日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎「つかねー」ようでツイてる人

「つかねー」ようでツイてる人

 毎朝、六時半に娘を駅まで送るのだが、その時間帯だと幹線道路を走る車がやたらスピードを出している。

 まだ通勤車が少ない頃だし、渋滞が始まる前に急いで先に進もうと考えるドライバーが多いからだ。

 幹線道路(16号線)は片側二車線だが、もはや70キロ以上80キロ近く出している車もある。

 

 先ほどその道路で車三台の事故が起きたばかりのところに出くわした。

 右折車が右に曲がろうとしたところに直進車が突っ込み、衝突したはずみで双方が撥ね飛ばされたが、そのすぐ後ろにいた車が衝突車に追突した。そんな事故だ。

 恐らくは信号の変わりしなで、直進車は信号が黄色になったところでスピードをさらに上げたが、これが曇りの朝ではよく見えない。信号が赤になり右折車が曲がり始めたところに、直進車が信号無視のかたちで突っ込んだ。

 

 「朝からツカネーやつらだな。ま、慎重さが足りぬからそうなる」

 若者など、事故に遭ったり、遭いそうになったりした経験の少ない者は、咄嗟の時の対応など考えず、「何も起きぬ」ことを前提に走る。6メーター道路で60キロ以上のスピードを出せば、いずれ人か自転車を撥ねる。幹線道路から旧道に入ったところでは、そんな事故がやたら多い。

 

 事故車が三台散っていたが、車が通り抜けられそうなので、後続車はその間をすり抜けて通っている。

 事故車のドライバーが電話をかけていたから、警察か救急に連絡していたのだろう。

 「つくづく朝からツカネー人たちだが、身から出た錆、因果応報だ」

 だが、最後の車の脇を通ろうとすると、娘が父親に言った。

 「そんなことないよ。すごくツイてる。ほら」

 言われた方を見ると、最後に追突された車は、後部座席から後ろが無くなっていた。

 運転席の二席しか残っていない。

 

 「おお本当だ。車の半分が無くなるほどの事故なのに、あの運転手はまだ生きてら」

 運転手は運転席しかない半分車に乗ったまま、やはりどこかに電話をかけていた。

 朝の通勤時だから、家族連れは少ない。

 後ろに家族を乗せていたら、自分はともかく家族とはお別れだったことだろう。

 そういう意味では、えらくツイてる。