日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎古貨幣迷宮事件簿 「古札類の無駄話」

 

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◎古貨幣迷宮事件簿 「古札類の無駄話」

 画像は今朝、奥の書庫から取り出したもの。十年は眠っていたのではないか。

 今晩中にもウェブに出品掲示をするが、紙類にはあまり重きを置いておらず、概ね「紙の質を確かめる」ために入手したものだ。

 値段等もすっかり忘れたので、売価はテキトーだ。

 状態もそれなりだから、「見合うものがあれば」ということで、このジャンルは返品不可とさせて貰う。

 駒かい説明も出来ぬので、体験談のみ以下に記す。

 

C02 秋田藩札(書札)

 『藩札図録』では準藩札の扱いのようだ。

 存在数は割と多いが、大半が庚申、戊辰札となっている。これ以外の品を探せばひとまずお宝だ。

 墨書きの簡単なつくりで、そこは秋田は盛岡藩と並ぶ貧乏藩だった。仙台とは違う。

 当時にも偽物があったようで、何かの書で見分け方を見て分類したが、数十枚見て1枚それらしきものを探し出せた記憶がある。だが、十年も経つとどれが何だかを忘れてしまう。

 図録では「(贋札には)表に丸印が書かれている」とある。

 実際、金種五十文の上に墨で丸を上書きしたものがあるが、右上の角印サイズが小さくなっている。「贋札はこれか」とも思うが自信は無い。

 

 そのお金がお金として使われていた時代に作られ、流通した贋金なら、それはそれで別の意味が生まれる。

 明治の二銭銅貨には鋳造の流通済み贋造貨(流通贋金)があるが、本物よりもずっと評価が高くて、万円の桁の評価になる。

 以前、福島の裁判の証拠品が世に数枚出たのをたまたま入手したことがあるが、これには「偽」という極印が打たれていた。

 都内Oコインで小母さんに見せると、傍にいた人が「どうか私に譲って下さい」と頭を下げるので、深く考えずに譲って上げた。

 これはまだ私が二十台の頃で、そんなに深く古貨幣のことを考えていなかった時のことだ。

 後で考えたら、裁判の証拠品で公的な極印が打ってあるなら、普通の偽二銭銅貨よりもはるかに意味がある。

 さすがに勿体なかった。あれが福島ではなくもっと北だったら、今も持っていたと思う。出来は最高で、金味が良かった。

 今の偽物は数段きれいだが、意味がまるで違うし、品も重みも無い。

 

 数年前に近代銀貨の頒布を行った時に、あるメンバーが銀貨数百枚を買ったのだが、後で「何枚か偽物があったよ」と言いに来た。

 「それは良かったですね。今づくりではなく明治の流通贋金なら本物よりよっぽど価値がある」と言うと、「そうか」と言ってすぐに仕舞い込んだ。

 あれはどうやら最初はクレームのつもりだった模様(笑)。

 戦後の打製偽銀貨は「ただの偽物」だが、流通目的で明治時代に使われていた銀貨なら、資料的な意味がまるで違う。

 「ではその分は買い取ります」と引き取れば良かった。双方ウインウインとはこのことだ。

 

C07 仙台両替札

 裏に証紙(布)が貼ってあるのだが、これが少し歪んでいる。

 これは、証紙が取れたのを、もう一度貼り直したからだ。

 収集の先輩が骨董会で木箱ひとつの仙台札を入手したが、大半の証紙が剥がれていた。それを貼り直すのを私が手伝ったのだが、その時に貰ったものだ。

 タダ働きだが、もちろん、勉強になる。

 こういうのを貼る時には、概ね蕨糊が使われる。傘などを貼る時に多用された。

 蕨粉は今でも容易に入手できるので、これをお湯で溶き、糊を作る。蕨糊は固まると粘着力が強くなる。

 先に微温湯で札を洗い、汚れや固まった糊を洗い流すのだが、この時にはほんの少し酸っぱい匂いがする。糊の時には無味無臭だが、固まると酸化するらしい。

 変質し硬化する するので、今度は水に溶けにくくなる。

 

 何年か前に仙台札が大量に出たことがあるのだが、その枚数は一説によれば軽トラックひとつ分。真実かどうかは知らぬが、NコインズOさんの店の三階に段ボール三つ分くらい置かれていた。全部なのかあるいは一部かを買い取ったということだ。

 総てが新札同様で、墨書きも青々としている。

 実見させて貰ったたが、しかし、蕨糊特有の匂いがしない。

 そこで、こっそり一枚を取って札の角を舐めてみた。(良い子は真似しないこと。古貨幣では毒性のある物質を使っている場合がある。)

 ちなみに、紙を強化する目的で複数枚を重ねて貼り合わせるので、糊は札全体に回る。

 真贋については出たところを見たわけでもないので何も言えぬが、意見はいつも通り同じだ。

 「未使用の古札など買うなよ」ということ。

 百年経てば、それなりの年齢が表に出るのが普通だ。時代を経て、人の手を介したことで、どのように使われたかが分かる。

 仙台札の凄いところは、「バンバン使われており、流通劣化が著しい」ことだ。

 詳細は知らぬが「両替札」なら「銭に換えてくれる」保証をしているということ。

 盛岡藩天保七福神札などは「銭には換えてくれぬ札」で、要は不換紙幣だ。

 不換紙幣を金として流通させるには、発行者によほどの信用が無くてはならない。

 前掲の秋田の書き札も、大して流通させられなかったから、きれいな品が沢山残っている。

 仙台藩は両替を保証していたから「裏付け」があるわけで、そこは大藩と弱小藩との力量の違いだ。なお、これは風評(勝手にそう思っている)なので、事実詳細は地元の人に訊くこと。 

 

 ちなみに、先輩から預かった両替札百数十枚については、当初、蕨糊で丁寧に貼っていたが、後になり「丁寧にやっても評価は大して変わらぬ」と思い直し、最後は普通の糊で貼った。このため、少しズレている。

 証紙自体は揃っていたので、パズルのように正解を組み合わせて貼れた。

 O氏が亡くなった後、札類の一切合切はある業者さんが一括で買い取った。

 その買い取り値もご遺族から聞いているが、その付け方で窺い知るところによると、見解は私と同じようだ。

 仙台ピン札はいずれ紙が茶色に古くなった頃に出て来るのかもしれぬが、もし入手したら、まず微温湯に浸し、匂いを嗅ぐと良い。あるいはその湯を舐めてみる。

 やや汚いが、それくらいは道楽なのだから当たり前だ。たぶん、死にはしない。

 一言居士が多いわけだから、道楽のために死んでも本望だろうと思う。

 でもま、古札は古くなった「バーサン」を選ぶのが基本だ。その方が勉強になる。

 地方貨ももちろん、黒くて両替印を打ってある品だ。

 

注記)いつも通り、記憶のみで一発殴り書きしたもの。不首尾はあると思うのでそのつもりで。