◎病院にて
最近、体重計測の時に、「自分の名前」を言わされるようになった。
患者が増えたし、新人の看護師も増えたせいで、「どれが誰で」とまごつかないようにするためだ。
なお検査で自分の名を言うのは普通だが、これは単に「体重を測る」時の話だ。
病棟では既に古株なので、主だった看護師が当方の名を知らぬ筈が無い。
そこで、高田順次さんみたいに、テキトーな名前を言うことにした。
「千昌夫です」
これは、ま、岩手県出身だし、女房が外人という共通点がある。
「渡辺謙です」
年齢がそっくり。ちなみに、女性が思慮深いかどうかを確かめる時には、「俺は※※にそっくり」と言ってみるとよい。
「※※を加える」ことが重要で、「出身校が」「生まれ故郷が」と限定する。ま、詐欺の基本的な手法で、相手が勝手に思い込んでくれるのを待つ手法だ。
「市役所のほうから来ました」に同じ。
もちろん、事実を踏まえている必要がある。
「俺は年齢が渡辺謙にそっくりだ」は「年齢」が鍵になる。
これをきちんと聞いて、「え。何歳なの?」と問い返すのは3割で、多くは「年齢」の部分を聞かず、「外見」だと思い込む。
そこで「ええ?似てないよ」と反応する。
結婚するなら、きちんと聞く注意力を持つ相手で、その女性は自分に対し、きちんと向き合ってくれている。
(でも、もし浮気をすると、すぐに見付かると思う。)
脱線したが、3日も経つと、名前のネタに困って来て、明確な共通点を探せなくなって来た。
「上原謙です」
「緒方挙です」
「田宮二郎です」
「佐藤蛾次郎です」(マニアックだ。)
これらを無意識に言っていたが、「何か共通点があるから思い浮かぶのだ」と考え、それを捜してみた。
最初は「ケン」シリーズになっているが、これは関係ない。
すぐに分かった。
上原謙さん以降は、皆、亡くなった人だった。
当方は、もはやあちら側にかなり近い立場になっている。もう仲間だな。
昨日は、計量機の前に新人が立っていたのだが、周りのオヤジ看護師たちがこっちをを見ていた。
「またバカオヤジがマニアックな名前を言うのだろう」と思っていたらしい。
そこで普通に自分の名を言うと、オヤジたちがずっこけていた。
「ありゃ。今日は普通だ」
そりゃそうだ。22歳の男子は、「スマイリー小原」とか知るわけが無いし、毎日緊張しているから、冗談も通じない。