◎95歳まで生きる人
厚労統計によると、いずれ「4人に1人が95歳まで生きる」ようになるそう。
誰かそれらしい評論家みたいなのが口にしていた。
この感想は「それは目出度いが、もしそれを信じるとしたら底無しのバカ」だ。
生命表や平均余命の類の根拠数値は、「各歳人口の(年間)死亡率」に過ぎない。
「各歳人口」には、「その歳に達するまでの」という意味を含まない。
「その時、※歳だった人」が対象で、すなわち、「それまで生き残っていた人」の年間死亡率を観察するものだ。
この「1年間」の期間を複数年に拡大し、平均をとっても意味は変わらない。
繰り返すが、「これまで生きて来た人」の短期死亡率を観察することから一歩も出ていないから、その時点までに死んでいる人の分は勘定に入らない。
生き残っている人が「しぶとい」のは当たり前だから、最上方のみを観察することになる。
視角を替え、同じ根拠数値を使って、「ある年に生まれた人が※歳時に生き残っている割合」を計算すると、90歳時点では1割以下、もしくは1割程度になる(男性)。
95歳なら今のデータで算出しないと正確さに欠けるが、現状では1、2パーセント以下だと思う。
ここで質問だ。
「現状で95歳まで生き残れるのは数パーセント。あなたは自分がその人たちの間に入っていると思いますか」
ここで「はい」と言える人は、老後2千万でも3千万でも用意してくれ。心配ならそれ以上。
現状では65歳を過ぎた頃から、生残率は急カーブで下降する。
現実味があるのは、せいぜい80歳台半ばまで。
同じ数値でもそうなのだから、同時出生集団の各歳別死亡率を観察していくと、見え方が大幅に替わって来る。
面白いのは「団塊の世代」だ。
この年齢層は、他の層よりも各歳時の生残率が高い(死亡率が低い)ようだ。
「団塊」はそろそろ70台の半ばだから、人生期を通じての生残率を実態として調べることが可能になる。
この層がおそらく「最も生残率の高い」年齢層だから、他の年齢層を予測する時に参考になる。
これは国全体の実測であれば、手間は掛かるが難しくない。
研究職時代には、「いずれ研究テーマに」と思っていたので、やってみようかと思う。
難点は、今は既に研究職ではないので、「全部自費」だということだ(苦笑)。
机上の計算だけに終始していると、「統計上の死角」に関する配慮を忘れてしまう。
朝のワイドショーを観ると、専門家風のコメンテイターが「びっくりするほど無知」なことを語っていたりする。耳を疑うほどだ。
なるほど、この人たちは「視聴者受け」の専門家なのだと思う。「その道の」ではない。