らずに済んだことのお礼をするためです。
境内に入ると、手水場にトラちゃんがいました。
「待ってたよ~」と言わんばかりに走り寄って来ます。
おやつを食べ終えると、すぐに当方の膝の上に乗ります。
ずっと雨だったので、寒かったのでしょう。
トラが温まるまで、椅子に座りました。
30分くらいで、「そろそろ良いか?」と訊くと、「ニャーだ」と答えます。「まだ動くな」と服に爪を立てました。
それから1時間近く抱いて、さすがに「もう行かないとな」とトラを下ろしました。
「トーサンは色々やることがあるんだよ。ずっとこうしていたいけど、お前も家に帰れば待ってる人がいるんだし」
トラには可愛がってくれるご主人がいるわけで。
しかし、自分のことを「トーサン」と呼んだために、いきなり妄想スイッチが入りました。
となると、当方は父親でトラは娘です。
親は離婚しており、父親は月に1回だけ娘に会える。
いたっけなあ。そんな女の子が。
確か次女の同級生で、名前は「さおり」。
十数年前の、近所の子です。
お父さんはIT企業でプログラマーをやっている。一流企業だけど、その分仕事が忙しい。頭脳労働みたいですが、その実は肉体労働と同じです。週に1、2回しか家に帰れない。
妻子は家に放りっぱなしだったので、奥さんには彼氏が出来た。ダンナが家に帰って来ないので、堂々と家の前まで彼氏が迎えに来て、夜中まで外にいる。
帰って来ない時もあり、娘のさおりはお祖母ちゃんが面倒を見ている。
そのままの生活はいつまでも続かず、両親は離婚する。
さおりはお母さんに引き取られるが、母親の彼氏とはあまりうまく行かない。
子どもが懐かないので、母親の彼氏の方も、次第にさおりのことを疎ましく思うようになる。
実父に会えるのは、月に1度だけだ。本当は週に1度会っても良いのだが、父親はほとんど会社に泊まっているようなものだ。
父子が一緒にいられるのは月に1度、半日の間だけだ。
ずっと手を繋いで、ご飯を食べたり、遊びに行ったりする。
父親は公園とか遊園地に連れて行こうとするが、娘の方はどうでもよい。父親と一緒に居られるだけでよい。
楽しい時間はあっという間に過ぎる。
夕方になると、父親はさおりを母親の家に帰さなくてはならない。
「お父さんは、ずっとお前と一緒に居たいけど・・・」
父親が視線を上げると、娘の顔がくしゃくしゃだ。
「どこか具合でも悪いのか」
娘は「何でもない」と答える。
しかし、歯を食いしばって、父親を睨んでいる。
ここで父親が気づく。
娘は「父親に泣き顔を見せないように」、歯を食いしばっているのだ。
父との別れは間近で、すぐにも家に戻らねばならない。
お父さんと一緒に居たいけれど、そう言って自分が泣いたら、お父さんを苦しめることになる。
だから絶対泣かないように、歯を食いしばっている。
このブサイクな表情は、父親に対する愛情の証なのだ。
父親は打ちのめされ、娘にこう告げる。
「俺が、お父さんが悪かったよ」
もっと早く気づいていれば、妻や子と別々に別れて暮らすことも無かったのかもしれない。
父親はここで初めて、「仕事を替え、娘と一緒に暮らせるようにしよう」と決意する。
妄想はここまで。
今日はトラがどうしても離れてくれず、駐車場の車まで一緒に来ようとするので、再び境内に戻りました。
体を撫でてやり、気持ち良くなっている時に、頃合いを見はからって遠ざかりました。
当方が車に入るまで、トラはじっとこっちを見ていました。
うっかり、「オトーサン」の立ち位置に立ってしまったのは不味かったです。