日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第675夜 神社

◎夢の話 第675夜 神社
 3日の午後7時に転寝をした時に観た短い夢です。

 瞼を開くと足袋を穿いた足が見える。
 階段が急だから、足を踏み外さないように、丁寧に下りているのだ。
 「ここは?」
 周囲を見回すと、どうやら神社の境内らしい。
 階段の上に神殿の屋根が見え、下の方を向くと鳥居が立っていた。
 どうやら、俺は上で参拝を済ませ、帰ろうとしているところのようだ。
 もう一度歩き出す。

 あと二十段ほどで鳥居の下に行き着く。
 その鳥居を出た先には、大きな杉の樹が数本立っていた。
 一本の樹の根元のほうに、何やら白いものがチラチラ見え隠れする。
 何だろう。
 ここは神社だから、白い紙を三角に折ったヤツだろうか。
 注連縄に下がっているものだ。
 「あれ。何ていう名前だっけな」
 どうにも思い出せない。
 再び階段を下りる。

 少し角度が変わり、杉の樹の後ろに見え隠れしているものが、はっきり見えて来た。
 着物だ。
 白い着物の裾がそよ風にはためいているのだ。
 視線を上げると、その着物の主の顔が見えた。
 若い女だった。
 白装束の女は、その着物よりも一層白い顔をしていた。

 「何であんなところに立っているのだろう」
 おかしいよな。
 神社まで来ているのに、境内に入りもせず、入り口の外でじっと立っている。
 俺はまた数段降りたが、女は身動ぎもせずその場に立ったままだった。
 あと七段で鳥居を出る。
 そこで、また女を見ると、その女が俺のことを見上げていた。
 無表情で、感情がまったく感じられない。
 「嫌な感じだよな。こういうのは生きた人間じゃあ、ありえない」
 でも、幽霊がこんなにはっきり見えたりするかな。

 足を止めて、もう一度女のことを見る。
 ここで、おぼろげながら状況が分かって来た。
 「なるほど。神社の中には入って来られないのだ」
 すなわち、あの女は不浄の者だということだ。
 女の着物の裾に目が止まる。
 着物の裾には、鮮やかな血の跡が転々と点いていた。
 「かなり前に殺されたんだな」
 それで、地元の人に見つかり、墓地に埋葬して貰った。
 白い着物は死に装束というわけだ。
 「だが、成仏出来ずに、この神社の前に立っている」
 まるで人を待っているかのうような佇まいだった。

 「ああ。実際にあの女は待っているのだ。誰か適切な者がここを通り掛かったら、その人について行き、家に帰ろうと思っているのだ」
 思案したのは、ほんの少しの間だった。
 「適切なヤツって、まさに俺みたいなヤツのことじゃんか」
 そりゃそうだ。
 あの女からは、俺のことが見えている。
 と言うより、俺のことしか見えないのだ。

 「なら、鳥居を出た瞬間にずしっと体が重くなるだろうな」
 階段を下って、鳥居の外に出なければ、俺も自分の家に帰ることが出来ない。
 でも、外に出た瞬間に、あの女が俺に取り憑く。
 「さて、ここからどうしたもんか」
 俺は片足を宙に浮かせたまま、下りようか下りまいか考え込む。
 ここで覚醒。

 正解は「さっさと下りて、もう一度神殿に上がり、そこで女を離してやる」でした。
 自分では上がれないが、人と一緒なら入れます。