日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎病院に「怪談」はない

◎病院に「怪談」はない
 火曜日のこと。病院のベッドで眠っている時に、妙な夢を観たので、看護師にその話をしたのです。
 そのついでに、家人の勤務先のことも話しました。

 家人は小学校勤務ですが、その小学校では「あれ」が出ます。
 「あれ」とは、もちろん、幽霊のことですが、小学生に悪影響を与えないように、教師、父兄を含め、大人はその話をしないようにしています。
 多くは、夏冬の休みの時。時間帯も決まっており、いつも午後4時頃です。
 校舎の2階や3階で、パタパタという足音が聞こえるのです。
 最初に気づいたのはPTAのお母さんたちで、行事の準備のため、学校で作業をしていた時に、それが聞こえた。
 初めは一人二人の足音だったが、じきに十人、二十人の音になったとのこと。
 「今は夏休みなのに」
 不審に思ったお母さんが、階上に上がってみると、階段のところまで聞こえていた足音がぱったり止んだらしい。実際、上には誰もいなかった。

 このことを体験した人があるかどうか、教師や父兄に訊いてみると、「私も」「俺も」と手が上がった。
 教師の中には、教室の後ろの窓から、「これまで一度も見たことの無い生徒」が覗いていたという人もいる。
 家人が子どもたちと撮った写真には、時折、大きな煙玉が写っていたので、「ここは普通と違うな」と思っていました。室内で、かつノンフラッシュで撮影しているのに、生徒たちの間に白い「煙の玉」が浮かんでいるわけです。

 とまあ、そんな話です。
 すると、看護師が「世間では、よく病院の怪談の話が語られるけど、どうなんでしょうねえ」と訊いて来ました。
 この手の話に、いつもは真面目に答えないのですが、変な夢を観た直後でしたので、うっかりきちんと答えてしまいました。
 「病院は、むしろ幽霊の類はほとんど出ないところだよ。患者は皆、自分の生き死にのことで頭が一杯だから、念が篭る場所ではないのだろうけど。商売柄、色んな人に『変わった体験』とか『怖い話』を訊くけれど、病院ではほとんどない。墓地と同じで、怪異現象が起きないところだね」
 看護師は深く頷いています。
 「仲間で話をするのですが、まず実際に見た人はいませんね。夜中に、誰も居ないのに、エレベーターが勝手に動いた、てな話だけですよ」
「だよね。現に人が出入りしている病院では、まず聞かない。あるのは、想像や妄想から生まれた作り話だけだ。今は廃屋になっている病院だというのなら、調べたことがないから、知らないけどね」
 「世間では、この手の話は怖い話、怪談として語られるわけですが、実際に見た、会った人はほとんどいない。現実にそういう経験をした人は、考え方とかが変わるのでしょうね」
 「動かしがたい現実のひとつになる。信じるとか信じないとかの次元じゃない。経験をすればするほど、どんどん増えてくるから、押さえ込むのが大変だ。うっかり写真を撮ると、どろどろと『そこには居ない者』が出る。そういうのを心霊写真とかと呼んで面白がっているうちは、何も経験していない、理解していない『お子ちゃま』の域だろ。そうなると、世間の霊感師とかスピリチュアルどうたらというのは、全部お子ちゃまの域だということになる。既に現実の一部になっている者は、不審なものが出たら直ちに関わりを断つ。いちいち関わっていれば、無駄に時間と労力を費やすから」
 「ふうん。一度も見たことの無い者なら、きっと感覚的に分かりませんね。ところで、子どもの頃に見たヤツで、一番強烈だったのはどんなのでしたか」
 「子どもの頃に」と限定するところをみると、この看護師も、子どもの頃に何かしら思い当たる記憶があるということです。

 この時は話に熱が入っていたので、うっかり正直に答えてしまいました。
 実際に経験した出来事なので、細部にまでリアリティがあります。
 (かなり不気味な話なので、記述はやめときます。)
 気が付いたら、周りの患者や看護師が、皆こっちを見ていました。

 「ところで、女房の小学校では、当たり前だが、夏休みには先生たちが交替で宿直室に泊まる。先生がたは皆、教室に響く足音のことを知っているから、3時台に戸締りを確認して回ると、4時以降、宿直室からは一切出ないそうだ。これがオチ」
 夏冬の休みでない、普通の授業がある日も、たぶん「何か」は出ていると思います。
 ただし、生身の子どもたちが沢山いるので、少々、変なのが混じっていても誰も気付きません(大笑)。