日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎夢の話 第745夜 別れた女

◎夢の話 第745夜 別れた女
 6日の午後4時に観た夢です。

 我に返ると、どこかに行こうとしているらしく、駅のプラッテョームの上に立っている。
 「俺はどこに行こうとしているのだろう」
 考えてはみるが、まったく分からない。

 幾度考えても分からないから、どこかに行くのは止めて、先に思い出すことにした。
 ホームの端から中央まで歩き、階段を下った。

 小さい駅らしく、改札口はすぐ下だ。
 駅員が視野に入る。
 「カチン。カッチン。チンカチンチン」
 切符切りの鋏が音を立てている。

 「おいおい。カードが無い頃なのか。切符を一々カットしていたのは、随分、昔の話だぞ」
 じゃあ、携帯も無いな。
 俺は随分若いはずだが・・・。

 それから改札に近付いたが、そこで立ち止まる。
 「ああ。俺は人に会いに来たのだったな」
 でも、誰だろう。
 何となく、思い出したような気がしたので、改札を出た。

 外に出て、左に曲がり、さらに先に進む。
 目的地まではそれほど遠くない。
 1キロくらいだろう。
 でも、俺は電車に乗り、どこかに行こうとしていた。
 目的地が外にあるのに、何故電車に乗るんだろう。

 しばらく歩き、角を曲がった。
 俺が行こうとしていたのは、40メートルほど先にある。
 視線を先に向けると、小奇麗なアパートが建っていた。

 「あそこか」
 歩を進めようとしたが、すぐに立ち止まった。
 男女のカップルが部屋に入ろうとしているのが見えたからだ。
 男のことは知らないが、女の方には見覚えがある。

 「確かあの子と俺は付き合っていたよな」
 色んな記憶が蘇る。
 数年間分の思い出だ。

 「そうか。俺たちは別れたんだっけな」
 もう半年は経つ。
 「そうなると・・・」
 すぐに思い出した。
 俺は別れた女のことが忘れられずに、その娘の家の近くまで来たのだ。
 別に「会いたい」と思っているわけではなく、未練があるわけでもない。
 「ただ何となく」、度々、近くに引き寄せられているのだ。

 「もう何十年も前のことなのに、俺はまだ苛まれているんだな」
 体験が心の傷として残っているので、それを反芻しているのだ。

 「してみると、これは夢だ」
 今、俺は夢の中にいる。
 二十歳前に別れたこの女の夢を時々観るのだが、その夢は、常に「別れの場面」か「別れた後の心残り」が背景に横たわっている。
 「しかし、いい加減、解放して欲しいものだが」
 自分ではもう忘れているつもりでも、記憶はきちんと残っている。
 普段は引き出しの中に仕舞ってあり、表に出ないが、やはりきちんと存在しているのだ。
 ひとは「忘れる」ことが出来ない生き物だからな。

 ここで、俺はさらにもう1つのことに気付いた。
 「今の俺は幽霊に似ているよな」
 幽霊は記憶と感情だけの存在だ。
 そいつに拘ることで、存在を保っている。
 
 ここでパッと我に返る。
 「おいおい。今の俺は果たして生きているのか。それとも死んだ後なのか」
 「今の俺」は、もはやそんなことも判断がつかないようになっていた。
 ここで覚醒。