◎母の訓示
体が動く時に部屋の片づけをして置くことにした。
私が去った後、息子らが部屋を整理しようとした時に、エッチな本が出て来たら格好が悪いし、紙くずなどを捨てるには良い機会だ。
つくづく「後で使うかも」という書類や本は、「絶対に使わない」と思う。
一方、「今使いたい資料」なんかは、いくら探しても出て来ない。
すると、書籍の間に割と丁寧にファイルされた書状が挟んであった。その中には、母の書いた訓示が入っていた。
息子(私)があまりにも我儘で傍若無人だから、父母は時々、長文の手紙を寄こしたが、殆どが訓示や説教の類だった。
各々が自分の考えでめいめいに意見書を送って来たから、父母は「似た者同士」だったと言える。
母は達筆だったので、書状も昔風の巻紙に筆で記した。
「お袋はつくづく強い人だ」と感じるのは、母が息子にこれを書いたのは、自分が末期がんの診断を受けた後のことだ。入退院を繰り返し、幾度も手術を受けている時だった。
私は半月ごとに実家を訪れていたが、郷里から家に戻ると調度その日にこれが着いた。
母はそのほぼ一年後にこの世を去った。
私は母の望むような人間にはなれなかったが、それでも前を向いて戦うことを忘れたらダメだと改めて思い知った。今やそれだけが母の恩に報いる手段だ。
二枚目のは同じ画像だが、私にはこの手のが時々起きる。
何故か画像の一部が崩れてしまう。
五回ほど撮り直してようやく普通の画像になった。
「何故なのか」と幾度も書状を点検したわけだが、その過程で母の訓示の内容を幾度も読んだ。
後で気付いたが、要するに「よく読め」という意味だと思う。
これは今日にでも息子に「お祖母ちゃんの遺した家訓だから苦しい時に読め」と渡すことにした。