



◎古貨幣迷宮事件簿 「整理ロット05の品評」
これはたまたま入手したものだが、開封して驚いた。
小ぶりの段ボール一つの中に米切手が沢山あり、中には元和五年の記年のものもある。元和五年と言えば1600年代の初めで、江戸幕府が開闢した初期のものだ。
そこから明治中期までの紙物が含まれ、かれこれ二百五十年分の武家と商人との取引の状況が残されていた。
ついでに「角館公札」まで入っていないかと思ったが(希少品)、さすがにそれは無かった。
だが、武家が米をどう扱っていたのかを具体的に知る重要な資料だった。
己の所領を持つ武士は徴税権を与えられており、年貢を集めると、そこから藩に上納するというステップで処理したようだ。手元には自分の分の米が残るわけだが、これが石高になる。侍は現金が必要になると、蔵にある米から必要な分を商人に売渡した。
ちなみに、角館は当地の商人的には「かくたて」と呼んだらしい。
となると「かくのだて」に変じた時期も推定できるかもしれぬ。
角館は古札類研究の領域としては、まだあまり人の入っていない未開の地だ。
系統的に整理して、地元の資料館などに寄贈しようと思っていたが、健康面がそれを許さず手放すことになった。
古札類を研究する人は僅かなので、M04を入手しようという人には大幅値引きして譲ろうと思う。
整理ロットM04への追加オマケ
遠野商人の切手類が出て来たので、M04へのオマケとした。遠野も「支藩」の扱いで自治領に等しかったようだ。形式が一般に知られた盛岡藩のものとは違う。
ちなみに、部屋に小鬼が出て、「仰寶小極印打」が消息不明になった。
机の上から動かしていないのに、忽然と姿を消したから、おそらく、私の死後に雑銭の残りが流出した時に、思わぬ拾い物をする人が出ると思う。
十年くらいの間、真贋を疑っており、それを文字に記したので、その品を下げ渡してくれた故K氏がへそを曲げたのかもしれん。
それはそれで、K氏の表情を想像すると楽しい。