日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第643夜 続『雪女』

◎夢の話 第643夜 続『雪女』
 29日の夜11時に観た夢です。

 俺は呆然と歩き、病院の玄関を出た。
 タクシーを待っていると、先ほどの医師の言葉が蘇った。
 「ステージ4、と言うより、もはや手の打ちようがないと申し上げた方がよいでしょう」
 俺はすぐさま医師に訊き返した。
 「え。3ヶ月前の健診では、何とも無かったのですが」
 医師が俺の方に向き直り、正面を向く。
 椅子が「キーッ」と鳴った。
 「貴方は42歳ですねえ。まだお若い。お若い方は進行が早いことがあるんです」
 医師の言葉が頭の中でわんわんと響く。
 このところ、胃がしくしくと痛かったので、病院で診て貰ったのだが、まさか末期癌とは・・・。
 
 タクシーが止まるのとほとんど同時に携帯が鳴った。
 女房からだ。
 「学校から連絡があったわよ。雪が何か問題を起こしたらしい。貴方も一緒に行ってよ」
 雪は面倒の少ない子だが、一体何があったのか。
 「分かった。これからタクシーで雪の学校に行く。先に行って待っているから」
 とりあえず、俺の病気の話は後回しにする。病気は逃げて行かないからだ。

 中学校に着く。受付に行くが、窓口に事務員がいない。
 そのまま立っていたが、誰も来る気配が無いので、勝手に上がることにした。
 スリッパに履き替えて、職員室に向かう。
 ノックをして、カラカラと戸を引き開けると、十人くらいの教員が一斉に俺の方を向いた。
 「2年B組の冬村雪の父です。担任の先生にお会いしたいのですが」
 すると、女性教師が立ち上がって、俺のほうに近寄って来た。
 「大変ご足労様です。私が担任の神埼です」
 見たところ、まだ二十五六歳といったところだな。
 「教室のほうで、上川君のお母さんが待っておられます。そちらに参りましょうか」
 「今日は一体どういう話ですか?」
 「いや。お母さんが言われるには、雪さんが上川君に怪我をさせた、というのです」
 「まさか。うちの雪は大人しい子ですよ」
 女性教師が困ったように微笑む。
 「その上川君がちょっと、そのう、元気の良い子でして」
 なるほど。上川と言う子がいじめっ子で雪にちょっかいを出した。そこで何かが起きたというわけだ。

 相手の親が待っているという教室に入ると、母親らしき女とその息子が座っていた。
 息子は額に包帯を巻いている。
 気が急いているのか、すぐさま母親が立ち上がって挨拶をして来た。
 「こんにちは。上川の母です」
 俺はひとまず向かい側の席に座った。
 挨拶をする間もなく、母親が口を開く。
 「昨日、うちの息子が帰って来たら、額に怪我をしていました。どうしたのかと訊くと、女子にやられたと言うではありませんか。怪我の具合を確かめると、額は酷い火傷を負っています。事実を確かめるために、こうやって学校にお伺いした次第です」
 生徒のほうを見ると、身長は180センチもありそうな大柄な男子だった。
 「うちの雪が怪我をさせたと言うんですか。ちょっと俄かには考えられませんね」
 雪はどちらかと言えば小柄なほうだし、この男子生徒に手を出したとは考え難い。
 しかし、母親はむきになって言い返した。
 「だって、ご覧の通り、実際に怪我をしているではないですか。火傷をさせるなんてあんまりだと思いますが」

 ここで担任が口を開く。
 「他の生徒が言うには、このところ、上川君は冬村さんを頻繁にからかっていたという話です。下校時には、冬村さんの後ろに付きまとっていたとのことですよ。昨日は、それがしつこかったようで、冬村さんが腹を立てた」
 その話を遮るように、母親が声を上げる。
 「でも怪我をさせるなんてあんまりではないですか。しかも火傷ですよ。このこの額は真っ赤になっています。痕が残るかもしれません」
 
 この時、唐突に声が響いた。
 「こんにちは。ちょっと様子を見に来ました」
 教室の扉が開いていたのだが、そこから白衣の女性が顔を出した。
 「私は保健医の近藤です。ちょっと怪我の具合を診ても宜しいですか」
 母親の顔が明るくなる。きっと自分の味方をすると考えたのだ。
 近藤医師は男子生徒に近付くと、スルスルと額の包帯を外した。
 「ははあ。これは火傷と言うより・・・」
 母親が早速、その言葉に食いつく。
 「酷いですよね。何でしょうか」
 医師はその母親の顔を正面から見て、診断結果を告げる。
 「似ていますが、これは凍傷ですね。しかし、今は七月です。何故こんなものが出来たのでしょう」
 「凍傷。どうやってそんなことに」
 「まあ、液体窒素なんかをかければ、こんな風になるでしょうが、とても考えられません」
 すると、母親は俺のほうに向き直った。
 「液体窒素ですって。冬村さんはうちの息子に液体窒素をかけて、こんな怪我をさせたのです」
 この母親はどうしても俺の娘のせいにしたいらしい。
 だが、医師は母親を嗜めるようにここで言った。
 「液体窒素なんて、ボンベでも担いでいなけりゃ扱えやしません。普段、そういうボンベを持ち歩いている中学生がいると思いますか」

 俺は腹の中でくつくつと笑った。
 何故なら、俺の母は山に棲むある種の種族の者で、ひと言で言えば「雪女」だったからだ。その母、すなわち雪から見れば祖母だが、その祖母は孫娘にあれこれと雪や氷を操る術を教えていたのだ。 
 (長い夢なので、ここで中断)                                 
 以前、『雪女』という短編を書いたことがありますが、その続編が降りて来た模様です。
 娘は祖母によって、連れ去られようとするのですが、父親がそれを引き戻そうとする内容の夢でした。
 これは作品化が出来ると思います。