◎エレベーターの四文字熟語
病棟のエレベーターには、上部にモニターが付いている。
映し出されるのは、後部天井の監視カメラで撮影する画像だったり、ありはクイズ形式の情報提供だ。
監視カメラの映像は、頭頂部が映し出されるから、本当にゲンナリ。最近、急激に頭髪が薄くなって来た。
クイズの方は四文字熟語の間を消し、それが何かを考えさせるというものだ。
土曜日の朝の問題はこんな具合だった。
七■八■ : 「こりゃ七転八倒か。まさに俺のことだな」
時間が来ると「チーン」と鳴って、答えが出る。
答えは「七転八起」。なるほどね。
帰りにもエレベーターに乗るわけだが、この時はこの問題。
再■不■ : 「こいつは間違えようがないよな。再起不能」
「チーン」と鳴って、「再起不能」が出る。
こりゃまさに仏壇の前で鳴らす鈴(りん)の音だ。
それから程なく「ちょっと出来過ぎだよな」と気が付いた。
「七転び八起き」じゃあ、七回は転んでいる。それでも「起きろ」って意味だから、「苦しい状況」であることには変わりない。
挙句の果てには「再起不能」かよ。だめじゃん。
ドアが開くと同時に俺は声に出して言った。
「ふざけた話だ。まるで俺のことを言っているようだ。と言うより、まさに俺のことだな」
ま、こんなもんです。「チーン」。