◎夢の話 第711夜 まだここにいた
21日に神社から帰宅して、すぐに寝込んだ際に観た夢です。
我に返ると、俺は床に倒れ伏していた。
「ここは・・・?」
俺が倒れていたのは戸口で、右足だけが戸の外に出ている。
「これは昨日の夢じゃないか」
俺は高架下にある倉庫バーのような場所に足を踏み入れたのだが、そこで心不全を発症して倒れたのだ。
「せっかく抜け出せたと思ったのに、一歩も動いていなかったわけだ」
溜め息が出る。
視線を頭の先の方に向けると、6、7メートル先にテーブルが見えた。
これも前回と同じだ。
テーブルの正面奥には、老人が座っている。例によって、何か書類のようなものに目を通している。
ぶつぶつと声が聞こえるのは、首を吊った男だ。こいつもやはり空中に浮き、両足を揺らしていた。
もう一度、テーブルに視線を戻す。
すると、上の灯りから外れていたので見え難かったが、テーブルの左右サイドに、男女が一人ずつ座っていた。
「ああ。あれは前回、ここに入って来たヤツらだ」
愚かな奴らだ。心霊スポットの探検に来て、穴に嵌り込んだと見える。
男女各々の前には、コーヒーカップが置いてある。
二人は青白い顔で、カップに手を掛け、持ち上げようとしていた。
「おい。そいつを飲むんじゃない。この部屋はあの世とこの世の間にある。そこで飲み食いしたら、もはや現世には戻れなくなるんだぞ」
だが、俺の言葉は届かない。俺は言葉を発することが出来ず、モガモガと呻いただけだった。
ま、自業自得だ。好奇心で動く輩は結局はそうなるもんだ。
前回、俺は右足の親指だけで、戸口に掴まっていたが、今は足の踝から先が外に出ている。何となく、前よりも力を入れやすいような気がする。
「なるほど。少し外に出るだけで、動けるようになるわけだな」
それなら、何としても、外側に体を持ち出さねば。
必死でもがき、戸口の方ににじり寄る。
俺の全身から、汗がまさに滝のように流れ落ちる。
ここで覚醒。
実際に、トレーナーがぐっしょり濡れてしまうほど、脂汗を掻いていました。
たぶん、まだあの場所から完全に抜け出せてはいません。