◎扉を叩く音(続)
毎年、秋から春にかけて、「深夜、玄関のドアを叩く音が聞こえる」話の続きです。
2月14日午前零時5分の記録。
PCに向かい、原稿を書いていると、昼の出来事を思い出した。
病院で体重を量ったら、この3日間で体重が4.5キロ増えていた。
すると、看護師がひと言。
「誰か余分に乗っているんじゃないのかしら」
看護師が機械の周囲を点検する。
そこで、冗談を言った。
「まあ、俺はよく女には好かれる。残念ながら生きていないヤツだが」
「嫌だホント?」
女性はよくここで止まる。すなわちあの世のことに興味があるのだ。
「写真を見たいならいくらでも見せられる」
日常生活の中では、私はほとんど冗談を言わないし、軽口も叩かない。
書く時は嘘や法螺、冗談塗れ。だってそれが仕事だもの。
本当に出すと思ったのか、看護師がすぐに首を振った。
「いやいいです。私は怖いのは苦手なの」
こりゃ残念。携帯の中だけにあるもの凄いのを見て貰って、仲間を増やしたいのに。
ネットにはとても出せない類のものだ。
「死ねば終り」的な考え方が、見た瞬間に一発で変わる。
その話が昼のこと。
「しかし、体重が重くなるってのは、考えたことがないなあ」
実際はどうなのか。
「肩が重くなる」って類の話はよく聞くが、体全体(重量)が現実に重くなったりするのだろうか。
まさにちょうどその時のこと。
ガラス窓を叩く音が「ドン」と響いた。
もうちょっとで割れてしまうくらいの大きな音だ。
その瞬間、その何かが「手の肉付きのところで叩いた」ことを察知した。
咄嗟にカーテンを開いて見たらどうなるのかとも思うが、相手と対峙してしまった時の不快感を想像すると、それこそゲンナリするので、まだやったことはない。
どうやら今季はもう終わったのかと思っていたが、まだ続いているようだ。
ま、これくらいは慣れればどうということもない。
「助けて」と叫ぶ声や「どうして私はこうなったの」という怨み言を聞かせられるよりは、はるかにまし。
ホテルの十階に泊まり、夜ぶつぶつと隣が煩いので見に行ったら、壁の向こう側には部屋がない。
そういうことも現実にはある。
いつも思うが、どうしてあちら側には、こっちが見えるのだろう。
行き当たりばったりではなく、私の存在を知った上で行為に及んでいることは明白だ。
今日はしつこくて、今も廊下や別室でごとごとと音が響く。
追記)零時42分。引き続き「ダン」と一発。さっきより強く叩いた。