日刊早坂ノボル新聞

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『死の国』ノート 10)死後に起きること

『死の国』ノート 10)死後に起きること
 話し手:神谷龍慶、聞き手:早坂ノボル

■人が死ぬと・・・
(早坂)「ほとんどの者は死後の存在について半信半疑の状態です。これまでのご説明で何となく全体像が見えて来ましたが、まだ実感としては分からない部分が多いようです。そこで視点を変えて、今生きている私たち、すなわち生者の立場から眺め直してみましょう。ひとがもし死ぬと、その後はどういうような変化が生じるのでしょうか」
(神谷)「これまで私は霊界を海に例えて来ました。一方、生身の人間ひとり一人は、まさに雨粒のような存在です。これが地に落ち、雨粒としてのかたちを保てなくなるのが、死ぬということです」
(早坂)「しかし、霊的な次元では死は消滅を指すわけではありません。かたちが変わるだけだと伺いました」
(神谷)「霊素・霊気の総量は原則として一定です。これはエネルギーと同じ理屈で、存在のあり方が変わるだけです。さて、ひとり一人が死んで向かう先は、生命の根源である霊界(海)です。先ほどの例えを使うなら、一滴の雨粒が海に落ちる。それと同じことが起きるわけです」
(早坂)「海に雨が落ちれば、たちまち拡散してしまいます」
(神谷)「雨粒に色を付けてみましょう。赤とか青です。ひとの一生は自らを自分なりの色で染めて行く行為に等しいので、それが最も分かりよいと思います。一粒の雨がもし海に落ちれば・・・」
(早坂)「赤や青の色は一瞬で消えてしまいますね」
(神谷)「この場合の色とは、個性であり人格です。霊界(海)には数え切れないくらいの魂が含まれますから、一人分の個性や人格は瞬く間に吸収されてしまいます」
(早坂)「なるほど。それが『あの世に人格は無い』ということですか。無くなってしまうわけではなく、吸収され拡散してしまうわけですね」
(神谷)「その通りです。例えば元々、早坂ノボルさんだった魂は、沢山の構成要素に分解されます。霊素・霊気からなる何らかの性質として残りますが、それをひとまとめにした、かつての『早坂ノボル』という統合型は無くなってしまいます」
(早坂)「私という人格は無くなるが、消滅するわけではない。死ぬことは終わりではなく、また同時に終わりでもある。そういうことですね。ここで始めて、色即是空、空即是色の本当の意味が分かりました」
(神谷)「総て『霊魂の循環サイクル』の中での変化について語っているのです」

■魂のシャッフル
(早坂)「それでは、ひとが生まれる時の話に移りましょう。霊の海から霊素・霊気が分離して、ひとりの人間をかたちづくる。その時にどういうことが起きるのでしょう」
(神谷)「それでは、実感として分かりやすい例えに直しましょう。霊界(海)には、数え切れぬほどの霊魂が要素に分解されて含まれています。その海から、ほんの少しスプーンで掬ってみましょう。そうするとどうなりますか」
(早坂)「色んなものが混ざった霊的要素を掬い上げてしまいます」
(神谷)「そうです。かつて人間だった時の喜怒哀楽の記憶を含め、様々な要素を断片的に拾い上げるわけです」
(早坂)「しばらく前に生まれ替わりの話がありましたが、それでは、ひとりの前世には数多くのひとの要素があるわけですね。これでようやく、『ひとりがひとりに生まれ替わるわけではない』という言葉の意味が体感的に理解出来ました。子どもには前世の記憶を覚えている者がいますが、一部は正確で、知り得ようの無いことを語ります。その一方で、記憶が曖昧で、複数のひとの経験が入り混じっていることもあるわけです。それを説明するのは、すなわち霊界(海)で、魂が霊素に分解され、シャッフルされるということです」
(神谷)「もちろん、海や大気と同じように、霊界(海)にも濃度や圧力の違いがありますので、偏りも生じます。大気中の気団のように、似たものは似たもの同士まとまる傾向もあるのです。このため、抽出の仕方によっては、偏った人格が形成されたりもします」
(早坂)「それは遺伝のようなものですか」
(神谷)「遺伝は生物学的な効果のことを指しますが、この場合は人格で、血の繋がりとはまったく関係ありません。かつて『切り裂きジャック』だった魂の嗜好性は、同じような嗜好性を持つ霊素を呼び集めますが、その部分を掬い上げてしまうと、似た嗜好性を持つ人間に結実します。もちろん、それが具体的にひとりの人格として発露することはほとんどありません。前に申し上げた通り、一人の人格が、新たな一人の人格に生まれ替わることはないのです。そういう意味での『生まれ替わり』や『輪廻』は存在しません。なお今、申し上げた『切り裂きジャック』はあくまで一個の人格を示す例えとして使用したもので、他意はありません。徳川家康でもリンカーンでも同じです」
(早坂)「すると、人格の成り立ちには、成長心理だけでなく、霊的な要因があることを考慮する必要がありますね」
(神谷)「霊的存在、霊的効果については、何がどう関わっているかを証明することが出来ません。霊の存在自体が『空』または『ゼロ』に近いものなのです。このため、ひとの成り立ちには、何かしらそういう要因もある、すなわち不確実な誤差があると見なす方が適切でしょう。心理学者には、『ものの考え方は総て性的嗜好によって決定される』ようなことを言う人がいましたが、やや近視眼的な捉え方です」

■霊界(海)に戻らぬ魂
(早坂)「死んで霊界(海)に戻り、そこからまたひとつの人格として生まれ出て来る。これが霊魂の本来あるべき姿ということです。一方、肉体が壊れても、人格をそのまま留めたいと願う魂があります。これが幽霊ということでした」
(神谷)「現世と霊界(海)の間には、中間の世界があります。そこの住人は既に魂だけの存在ですが、生前の人格を保っている者です。魂は元々『人格を持つ霊』と定義出来ますので、同語反復的な使い方ですが、今は便宜的に使用します。さて、その次の問題は、その幽霊が何故人格を保っていられるかということになります」
(早坂)「執着心や恨みつらみの念が、肉体と同じように殻の役割を果たす。そんな風に伺いました」
(神谷)「肉体と魂の相互作用によって、ひとの成長と共に人格の殻が形成されます。肉体が無くなっても、その人格の殻のおかげで魂が保たれるわけです。そしてそれを強化するのは、負の感情です。それは憎悪や恨みつらみだけでなく、例えば、ひとを殺した時の悪心もそうです。その心情によって、魂が霊素に分解するプロセスが妨げられるのです」 (続く)