日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

「大本営発表」のウソ 「生活保護受給者の3割がメタボ」

9月23日配信のニュースより

生活保護の男性、3割超がメタボ 女性も非受給者の3倍」
 生活保護を受けている男性では、3人に1人がメタボリックシンドローム内臓脂肪症候群)で、喫煙者が4割以上いることが厚生労働省の調査で分かった。いずれも生活保護を受けていない男性より割合が高い。受給者は健康への関心が低いという結果もあり、厚労省の担当者は「食事が安くて高カロリーのジャンクフードなどに偏っているとみられる」としている。
 2014年度にメタボ健診を受けた40歳以上の生活保護受給者約10万8千人の診断結果を分析した。メタボと診断されたのは男性が32・7%で女性が17・5%。受給していない男性(21・0%)より10ポイント以上高く、女性は3倍近かった。
 60代後半の男性が34・6%(受給者以外は27・4%)、70代前半の男性が33・3%(同26・9%)と割合が高い。受給男性の喫煙率は43・0%(同33・7%)で、とくに50代が51・9%と多かった。
引用ここまで。

どうしても生活保護費を抑制したいらしい。
しかし、統計の組み立て方に根本的な誤りがある。

生活保護の非受給者、すなわち普通の国民と、受給者の人口比は99:1の規模の違いがある。
年齢構造や職業(職歴)にも大きな隔たりがある。
母集団の構造が違うのに、その比率の差を論じてどうするのか。
しかも、調査対象が「メタボ健診を受けに来た受給者」だ。
すなわち、実質的には「メタボを気にしている人」を選んで行った有意調査に等しい。
それでは、数値を元に受給者と非受給者とを比較することなど端から出来ない。

調査結果に有意差検定をして「違いがある」と出ることと、「その違いに意味がある」ことは異なる。
「高い」「低い」というレトリック自体、使えないのに、あえてそれを言い出すのは、世論操作が目的だということ。

具体的に言うと「生活保護受給者」は世帯主で、男性なら中高年が多い。これを比較する場合は、「非受給者」も同一の年齢層で、かつ受給者に近い職層を対象にする必要がある。
この手順を経ずに、全年齢層をひと括りにしたら、中高年と若年層の違いの方が表に出てしまう。
どっちにメタボが多いかと言えば、いわずもがな。
すなわち、調査の設計段階から「ウソを言う」ためのものだということ。

まあ、厚労省が自ら調査を実施することはなく、方向性のみ指示して、外部の調査機関に委託する。
広告屋総研に委ねると、こういう調査結果を平気で出してくる。
統計の初学者でも、これが誤りであることがすぐに分かってしまう。
こういうのは一回、こらしめる必要があると思う。

末尾の「生活保護費のうち約半分は医療扶助が占めている。厚労省は医療費を減らすため、今年度中に受給者の生活習慣病対策をまとめる方針だ」に本音が出ている。

反対意見が出るのを回避するために、事前に「こいつらは悪人」というイメージを作りたいのだが、そういう姑息なやり方のせいで、仕掛けが丸分かりだ。

ネットの意見を見ると、まともに騙されている人が多くて、そのことで驚く。
生活保護受給者は、全般的に「怠けている」わけではない。
テレビで一面的に報道されるのと実態はかなり違う。

まあ、振り込め詐欺に何百億も騙されるような国民性だってことには、納得できる。
ひとつはっきりしていることは、役人も広告屋総研も「国民はバカだ」と舐めきっていることだ。