日刊早坂ノボル新聞

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◎こんな映画観ました 『ホームステイ』

◎こんな映画観ました 『ホームステイ』

 買い物に行く道の途中にレンタル店があるのだが、ひとまず営業自粛業種ではない。

 今は皆、家に居ることが多いから、おそらく家で過ごすのに「映画やゲームがなければしんどい」ことへの配慮だろう。

 でも、やはり外出は外出なので、店に寄っても滞在時間は数分だ。

 このため、じっくり選ぶ余裕がない。

 ざっと題名だけを見て、さっと抜いて来る。家に着くと、まず玄関先で消毒して、日向に放置し、4、5時間経ってから居間に入れる。

 

 これもそんな風に借りて来たDVDなので、予備知識が無く、どんな映画かも見当がつかない。

 DVDを点けてみたら、タイ映画だった。

 タイとかインド、インドネシアはもちろん、北南欧や南米では、まだ映画へのリスペクトが生きているから、根性を入れて映画を作る。それで時々、やたら面白いものがあったりする。

 

 この映画は序盤中盤終盤とタッチが違う。

 個人的に私は、「男女が入れ替わったり」、「タイムスリップしたり」する映画が大嫌いだ。

 最近、その理由が分かったが、結局はかつての大林作品を尊敬しているからだった。

 (大林監督は、最近亡くなられた。合掌。)

 『転校生』や『時駆け』、『さびしんぼう』が良かったから、それとラインが近いのは観られないのだろう。

 

 この映画は、「死者が他人の体に入って、生前の謎を解く」という、近年の日本映画によくありがちコンセプトだ。

 しかし、割と観られるのは、序盤が大林作品にそっくりな作りだったからだろう。

 主役は高校生の男子(に入った死者の魂)で、「百日間の一時滞在(すなわちホームステイ)期間」を与えられる。その百日の間に、「高校生が自殺した原因を探し当てれば、ずっと生きられるが、出来なければ、そこで死ぬ」という課題を出される。

 同級生の女子や、先輩女子との微妙な関係がここで描かれるが、この辺はまるっきり大林風だ。筋自体は浅田次郎さんが好きそうな語り方だ(嫌いだが)。

 

 高校生(に入った死者)は家族や友達から情報を集めるが、どの人とも、なかなかブラックな関係があり、体の主が追い詰められていたことを知る。

 ここの中盤は韓流みたいなブラックさだ。

 主人公は自分自身が誰かも分からないのに、生き返るために、高校生の謎解きをしてゆく。

 

 終盤に来て、だんだん筋が読めて来るが、「あれあれ、どっかで読んだことがあるなあ」という展開が幾つも重なっている。

 そもそも、序盤の設定からして、何年か前のタイ映画にあった「科学オリンピック」出場をめぐる騒動だし。オリンピックに出るためにズルをするが・・・という流れだ。

 ここは、たぶん、タイの映画製作チームが「盛った」ヤツだろう。

 

 中盤くらいまでは、すごく面白い。

 「先輩女子」も「同級生女子」も、もの凄く可愛くて「萌ええっ」とさせられる。

 二人ともタイ人のイメージではない顔立ちだが、これもそれを狙ったキャストなのだろう。

 どちらも「すっきり系美人」だから、序盤での見分けは髪型の違いが頼り。

 私は途中まで同じ女子だと思っていた。

 

 死者が蘇ってどうたらこうたらは、日本の小説ではありきたりなのだが、この辺からそのありきたり小説にどんどん近づいて行く。

 この先はネタバレだが、タイ映画を観る人は少ないだろうから、書いてしまう。

 結局、自殺高校生の中に入った「誰か」の魂は、元からその高校生自身だった、というのがオチになっている。

 終盤に来ると、筋が「もはや定型」だから、「これって、絶対に日本人が書いたよな」と思うに至る。

 

 しかも4、5本の小説や映画を、それと分からないようにエキスを抜き取って使っている感じ。

 かたや高校生が日本と違い等身大なので、学校のリアル観は良い。

 青少年がきちんと青少年をしている。

 主役の高校生が※ャニーズタレント並みの演技力だが、脇の役者が結構上手に演じている。

 主人公は「先輩」にも「同級生」にも心が揺れるのだが、本命は「先輩女子」だ。

 ま、観客の方は「同級生」の方を選ぶ方を支持すると思う。

 

 後で確かめたら、原作はやはり日本人作家だった。

 たぶん、若い人だろうと思う。

 「あこがれの女子が実は教師と出来ていて」という件も、他の映画でそっくりなのがあったと思う。

 

 死んだのは「自分だった」というオチだが、これはない。

 「一時だけ別人として生き返る」のが「ホームステイ」たる所以なのに、元が自分自身だったなら、設定の意味が薄くなる。少し物語としてご都合主義、もしくは破綻していると言える。

 若い人は気付かないだろうが、こういう感じの映画を何本も観ていると、元ネタがあれこれ思い浮かぶ。4、5本の小説のエッセンスを利用して筋を再構成した印象で、映像の方も他の映画の影響が濃い。

 

 でも映画を観て「損した」感はない。若者は喜んだろう。

 女子二人が最後まで持たせてくれる。