日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎古貨幣迷宮事件簿 「盆回し出品の解説」D512-522

◎古貨幣迷宮事件簿 「盆回し出品の解説」D512-522

 既に昨日までに解説を加えてあるので、特に加筆することはない。

 仙台大型七福神の意匠自体は、明治以後も採用され継続的に作成されており、写しの類は種類が多く存在する。バラエティが沢山あるのは、要するに「昔からある」という意味だが、本銭は希少で、ほとんど目にすることが無い。

 二十年以上前に調べたが、盛岡・花巻では浄法寺写しのみで、仙台では通用が小数枚確認されただけだった。

 母銭に出会って、初めてそれが「仙台領と言っても江刺絵銭」だからという結論に辿り着いた。地金の配合などは石巻系統のつくりではない。これはすなわち、八戸方面への伝播がないことの説明にもなる。母銭は、たぶん、一生に一度しか出会えない。

 一方、D520の通用銭は、秋田で発見された品だ。このサイズでは、市場流通などは有り得ぬから、この地の誰かが仙台で買い求め持ち帰った品だろう。

 明治大正期に写しが作成されているので、それなりの数が作成されたのだろうが、本銭は母子ひと組の入手だけに留まった。どこからも出て来ないし、記録もほとんどない。

 おそらく鉄銭があると見ていたが、このサイズになると(薄く広い)、作りにくかったようだ。確かに「立ち上がり恵比寿」なども、鉄銭があることはあるとはいえ製作がやたら劣る。

 地金の配合が白銅寄りで、この大型七福神にも幾らか似たところがあるから、「立ち上がり恵比寿」の出自も仙台に近いのかもしれぬ。

 

 浄法寺写しは昭和五十年代に発見された仲間だが、O氏によると、「発見されたのは十枚程度」だった模様だ。その後の発見例を聞かぬから、現存はその数のままだと思う。

 最初の方に入手したので、呻き声が出るほど高額だったが、「現存十枚」なら致し方ないし、一二枚しかない状態よりも市場性があると見なすべきだと考え直した。

 (ちなみに出品下値は値引き後の価格だ。)

 未使用だが、製作自体が古く、D519は浄法寺天保の本銭と変わりがない。

 「半仕立て」の方は、金色が天保銭の「半仕立て類」と同じ製作という意味だが、湯口が小さく、作り方自体が鋳放類とはまったく異なる。(製作が幾らか劣るので少し下げた。)

 鋳銭用具(鑢・粗砥)と掛け方が異なれば、通常は「作った人自体が違う」と解釈するのが普通だ。

 もちろん、型自体はD519を踏襲したことが、背面の鋳溜で分かる。D519の製作手順を知っている人が作ったかもしれぬ。

 

 出品掲示が遅れたが、抽選会は日程をなるべく動かさぬ方針で進める。

 ポイント取得者が殆どいなければ別だが、「早期落札あり」で対応することにした。

 いつも偏屈さを前面に押し出しているが、「なるべく過去に付き合いのあった人に渡そう」とする意図による。

 私は「自分の特技は直感」だと思うが、今回、抽選自体が成立すると、一等当選が出ると思う。引き当てる運を持つ人がいるなら、場の設定を動かさずに渡してあげるのが筋だ。

 

注記)いつも通り一発殴り書きで、推敲や校正なし。古貨幣に割く時間はほとんどないので、「死にかけの者のたわ言」という解釈で結構。