◎夢の話 第832夜 お久し振りね
18日の午後二時の仮眠中に観た短い夢です。
我に返ると、どこか温泉旅館のロビーにいる。
ソファに座って、外を眺めていたようだ。
玄関が幾度も開閉し、人が出入りしている。どうやら午後の四時くらいで、この日の客が来る時間帯らしい。
扉が開く。
女性が一人入って来た。
その女性は周囲を見回すと、俺のところで眼を留めた。
暫くの間、じっと俺のことを見ている。
程なく俺の方に向かって歩いて来た。
やはり俺を見つめたままだ。
女性は俺のソファの脇に立った。
「あのう」
俺は「はい?」と顔を上げる。
女性はにっこり笑って言葉を続けた。
「お久し振りね。どれくらいぶりかしら」
女性の顔をしっかり見ると、せいぜい二十台の半ばだ。
え。誰かと人違いをしてるんじゃあないのか。
だが、数秒ほど見ていたら、それが誰か分かった。
その子は、俺が学生時代に付き合っていた女子だった。
「おいおい。外見が昔と同じってことはないだろ。俺はもう死に間際のオヤジジイなのに」
ここですぐに気付く。
「こんなことはアリエネーから、俺はきっと夢を観ているわけだな」
俺の特技?は、「目覚めた後も大半の夢を憶えている」ことと、「夢の中で、自身が夢の中にいることを自覚する」ことだ。
一応、確かめてみる。
「もしかして整形とかした?」
すると、女性は少し膨れた様子で答えた。
「久しぶりに会って、最初の言葉がそれ?」
でもすぐに笑顔に戻る。
これで、俺は「これは夢だ」という確信を持った。
だが、同時に別の不安が頭を過ぎる。
こんな感じに、突然、夢に現れるのは、『虫の知らせ』だってこともあるぞ。
どうせ夢なんだから、不躾でも大丈夫だろ。
そこで俺は女性に訊ねた。
「ねえ。※※ちゃん。もしかして、最近、死んだりした?」
女性は答えず、ただニコニコとほほ笑んでいる。
ここで覚醒。
割と最近だが、夢に昔通った店のホステスが出たので、共通の知人女性にメールをしたら、「最近死んだ」とのこと。
これからは、こういうのが増えると思うが、大半の知人より私の方が先だろう。
ま、あの手この手で自己免疫を高め、先送りにしようと思うが、いつもどこかが出血している有様だし、私の方が誰かの夢に出てやろうと思う。
何となく、死んだ後も、あの世とこの世を出入り出来るようになっている気がする。
もちろん、「この世に戻る」のは悪さをするためだから、出ないに越した方がよいとは思う。