日刊早坂ノボル新聞

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◎本当に「不正」なのか その4 データの連続性について

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◎本当に「不正」なのか その4 データの連続性について
 『全国消費実態調査』では、世帯の収入と支出、消費の内容について5万世帯規模を対象に調査を行っている。
 調査の内容詳細については、総務省のホームページに掲示されているので、そちらを見ると分かり良い。
 サンプル数がこの規模に及ぶと、様々な眺め方をすることが出来るわけだが、費用が掛かるせいか、5年に一度の実施となっている。
 企業を対象とするものしては、今、話題になっている『毎月勤労統計調査』だけでなく、『賃金構造基本調査』が行われている。こちらは年1回の抽出調査である。

 双方の相違については、厚労省ホームページに解説があるので、これを引用する。
◆賃金構造基本統計調査と毎月勤労統計調査の相違について 
 厚生労働省では、賃金に関する基幹統計調査として「賃金構造基本統計調査」と「毎月勤労統計調査」を行っています。いずれも労働者の賃金や労働時間を調べていますが、調査目的が違い、作成される統計が異なっているため、用途に応じ使い分けます。
 賃金構造基本統計調査は、賃金構造の実態を詳細に把握するための調査です。労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数、経験年数等の属性別に賃金等を明らかにします。毎年6月分の賃金(賞与については前年1年間)について同年7月に調査を実施し、その結果については、翌年2月に公表しています。
 毎月勤労統計調査は、賃金、労働時間及び雇用の毎月の変動を把握するための調査です。産業別、就業形態別の賃金等を毎月明らかにします。調査の結果については、翌々月上旬に速報、その半月後に確報として公表しています。
 通常、労働者全体の賃金の水準や増減の状況をみるときは毎月勤労統計調査を用います。毎月勤労統計調査は、特定の年の水準を100とする指数や季節による変動を取り除いた季節調整値も公表しています。
 一方、男女、年齢、勤続年数や学歴などの属性別にみるとき、また、賃金の分布をみるときは、賃金構造基本統計調査を用います。 (引用ここまで)

 なお、対象となる事業所については、「5人以上の常用労働者を雇用する民営事業所(5~9人の事業所については企業規模が5~9人の事業所に限る。)及び10人以上の常用労働者を雇用する公営事業所を対象とし、都道府県、産業及び事業所規模別に一定の方法で抽出した78,248事業所を客体としている。ただし、本概況については、10人以上の常用労働者を雇用する民営事業所の客体(66,260事業所)のうち、有効回答を得た事業所(49,541事業所)について集計した」、とされている。

 要するに、産業別など属性別の違いについては『賃金構造─』が、また時系列推移については『毎勤』が、各々主眼としていることになる。
 さて、企業が支払う賃金については、比較的分かりよいので、それを貰う側の労働者(勤労者含む)の側の状況を重ね合わせれば、さらに分かりよくなる。
 世帯の所得と消費を重ね合わせることで、実質的な経済状況をある程度推測することが出来るわけだ。
 こちらは、前述の通り、総務省『全国消費実態調査』が調査の規模から見て、『賃金構造─』に匹敵する大きさと言えるが、何せ5年間隔である。時系列推移を観察し比較するには足りない。
 そこでこれと似た主旨の調査を探すと、厚労省に『国民生活基礎調査』があり、ここで健康状態とともに世帯の所得や貯蓄について調べを行っている。
 うち所得については、「前年1年間の所得の種類別金額・課税等の状況、生活意識の状況等」を、また貯蓄については「貯蓄現在高、借入金残高等」を調査項目としている。
 この調査は、昭和61年を初年として、3年ごとに大規模な調査を実施し、中間の各年には、世帯の基本的事項及び所得の状況について小規模で簡易な調査を実施して来た。
 これは元々、複数の調査を合体させたものであるが、結果的に、『全国消費実態調査』と同じような視角を持つ質問項目が発生している。
 いずれも調査実施年に間隔があるため、2つの調査結果をうまく照合できれば、賃金面との比較が出来るわけだが、現実には数値傾向に若干の違いが生じている。
「消費統計研究会」においても議論がなされているが、これは主に調査方法の違いによって生じており、単直に「比較出来ない」と見られている。

 そうなると、賃金の送り手と受け手の両面から「実質的な所得の状況を測る」ことなど、現状では困難が多く、照合すらし難い状況となっていると言える。
 「知ること」自体からは、何ら利益が生まれないわけだが、その知見が無ければ、将来の展望を確実なものにすることも難しい。
 『毎月勤労統計調査』にあたる受け手の調査には『家計調査』があるわけだが、今のところ、月ごとの収支に着目しており、世帯の資産(預貯金現在高など)に関する情報が得られない。
 『全国消費実態調査』に中間年(簡易調査で可)を設定するとか、『国民生活基礎調査』との調査方法をすり合わせるなどの改善策を加えれば、今現在の状況を把握することに近付く。
 少なくとも、「これで見れば、違って見える」という議論はあまり生じなくなる。

 冒頭の表は、『賃金構造基本調査』による。
 男女格差を見るための製表であるから、各年の男女比を観察するのには有効だが、賃金実額の推移を観察する用途には向かない。とくに記載がないので、名目額のはずだが、これに単純に消費者物価指数を乗じて、果たして「実質化した」と言えるかどうか。