◎権力者は嘘をつく
30歳くらいの頃、地方公共団体を相手にする仕事をしていたので、全国の市町村に出張がありました。
岩手でも岩泉とか葛巻、その他の役場に行ったのですが、用件が終わると、郷土史コーナーのところに寄って、地誌に目を通しました。
地誌には鬼とか幽霊、妖怪の話が載っているからです。
そこで頻繁に見かけたのが、郷土の偉人伝であり人物伝です。
戦国時代の侍のうち、必ず見かけるのが、「南部信直の諱より一字を貰い、※直(または信※)と称した」というものです。
この多くが嘘で作り話ですね。
何故なら、南部信直よりも前に死んだ人にまで、そう書いてあります。
藩史が編纂されるようになったのは、江戸時代に入って70、80年経った頃。
藩庁の役人が書きました。
その時に、判で押したように「誰それは、南部信直の~」という文言を入れたのです。
それだけでなく、何十年も前に起きた出来事を捏造すべく、書状等書き物を書き改めた。
「現存するものは写し」のみの場合はこれがありますので、要注意です。
権力者は自分の都合の良いように歴史を書き換えます。
郷土史や歴史学の研究者は、紙に書かれた文字が生命線ですが、そこには嘘が相当数ありますので、大変だろうと思います。