日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎七月の品評

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七月の品評 S01-S05

◎七月の品評

 七月も収集品の処分を進めるが、先に品評をこちらに出した上で、HPの方にリストを掲示するという流れにすることにした。

 版下編集機を買う積み立てにするつもりなのだが、それ以前に原稿を版下に直すPCソフトを購入する必要がある。総てを買い替えなくては作業にならない。

 

S01 庫車(クチャ)回文銭 6枚組+オマケ 

 1864年に西域の庫車(亀茲)で作られた貨幣のよう。

 少し前の記事に書いたが、北京の故宮博物院の研究員氏より入手した品になる。

 『中国古銭大集』には、大字と小字の二種が掲載されていたと思うが、字面はもう少し変化がある印象だ。中国人にとってもウイグル文字は分かり難いものらしい。

 こういう品の収集こそが、道楽の道楽たるところだと思う。

 文面を読むためには、かなりの勉強が必要で、もはや収集ではなく研究の領域になる。

 古銭の世界では、「とりあえず三千円」という見立てがあるが、よく分からぬ品は古さで値段が決められる。昔からこの手は変わらず三千円くらいだが、より詳細が分かれば楽しかろう。

 オマケの六角銭は、バンタン銭(確か)で島嶼部のもの。

 

S02 絵銭 仏神・道教神・易神  6枚組

 信仰を目的とする絵銭らしい絵銭で、①文殊菩薩 ➁鍾馗 ③妙見菩薩 ④水天宮 ⑤大日如来 ⑥不動明王

①③⑤⑥が仏神、②が道教神(中国神)で、④は日本の易神。

 成田山のものは、割と古い時代から最近に至るまで長く作られた品だ。

 仏神絵銭の多くは江戸期の古銭書に掲載されている。

 大日如来(少歪有)は、大陸から戻って来たもの。あちらでも「日本のもの」という認識らしい。

 今も割と人気があるのは、信仰に関連しているからで、実際にお守りとして使われる。

 「いずれ揃うだろう」と見ていたが、仏神を揃えるのは容易ではなく、決まった種類しか集められない。

 ◆(参考)仏神の種別

(1)如来 : 「釈迦如来」「阿弥陀如来」「薬師如来」「大日如来」 等

(2)菩薩 : 「地蔵菩薩」「弥勒菩薩」「観音菩薩」 等

(3)明王 : 「不動明王」「降三世明王」「軍荼利明王」「大威徳明王」「金剛夜叉明王

(4)天部 : 梵天帝釈天持国天増長天広目天多聞天毘沙門天)の四天王、弁才天(弁財天)、大黒天、吉祥、韋駄、摩利支歓喜金剛力士鬼子母神(訶梨帝母)、その他

  

S03 寛永当四 密鋳小字写し

 密鋳銭の大半は明和の写しだが、幾らか文政の写しもある。「文政写し」が好まれるのは、割と書体変化が見られることによる。字が矮小化することで、どの書体なのかの判別に手間が掛かったりする。この品も俯永なのか小字なのか迷うところだが、背面を見ると左下一直波で、小字だと分かる。内郭付近に少歪みがある。

 文政写しを全種揃えたら、さぞ楽しいだろうと思う。

 

S04 寛永当四 大字南部写し

 ようやく正体が分かったので、「本気売り」で提供できる。

 ちなみに、「本気売り」でないケースは、鑑定意見を求めるための出品で、応札状況で当該品がどのように眺められているかを確かめる目的による。自分で落札し、手数料を払うが、「吊り上げ」のように売買を目的とするものではない。

 見解(品評)は「評価額」に反映されるので、少々、強引だが多用した。これに気付かない人が多かった模様。

 密鋳銭は本来の型の特徴が弱まる傾向にあり、銭種が良く分からないケースが出る。

 大字の密鋳写しは希少品でもあり、これが大字だと判断するのに少し考えさせられた。

 銭種以上に、製作が南部地方の密鋳銭と少しずれており、「文久様」に近似している。

 実際、この品の隣には文久様の俯永手が収まっていた。

 撰銭で出すには、東北地方の初銭を四五万枚は見る必要がある。

 大字写しを拾えたのは、人生で一度切りだった。

 26ミリ台の小型寛永だが状態はさすがに万全とは行かない。机に放置していたら、株に少し錆を出してしまった。

 地金が赤い以外は「文久様と同じ」なのだが、これは逆に、「文久様」の出自がこの地方だという説の根拠になるのではないか。

 これが文政大字と変わらぬように見えるのでは、密鋳銭は向かない。密鋳銭を理解するには、ひたすら撰銭をする他に道はない。

 

 

 

S05 珍開左駒 各種

 和同珍開・左駒の母子さまざまとなる。個々に一枚ずつ見ると、何のことやらよく分からないが、並べてみると、なるほど母銭は母銭だし、通用は通用式になっている。

 入札等を見ると、この銭種の落札価格にはかなりの幅があるが、かなり古くから割と最近まで作られて来たことによる。もちろん、古くて味のある絵銭が好まれる。

 四枚目の写し(少ヒビ入り)はオマケだが、亜鉛がかなり混じっている。亜鉛含みの絵銭は、三陸方面の作なので、もし砂抜けの良い品を探せば、かなりの希少品になる。ただ、亜鉛は劣化が早いので、状態の良い品がなかなか見つからない。