



◎放出資料の解説(続き)
『南部叢書 第九冊』
『南部叢書』第九冊は、南部地方の史書や伝承、口碑を取り纏めたものだ。このうち「九戸軍談記」を読もうと思って入手したのだが、明らかに昔の人が書いた小説だった(作り話)。
ま、この書自体はそれほど古いものではないが、かなり昔の文書でも捏造や創作はあきれるほどある。
戦国時代の記録などは、江戸の初中期にまとめられたものが多いのだが、各藩で自身に都合の良いように書き直したから、出来事の記載が藩毎に変化したりする。
本書では他のところに眼を通していなかったので、今回、伝承の個所を少し読んだが、へんちきりんな話が沢山ある。
末尾画像は「眠っているうちに陰嚢を失くした男の話」だ。
表題を読んだだけで、悲痛ぶりが偲ばれる。
怪異譚の類は当時の状況が反映されているから、やっぱり面白い。
真面目な話の方では「玉山大和が蓑ヶ坂で大蛇を退治した話」などが含まれる。
「玉山大和の蛇退治」は、「大湯四郎左衛門の猿退治」などと並び、奥州の名高い伝説だ。
青森のねぶたか弘前のねぷたのいずれかの山車に必ずどちらかが入っていたと思う。
岩手県の葛巻町の秋祭りでも、盛岡から山車を借りたりするので、目抜き通りを「蛇退治」が練り歩く。
北奥の人なら誰でも玉山大和のことは知っていると思う。大和の名は知らずとも、山車を見たことがある筈だ。
その他は、藩札私札や古文書を読む際に使う「筆書き文字判読のため」の資料などになる。外装や表紙はあまり良くないかもしれぬが、内容は充分参考になる。