日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎えこひいき

えこひいき

 長女が中学生くらいの時に、「お父さんは妹ばかり可愛がる。えこひいきだ」と言われたことがある。

 父親(私)の返事は「それのどこがいけないのか」だった。

 長女は社交的なので、祖父母や叔父たちから可愛がられていた。とりわけ、下の叔父からは一人だけお小遣いを余計に貰うほどだ。その理由は「顔が叔父にそっくりだった」ことで、叔父はいつも「美人だ。美人だ」と褒めていた。何のことはなく、叔父にとって自他ともに認める「よく似た子」だった、ということ。

 かたや息子は「母親のもの」で、妻は娘たちをそっちのけにして、息子ばかり可愛がる。ま、これはどこの家でも同じだ。

 男の子は母親の最大のペットだ。

 

 「それでは次女のことは、誰が一番に思ってくれるのか?」

 父親しかいないだろ。

 父としてはこういう論理だ。

 長女はそれなりに納得したようで、別段、それ以上の文句は言わなかった。

 

 次女は姉と違い、引っ込み思案で「上がり症」だったので、前に出ることが無い。学校でも、いつも「中の中」だった。

 どこで何をやっても「中の中」だ。勉強も部活も「中の中」。

 安全策を取るのでしくじったことが無い。

 入試の時には、模試の成績では偏差値が十近く下のところを自分で選んで入っている。それなら、周りは「根を詰めればトップだよな」と思うが、そんな気はさらさらなかったようで、そこでもやっぱり中の中だ。

 ソコソコの勉強をして、それなりに部活をやって、割と楽しそうに暮らしていた。

 そういう生き方もある。 

 

 その次女が、周囲のイメージをよそに流通に就職したので、皆が驚いたが、それなりに七八年ほど無難にやってきた。

 いつも忙しそうにしていて、ほとんど家に帰って来ない。

 ま、当たり前だ。流通なので休みは決まった日ではない。名目上、管理職なので、やはり休みでも状況に応じ出ることが多い。

 その娘が過労が原因で「もう体を壊すと思ったから退職する」と言う。

 しばらくは療養やリハビリが必要のようで、「家に戻って来る」と言う。

 体調のことは心配だが、親の目の届くところに戻って来るので、少し嬉しい面もある。

 

 私の母は常に息子たちのことを第一に考え、「平等に接する」ことを心掛けていたようだ。子の幸福は、親が生きて行く支えだと思う。

 今は「子どものためなら心臓でも肝臓でもくれてやろう」という気持ちがよく分かる。(私の場合、あまり使えるものはないのだが。)

 

 当分は、時々、次女の寝顔を見に行ってしまいそうだ。

 嫌われるかもしれんから、程々にしようとは思う。