日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第730夜 ダブリー

◎夢の話 第730夜 ダブリー
 29日の午前5時に観た夢です。

 対面のオヤジが配牌を見て、「おお、テンパってら」と呟いた。
 正面にいた俺の顔を覗いて、牌を横に倒し、「じゃあダブリー」と言う。

 ここはフリーのリーチ麻雀荘だ。
 上の階の高いレートの場が立たないので、3人で場を繋ぐためにリーチ雀荘に降りて来たのだが、対面のオヤジがそこで加わった。
 ポロシャツにチノパンツ。何をやっているのかは分からないが、ま、勤め人だな。

 上家は会社の社長で、上の階から降りて来た面子の一人だ。
 俺は大学院生なのだが、雀荘で知り合った社長に気に入られて、色んなところに呼ばれた。シンガポールとかバンコクにも一緒に遊びに行ったが、要するに、俺が英語やタイ語が少し話せたので、「重宝だ」という理由だったからだ。
 実際、各地のソープ店まで道案内をさせられたりもした。
 いつも割り勘だから、頭を下げる必要も無いので、対等の放し方をしていたが、そこがまた気に入られて、高いレートの麻雀にも誘って貰えるようになった。
 俺は社会学の院生だから、断るわけが無い。こんな面白い人間交流の場はないからだ。

 下家は社長の知り合いで、元暴力団。今は左官の口入れをやっている。
 工事現場に職人を送り込む手配をするのが仕事だが、一人当たり幾らの分銭を貰うから、左団扇の生活かと思いきや、自分も現場に行く。
 汗を流して働くのが好きなのだろう。

 上家の社長が呟く。
 「さて、ダブリーにはどうしたもんだろ」
 ちらと起家の顔を見る。
「サラリーマンだろうから風牌は止めとくか」
 そう言って、社長は第一打で五萬を河に置いた。
 起家のオヤジが右眉を少し上がる。

 俺の頭はくるくると働いた。
 (ここはリーチ麻雀荘だ。五の赤牌が各数子に2枚ずつあるから6枚ある。赤牌を引いて来て放銃しないようにするから、普通のリーチに五の嵌張待ちは十分にあり得る。でも、裏ドラご祝儀もあるわけだし、ツモれる待ちの方がずっと良いから、ダブリーなら「穴五萬はない」と考えたのか。)
 もちろん、一発で勤め人リーチにに風牌を切るバカはいない。勤め人や学生は巧妙な出上がりを仕掛けては、「出上がりを見て喜ぶ」という目出度い人種だから、フリーのリーチ麻雀の打ち筋とは違う。
 打ち筋が違うから、来た最初の日に、勤め人や学生は必ず勝って帰る。
 ところが、それで味をしめて雀荘に通うようになると、次第に場に慣れる。
 そこで、気付くのは、「着順とはあまり関係がない」ということだ。
 1着を取っているのに、あまり実入りが多くない。
 そこで、先輩の真似をしてツモろうとするが、そっちは周りのほうが長けている。
 どんどん負けて、例外なく、ひと月後には百万の借金を作って、顔を出さなくなるのだ。

 他のヤツは「ご祝儀をツモる」麻雀を打っているし、特定の相手と差しウマを交わしている。実際、社長とヤメ暴も、半チャンごとに1万か2万のウマを交わしていた。
 下の雀荘は、「中ピンの平」のレートで、2万5千点持ちの3万返し、千点千円の総ウマなしだ。ハコで3万だから、いわゆる大衆店で、職人も来ればホステスも来る。
 社長やヤメ暴はそれではつまらないから、二人だけのウマを交わしているわけだ。

 (でも、何の根拠なしに第一打が五萬というのは無いよな。五萬の赤は2枚とも社長か、あるいは、四萬六萬を暗刻で持っているとかだろ。配牌もかなり良い。)
 筒子の赤は2枚とも俺の手配にあった。
 ようやく考えがまとまる。
 俺は「なるほど。それじゃあ、萬子は薄いな」と口に出して言い、七萬を切った。
 「薄いな」は当然ブラフで、顔色を見るためのものだ。ダブリーで七萬の辺張待ちはしない。
 すると、下家のヤメ暴が間髪入れず、俺と同じ七萬を切る。
 萬子の中央付近は、「既に社長が抱えている」と考えたのだ。

 対面は「おお、皆さん強気ですね」と腕を振って、最初の牌を絞り上げる。
 その仕草で、素性がばれてしまう。勤め人に間違いない。
 しかも、厳しい場を経験したことがないのだ。
 もちろん、空振りで、オヤジは牌を河に出す。

 その次の順目からは、萬子がバラバラと河に出た。
(問題は赤牌だが、萬子は社長、筒子は俺だ。策子はどこだろ。)
ヤメ暴も回らずに来ているようだし、ここかも。
 三順目からはようやく字牌が出始める。
 一発を交わせば、字牌待ちの放銃など大したことは無い。
 ツモれば三倍が懐に集まるが、放銃ならその三分の一。
 出上がりを取っている打ち手は、全然怖くない。怖いのは、きちきちとツモ上がりを重ねていくヤツだ。

 七順目に入ると、社長が言った。
 「俺は索子だと思うね。上の方だ。一四索か二五索」
 字牌の大半が通り、既に索子待ちが見えていた。俺は六筒を切る。
 澄ましているが、もちろん、通っていない筋だから、内心では少し緊張している。
 「俺も索子と思います。でも待ちはそんなに良くない」
 これもブラフだ。
 すると、オヤジがほんの少し慌てて言う。
 「ちょっと。相談は禁止だよ。それに言い牌は上がれなくなるんだろ」
 間髪入れず、ヤメ暴が黙って八索を切る。
 俺はここで再び少し緊張した。
 (次辺りは下家も来そうだ。ここで八索は強いな。この人も「上の方」と呼んで、手が煮詰まったから勝負に来ているんだな。)
 対面のオヤジがツモ切る。

 社長が牌を引き、一瞬考えたが、そのままツモ切って横に曲げた。
 「言い牌は基本、出上がり出来ないけれど、例外はある。こんな風に」
 社長は自分の手牌の一部を晒した。
 「オープンにすれば問題ないわけだ」
 待ちは一四七索で、きっちり索子に寄せてあった。
 
 俺も手は出来ていた。赤が2枚だし、不足は無い。ツモって裏ドラで、一局で一万円を超える。
 社長やヤメ暴にバカにされないためには、ここは行かないと。
「俺はこのダブリーは嵌リャンソ-だと思いますね。では俺もオープン」
 二五索の筋が本線だが、圧力を掛けるのと、顔色を見るために、あえて「嵌二索」と言いきった。
 俺の待ちは二五八索の三面待ちだった。読みが当たっていれば放銃することはない。
 ここで下家のヤメ暴が牌を横に倒した。
 「じゃあ、俺もオープンだな」
 待ちは変則多面待ちで、一四索と五筒。赤が2枚顔を出した。

(何だ、この対面のオヤジ。赤無し嵌二索のダブリーのみだったのか。まさか、本当に「配牌を見たらテンパッていました」でリーチしたのか。)
 その考え方では、ビギナーズラックも無いと思う。
 博打の基本は、「ツキが寄りそうなヤツの脛を蹴り、下がっているヤツをとことん叩く」だ。
 そう思って、上家の顔を見ると、社長は俺の考えを悟ったのか、「うむ」と小さく頷いた。
 ここで覚醒。

 現実の世界では、対面のオヤジが一発で黒五筒を振り込んだと記憶しています。
 当方は麻雀の才能も乏しかったですが、どんな道でも、経験によって、二流くらいまでは行くことが出来ると思います。
 麻雀は消費する時間が長すぎて、「勿体無い」ような気がします。
 大学院を出たところで、必要が無くなったので、麻雀をすっぱり止めました。