◎夢の話 第951夜 異国の町で
四月十七日の午前二時半に観た夢です。
急な用事が出来、異国の町に行くことになった。
目的地では書類にサインするだけなのだが、本人が行かねばならない。
飛行機と列車を乗り継いで、その地に行き、所用を済ませれば、その足で帰国する。
そんな段取りだ。
帰路、列車の乗り継ぎで、地方駅に降り立った。接続に二時間かかるから駅前に出てみた。
かなり田舎の町で、駅前に丸いロータリーがあるだけで、あとは民家が並んでいる。
商店街のようなものは無かった。
石造りの家が多かったから、「珍しい」と思い、幾枚か撮影した。
その地は軍事施設のようなものはなかったから、カメラを出しても大丈夫だ。
日本ではあまり無いが、外国では「撮影禁止」の場所が沢山ある。うっかりカメラを構えただけで逮捕されてしまうから、よくよく気を付ける必要がある。
その時、駅前には人がほとんどいなかった。
それから無事帰国し、この小旅行での画像をブログやSNSにアップした。
駆け足の旅行だったから、異国の珍しい画像は少なく、駅や車窓からのものが殆どだった。
翌日、自身の画像を開いてみた。
その中に、あの寂しい駅前で撮影した画像もあった。
「あれ?」
一枚の画像の中に、マッチの頭ほどのサイズだが、人々の姿が見えている。
ここは「爪の先」よりもはるかに小さく、「マッチの頭ほど」が正確な表現だ。
PCで元の画像を開き、拡大確認してみると、やはり人影だった。
七八人の屈強な男たちが、皆で何かを掴み、運んでいる様子だ。
「こりゃ何だろう」
さらに拡大する。
すると、男たちは皆修道士みたいな服を来ており、皆で掴んでいたのは「黒い塊」だということが分かった。
「この黒いのは何だろうな」
ここまで来ると、好奇心を止められない。
さらに解析してみる。
すると、その「黒い影」もやはり人の姿をしていることが分かった。
だが、男たちの姿は割と鮮明に写っているのに、その人影だけボヤけている。
「こんなことがあるのだろうか」
人間なのだが、全身が黒く、かつ輪郭がもっさりしているのだ。
あり得ぬ話だ。
幸い、画像のメモリを最大にしていたから、さらに解析することが可能だった。
作業の結果、分かったことは、あの黒い影は女だということだ。
屈強な男たちが一人の女をがっしりと掴まえ、どこかに連れ去ろうとしている。
「おいおい。これって」
人が攫われる瞬間を撮影していたということなのか。
だが、角度を変え、拡大してみると、少し違うことが分かった。
その女がこちらに眼を向けていたのだ。
視線の向きからすると、最初から私のことを見ていたらしい。
「こりゃ一体どういうことだろう」
ここでいったん作業を止め、ブログの話題のひとつに取り上げた。
すると、それを見た知人からすぐに連絡があった。
「今度はどんな幽霊なの?ありゃ『黒い女』だよね」
他人に言われて、初めてドキッとする。
全身黒づくめの服を着た女だというのは分かったが、状況的にそれを「あの世の者」とは疑っていなかったからだ。
もう一度見直す。
すると、確かに女の視線には見覚えがあった。
「これは・・・。イリスの仲間じゃないか」
イリスは女の悪霊の一種で、ひとの心に悪心を吹き込む。
だが、普段見ているイリスより、数段力が上らしい。
「この眼力の強さからすると、うっかりこれを覗き込んだら、共感してしまう者も出て来そうだな」
「認識する」ことは「共感すること」の最初の一歩だが、悪霊の側からは人の好奇心を促すことが出来ない。人の方が自ら動き、眺めることが必要になる。
「悪霊はひとが招き入れぬ限り入っては来られない」という言葉の意味はそういうことだ。
人が悪霊に興味を持ち、自ら覗き込むことで接点が生まれる。
これはそれが実物でなく画像であっても同じ意味を持つ。
「不味いぞ。画像自体は何でもないことが殆どなのだが、コイツはレアなケースだ。もしかすると、自分を見せる・見て貰うことを目的に被写体の中に混じったのかもしれん」
要するに、「仕組まれた」もので、その場合、周囲の男たちは虚像だ。存在したのは、この女だけで、私を利用して多くの人に自分を見させようとしている。
コイツはただの悪霊ではなく、もはや悪魔の域になる。
「不味い。もしかすると悪魔の片棒を担がされたかもしれん」
慌てて、ネットに公開した画像を削除した。
まだ一日だから、画像を見たのは五六百人だ。殆どがチラ見だけだろうから、あの女の視線に気が付いていないかもしれん。
これまでの推測では、私とほとんど同じものを認識するのは百人のうち二三人だ。
要するに、共感する可能性のある者がそれくらいだから、十数人くらいが感化される場合がある。
そういう人が画像を拡散したりすると、少し厄介なことになる。
「いつも私の画像は拡散もツイートもするなと書いている。私にはあの世の仲間がいるから割と安全だが、他に必ずしもそうでは無い者がいるからだ」
ま、99%の人には影響は無い。影響の生じる可能性のある者はごく僅か。
「だが、そのごく少数の者の眼が開いてしまうかもしれん」
もう一度、あの女の画像を取り出して、視線を確かめる。
すると、その女は私に視線が合った、その瞬間に、顔を綻ばせて「にっ」と笑った。
ここで覚醒。
追記)画像を追加した。夢の中に出ていたのは、再左のショールを被り、口の周囲を黒い布で覆ったヤツだ。左から四番目のヤツも同じ女だと思う。
この時には、既に私の存在に気付いていたから、自分の姿を見られぬように周囲の物の間に隠れている。だが、眼がきっちり開いていた。