日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎今は虎がいる

f:id:seiichiconan:20200830161529j:plain

◎今は虎がいる

 竈神を中に入れ、その代わりに当家の門には虎の置物を置いてある。

 出しっ放しでも平気なのは「安物」だからということ。

 かなり前に、所沢インターから五百㍍くらいのところに古物商が店を構えていた。

 看板が無く、店の前ががらくたばかりだからそれと分かるくらいの店だが、解体屋系の品物が案外沢山入っていた。

 割と頻繁に行ったが、概ねめぼしい品はなし。

 

 古物は元々そういうものだから、付き合いで何かしら3千円から5千円くらい買った。メンコとかベーゴマとか、別に欲しくて買うわけではない。

 この方面はとかく自分の得になるかどうかを物差しにする人が多いが、そういう人には掘り出し物など永久に当たらない。ご愁傷さま。

 とにかく付き合って、「こういうのが入ったらよろしくね」と繰り返し告げる。

 これが必要だ。

 何年かに一度、まとまった出物があるわけだが、その時に店主が思い浮かべるのは、「いつも付き合ってくれる客」だ。

 この古道具屋から、直接、連絡が入ったのは、「分金類がひと揃い」と、「商家から出た雑銭」だった。前者は百万くらい、後者は25万くらいの買い物だ。

 金物は興味がなかったが、慶長あたりから揃っていたので、とりあえず買った。

 雑銭の方は、銭箱入りのものと木箱入りのものがあり、いずれも完全なウブ銭だった。

 

 分金類は値が高い時の品だったから、後で少し欠損が出た。

 雑銭の方は、業者の言い値で即座に買った。

 手持ち現金が足りず、まず一万円を払って置き、すぐに近くの農協で現金を下ろして戻った。

 銭箱を見ると、それが「代々の商家から出た品」だとひと目で分かったからだ。

 自分が商家の育ちだから分かるが、客が支払う代金の中に「お金として使えないもの」が混じることがある。

 古銭や外国銭ということだが、そういう時に商人は必ず取り除けて、別の箱に入れておく。

 「代々の商家」なら百年規模でそういうのが溜まっている可能性がある。

 もちろん、買う段階では、「可能性」だけだ。

 そこで勝負できない者は、勝つ資格がない。

 開けてみて何もなければ、直観違いの「負け」。目論見通りなら「勝ち」だ。

 銅銭は@35円前後、鉄銭の方でも@10円だから、その時点では別にフツーだ。当百銭は7百円くらいだったか。この辺、買値を正確には覚えない主義だ。

 損をしていれば、思い出す度に腹を立てるから、いい加減な方が良い。

 収集家にはやたら気にする人がいるが、人生が透けて見える。

 そもそも自分で良いと判断しているわけだし、買った後で「高かった」などと口にするのは、自分い鑑定眼がなく、度胸も根性もないということだ。

 そんな奴はちまちまコインでも集めてろ(と、自分にブ-メランが飛ぶ)。

 ま、関東の鉄銭には何もないからこれはお付き合い。鉄銭はやはり岩手青森が一番だ。仙台から南は、行けども行けども「背千の山」となる。

 しかし、「良い物だけ欲しい」は専門店の店頭だけに通じる話で、買い出しの方はクズ物にも値を振って買っている。もし、引き取るなら、「ぜんぶ買う」か「買わない」かの選択肢しかない。

 

 代金を払ってから、少し中を見たが、最初の一括りで「勝った」と思った。永楽銀銭が混じっていたからだ。これもおそらく商人が「これは違うな」と取り除けてあったものだろう。

 埼玉では帰化人が持ってきた皇朝銭が雑銭に混じることがあるが、隆平があった。慶長通宝なら結構沢山あった(確か五枚くらい)。

 当百銭も良くて、離郭やら水戸系のものがゾロゾロ入っていたし、玉塚天保まであった。

 これで「戦前まで実際に使っていた銭箱」だということが分かった。

 「ふうん。玉塚って雑銭からも出るわけだな」と感心した。

 こっちの穴銭で、分金類の欠損を補填するだけでなく、おつりが出た。

 (でも、十数年間でその2回だけで、あとは延々と「付き合い」が続いた。古道具系は得てしてそんなものだ。)

 

 とまあ、話が脱線したようだが、雑銭を買った帰りに、店の前の道路に出ると、この虎の置物が置いてあった。

 出掛けに「これは幾ら?」と訊くと、「今日は買って貰ったから三百円でいいよ」との由。たったサンビャクエンかよ。

 合金製だろうが重量がある。三百円なら鉄でも銅でもアンチモンでもOKだ。

 もちろん、誰かに持って行かれても構わない。

 ま、当方に悪さをすれば、「妖怪顔」が大喜びで出動すると思う。コイツはキツイぞ。

 

 虎には不思議に縁があり、人生の節々に出て来る。

 このため、ハンドルネームはいつも「タイガー※※」を使う。

 神社猫のトラが当家の前に座り、守ってくれると有難いと思う。