




◎古貨幣迷宮事件簿 「閉伊の鉄銭を追究する」(前回の続き)
収集家の「常識」とは異なり、鉄銭にはかなりのバラエティがある。
だが、過去の銭譜には、銭種ごとに拓がポツンと一枚か少数枚だけ掲載されているだけだ。
これは鉄銭が見すぼらしくて、見栄えがしないことによる。
要は「誰も研究などして来なかった」のだ。
逆にそれは「未開拓」という意味もあるから、これから収集・研究に入って行く若者にとって、苦労は多いがやりがいのあるジャンルだとも言える。
前回記したが、閉伊三山の鉄銭も謎の多い銭だ。
書き物に記されていたのと、現実に存在している証拠品との間に多くの間隙がある。
どれがそれに該当する現物なのかもよく分かっていない。
そもそも、殆どの収集家・研究者が、大迫や栗林、橋野といった大鋳銭座について、通用銭はおろか母銭ですら見分けが付かぬのが現状だ。
銭種(母銭型)が同じルーツによるもので、その変化による違いだから、見分けが付き難いのは致し方ない。
通用鉄銭に至っては、放棄されたままだと言ってよい。
なんと楽しい話ではないか。深く突き詰めれば、誰でもジャンルのトップに立てるということだ。
オークションで高額品を買い漁る必要もない。そういう収集方法を選択すれば、「金持ちには敵わない」という話になる。珍錢探査の延長では、知見など幾らも深まらない。
鉄銭は誰も真面目に見ぬから、割合、手つかずの状態のままで保存されている。
これからでも遅くはないと思う。
画像は閉伊三山の鉄銭を割り出して行くための大雑把なステップを端的にまとめたものだ。現実には各段階に細かい困難が存在している。
読む人がほとんどいない筈なので、細かい説明は記さないことにした。
もはや「お役御免」の身上でもあるから、楽しさの一片だけを伝えることにする。