日刊早坂ノボル新聞

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◎夢の話 第623夜 不時着

◎夢の話 第623夜 不時着
 15日の午後11時に観た夢です。

 友人と2人で箕輪山に行った。
 そこには友人の別荘があるから、「2、3日のんびりしよう」と誘われたのだ。
 翌日には女性陣も到着するが、初日はその友人・小林とオレの2人だけで過ごすことになっている。
 ここの良いところは、何もないことだ。
 山の中腹にポツンと建った別荘だから、周囲には山林以外に何もない。
 ここで出来ることは、風に揺れる木々を眺めることと、バーベキューをするくらい。
 だが、そこが良い。

 その夜は、テラスのテーブルで、夕食後のコーヒーを飲んでいた。
 夜は星空がきれいだから、このテラスで外を眺めるのが一番良い。
 口数少なく上を眺めていると、はるか上空に「白い玉」が移動するのが見えた。
 「おい。あれは何だろう」
 「人工衛星じゃないのか」
 「あんなでかいのか。飛行機や人工衛星なら爪の先ほどの大きさだが、ゴルフボールくらいの大きさに見える」
 「確かに大きいよな」
 白い玉はびゅうっとこっちに向かって来て、箕輪山の後ろの方に降りた。
 「あれはUFOだな。しかもごく近くに着陸した。今すぐ見に行こう」
 「ああ。行ってみよう」

 小林とオレはすぐに家を出て、光の玉が降りた方向に向かった。
 探すのは簡単で、5百辰盥圓ぬうちにそいつが見えて来た。
 「ありゃまあ。本当にUFOだった」
 山の斜面に降りていたのは、葉巻型の宇宙船だ。
 だが、当初の見込みとは違い、案外小さなヤツだった。長細いかたちをしているが、縦が15メートルかそこらしかない。横は3団?戮澄
 「これじゃカプセルだな。緊急避難用かもしれん」
 その葉巻に2人して近付く。

 十辰曚匹琉銘屬剖疉佞と、突然、葉巻の横腹に穴が出来た。
 「おお。気をつけろよ。何か出て来る」
 その穴からはすぐに、何かが這い出てきた。
 「あれから出て来るんじゃあ、宇宙人ってことだよな」
 木陰に隠れて様子を見る。
 葉巻は眩いくらいに白く光っているから、周囲の状況がよく見えた。
 宇宙船から出て来たのは、身長が1達横哀札鵐舛らいの・・・、「虫」だった。
 「あれじゃあ、シャコか蝉の幼虫だよな」
 オレは頭のでかい猿みたいな宇宙人を思い描いていたのだが、出て来たのは昆虫型の生物だ。
 そいつは、よろよろと二三歩歩くと、そこでばったり倒れた。
 小林はすぐにそいつに近寄るべく歩き出す。
 「小林。迂闊に近寄ったら不味いんじゃね?宇宙には宇宙のウイルスがいるだろうからな。見たとこそいつは病気みたいだし」
 しかし、小林は首を力強く横に振った。
 「構うことはないよ。こんな大きなチャンスをものに出来なくてどうする」

 間近で見ると、やはりそいつは昆虫の体をしていた。
 「体型のほっそりしたシャコか、ゴキブリだな」
 宇宙シャコは、一瞬、オレたちのことを見たが、そのまま気を失ったらしく静かになった。
 「とりあえず写真に撮っとけ」
 ここでオレたちは、一人がシャコの隣に横たわる構図で、交互に写真を撮った。
 人が被写体に入るのは、「シャコを撮っただけ」と思われぬようにするためだ。
 とりあえず、地球にはこのサイズのシャコはいない。

 「この先どうすんの?」
 「まずはコイツを縛って、逃げられないようにする。それから、明日にはメディアに公表する」
 「でも、オレは何となくコイツが子どものような気がするぞ」
 宇宙人の子どもが具合が悪くなり不時着したのに、そいつを捕まえて見世物にしようなんてのは、少し気が引ける。
 すると、小林は「冗談じゃない」という口調で答えた。
 「コイツはお宝だ。コイツがいれば大儲け出来る。写真1枚が数十万で売れるだろうからな。テレビに出れば、1回2百万から5百万。グッズを売れば、何億円かの売り上げだろ」
 「おいおい。商売にするのかよ」
 「当たり前だ。この山自体がうちのものなんだし、これは俺のものだ。宇宙船を倉庫に格納し、人に見せればそれだけで大儲けじゃないか」
 コイツ。普段は人の良い小金持ちなのに、突然、変貌しやがった。
 「どうしたんだよ。小林。お前らしくもない。宇宙人の子どもが具合悪くて不時着したのなら、助けてやればいじゃないか。写真を撮るだけで充分だろ。介抱して船に戻してやろうよ」
 すると、小林はあろうことかオレの前に金属バットをちらつかせた。
 別荘を出て来る時に、持参していたらしい。
 「おい。今のオレは正直、金に困っている。あの別荘だって、近々売りに出すところだ。もはや破産寸前なんだよ。このチャンスを逃してたまるか。それを邪魔するなら、たとえお前だって・・・」
 いやはや、とかく金は人の心を変えるものだが、まさかコイツがそんなに困っていたとはな。

 「おい金堂。俺が見張っているから、お前はコイツを縄で縛れ」
 目の前にロープが投げられる。宇宙船が降りた後、即座に出て来たのに、コイツはこんなものまで用意していたのか。
 オレは仕方なく、シャコの体をロープでぐるぐる巻きにした。
 「すまんな。オレだって、好きでこんなことはやりたくないんだよ」
 オレは宇宙シャコの子が可愛そうになり、そいつに声を掛けた。
 なにせ昆虫だから、表情を覗い知ることが出来ないのだが、オレは何となくそいつがオレの話を聞いているような気がした。
 縛り終わった後で、シャコの様子を確かめると、かっちり固まったまま動かなくなっていた。
 「可哀想に。死んじまったようだぞ」
 シャコは体をダンゴ虫のように丸め、固まっている。
 小林はバットで2、3度シャコをつついたが、やはり死んだと思ったらしい。
 「どうやら死んだな。まあ、死体があれば証拠としては充分だ」
 ついさっきまで、オレはこいつのことを友だちだと思っていたが、今は違うようだ。
 「おい金堂。お前はこいつを家まで運べ」
 何時の間にか、小林はオレのことを家来のように扱っていた。

 シャコを抱き上げてみると、体重は予め予想したとおりで、40キロ前後だった。
 そのまま小林の別荘に運び、床の上に置いた。
 「もう死んでいるのだから、ロープは要らんだろ。死後硬直で動いた時に、足が取れるかも知れん」
 「それもそうだな。じゃあ、縄を解け」
 今や、小林は総ての言葉が命令口調になっている。
 ロープを解くと、いよいよシャコは丸くなり、直径70造龍未吠僂犬拭
 「小さくなっちまったな。可哀想に」
 オレは宇宙シャコの頭付近をゆっくりと撫でてやった。
 見ず知らずの星で、たった一人で死んだのだもの。コイツもどんなにか心細かったことだろうか。
 「いくら撫でたって、もう死体だろうよ」
 小林はどんどん悪人になってゆく。

 ここで、突然、部屋中に音が響いた。
 「メリメリ」
 小林が周りを見回す。
 「何だ?何の音だ」
 音が聞こえて来るのは、宇宙シャコの体からだった。
 「コイツ。生きているのか」
 小林がバットでシャコの体をつつく。
 すると、「バリン」という音と共に、シャコの背中にヒビが入った。
 それを見た小林が慌てる。
 「不味い。きつく縛り過ぎたか。殻が壊れたら元も子もないぞ」
 バラバラになってしまったら、見世物としての価値が半減する。
 「パッキーン」とシャコの背中が半分に割れる。
 その割れ目から、金色の光が溢れ出た。
 「こりゃ何だ。何が起きるんだ」
 驚く間もなく、シャコの体が二つに割れ、その中から羽根の生えた大きな虫が現れた。
 カマキリを優美なかたちに修正したような体型だ。

 「うひゃあ。さっきのはサナギだったのか」
 具合が悪く死んでしまったわけではなく、羽化しようとしていたのだ。
 カマキリが立ち上がると、その背丈は2辰鯆兇┐討い拭
 小林が金属バットを掲げ、身構える。
 「コイツ。逃がさねえぞ」
 カマキリはその小林を一瞥すると、鎌のような槍のような腕の先を繰り出した。
 ずしんという音が小林の胸で響く。
 小林は声も出さずに、床に転がった。
 カマキリ宇宙人は小林の胸から心臓を切り取ると、それを口に運んで、ゆっくりと食べた。
 心臓を食べ終わると、さらに小林の死体に近付き、再び鎌を振るう。
 「シャシャシャシャシャ」という音が止むと、小林の体は幾つもの小さな肉片に分断されていた。

 「うひゃあ」
 あまりの凄惨さに、オレは腰を抜かしてしまった。
 この場から逃げ出そうにも、体が動かない。
 「羽化したばかりなのだもの。栄養が要るよな。なら、オレも小林を同じように食われてしまう」
 そうは思っても、ただ呆然とカマキリの食事を見守るだけだ。

 小林が全部食われてしまうと、床には服の切れ端と血痕が少し残っただけだった。
 ここでカマキリが振り返って、オレを見る。
 オレの頭では、何故か普段は使わない言葉が繰り返し浮かんだ。
 「万事休す、とはこのことか」
 シャカシャカという動き方で、カマキリがオレに近づく。
 その宇宙人はオレの顔の前30造里箸海蹐泙農蹐辰心蕕魎鵑擦董△犬辰噺詰めた。
 このとき、もはや観念したオレは、別のことを考えていた。
 「昆虫型の宇宙人って、やっぱり複眼なんだな」
 目玉の中に何百もの小さい目があったのだ。

 しかし、その一瞬の後、カマキリは俺の横を通り過ぎ、別荘の外に出て行った。
 「おお。あいつはオレを殺さなかったのか」
オレはへなへなとその場に崩れ落ちた。
 「してみると、あそこからここに来るまでの間、あの宇宙人はオレたちの会話を全部聴いていたということだな」
 それでオレの命を助けてやろうと思ったのだろう。

 窓から急に光が差し込んで来る。
 窓から夜空を見上げると、あの白い光の玉が飛び去って行くところだった。
 ここで覚醒。