日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎病棟日誌 悲喜交々 7/13 「首狩りキラーは誰?」

病棟日誌 悲喜交々 7/13 「首狩りキラーは誰?」
 朝出がけに家人が言うには、「杉並の方でも空き家が増えているらしいよ」。
 小学校の同僚に、杉並在住の人がいるが、周囲にほとんど人が住まなくなったらしい。
 「シャッター街」や「空き家」と言うと、どこか知らぬ遠い地方の話のようだが、現実には都心近くでも起きている。
 昭和の末年から平成の初め頃に造成された新興住宅地では、ちょうど世代交代の時期が来ており、ジジババがどんどん亡くなっている。子どもたちは成人し、既に出て行っているから、家を継ぐ者が居ない。
 そんなニュータウンに住む人が減ると、バスの本数が少なくなる。交通の便が悪くなると、移り住む人がいないからいっそう人が減る。自治会が成り立たぬくらい空き家だらけになっているそうだ。
 だが、冬場になると、何だか風体のいかがわしい集団が出没するそうだ。その多くはホームレスで、春から秋までは都心の駅とか公園にいるが、冬場は耐えられない。そこで、空き家を探しては、そこに入り込んで寒さを凌ぐという話だ。
 昔、池袋の東口から西口に繋がる地下道に、何人かのホームレスが寝起きしているのを見たが、あそこは吹きっ晒しで風がびゅびゅう通るから、「冬は越せないな。どうするのだろう」と疑問に思っていたが、その答えがこれだった。
 ちなみに、空き家に避難せず、冬も路上で寝る生活をしていると、やはり寒さが体を蝕むので、「三年くらいしか生きられない」と聞いたことがある。
 ま、ゴースト住宅地にはホームレスの飯の種がないが、そこはどう凌ぐのだろう。その課題が残っている。

 病棟に入ると、久々に看護師長がやって来た。
 「今朝、こんな夢を観たんです」と話し出す。
 夢の内容はこんな具合だ。
 「夢の中で、私は誰か女の子とデートしているのですが、街中で若者たちが喧嘩をしているのを目にしました。放置してればいいのに、私は何を思ったか、その若者たちを止めに入った。すると、別の若者が突然現れて、私を刃物で刺し、私は死んでしまいました。まったく痛くないのですが、『自分は死ぬ』という確信がありました。これって何ですか?」
 夢判断の相談だ。
 ゆっくりと内容を聞いている状況でもないので、端的に確かめた。
 「刺される直前の心持ちはどうだった?恨み嫉み憎しみなどの否定的な感情があった?」
 「いえ。突然のことで驚くばかりでした」
 「それなら、ほぼ吉夢だ。日常の暮らしに特に不満があるわけではないが、何となく変化を求める気持ちがある。あなたの本心は連れの女性の方で、あなた自身の振る舞いを観察している。突然死ぬのは再生願望で、生まれ変わって現状を変えたい気持ちの表れで、その基盤が整って来た。だから自分が死ぬ夢は吉夢だと言われるのです。ただ、重要なのはその前後の心持ちで、自他に悪意があれば、また別の意味がある場合があります」
 で、最後に「俺は占い師じゃねーよ」と足した。
 師長は「心の準備なくしては見せられぬ幽霊の画像」を見た数人の内の一人だが、よほど怖ろしいと思ったらしい。当方が「こともなげ」だったせいか、何かしら引っ掛かることがあると相談に来るようになった。

 ま、昨年など稲荷の眷属に取り憑かれて、スマホが勝手に声を上げ、しわがれた男の声で「(お前に)憑いた。憑いたぞ」と叫び出す始末だった。ホラー映画みたいな事態が現実に起きている。五月には、ひと月で五キロ体重が落ちた。半年で十二キロだから、総てのズボンがぶかぶかになった。
 あまりにも現実離れした事態が起きると、逆にリアル感が薄くなる。現実感が無く、怖ろしいとも思えなくなってしまう。
 冷静に対処したが、相手は「心を支配できぬ」と思った時点で去って行った。
 こんなことを現実に体験すると、今は大抵のことには驚かぬようになるので、それが態度に出る。師長らからそれを見ると少なからず安心するらしい。

 病棟で過ごすのは五時間六時間で、その間ほとんんど横になっている。動けぬし、退屈を紛らわすのが大変だ。
 結局、ネットサーフィンが頼りで、ある人物や事件のことをあれこれ調べたりしている。
 最近のテーマは、やはり「首狩りキラー」のことだ。
 警察の報道発表では、犯人らしき「女性」(まだ未確定)についての詳細が無かったが、テレビでは勝手に色々流していた。
 被害者が「最近泊まった」という宿泊施設を取材し、「警察の聞き込みがきたかどうか」を訊ねたが、その施設の管理者は「警察が『金髪の女性が一緒ではなかったか』と訊きに来た」と話していた。
 同伴の女性(たぶん犯人)が「金髪」だったことなど、警察は公表していなかったと思うが。こういうのは、どこまで犯人に近づいているかを教えるようなものだから、報道を控えるべきではないのか。「報道の自由」は、犯人が掴まってからにして欲しいもんだ。
 以前にも、誘拐事件が起きて、警察が捜査状況を伏せているのに、テレビが勝手に詳細を報道して、被害者が殺されたケースがあったと思う。
 ま、金髪は鬘(かつら)だろうな。

 「女性」が本物の女性かどうかはまだ分からない。
 女装していたかもしれん。
 ここで思い出すのは、米国の連続殺人犯のオーディス・トゥールだ。トゥールは、普段は女装してその道の人が集まるバーに行き、男性相手に体を売っていたが、時々、その相手の客を殺した。
 このトゥールが殺人を指導したのが、悪名高いヘンリー・ルーカスだ。ルーカスは三百人以上の女性を殺したが、一時期、トゥールと行動を共にしていたことがある。
 「セックスをした後で殺す」
 「殺した後でまた犯す」
 この流れをルーカスがパターン化したのは、トゥールの指導による面が大きい。

 キャラが立っているのは、むしろルーカスの方で、この男は「女性」と「自分自身」を極端に憎んでいた。
 女性を殺す行為をパターン化していたので、ほとんど何も考えずに次から次へと殺したようだ。
 「幼児期の体験がどうの」とかは心理学者が言うことで、三百人以上を殺す説明にはかなり弱い。外因的なものではそこまでやれない。
 興味深いのは、一部の能力に秀でているところで、十五年前に殺した女性の詳細を語ることが出来、その似顔絵も上手に描いた。記憶力が確かだし、描画も巧みだから、右脳左脳の一部が特化していたのだろう。

 当方は十五年前に自分がどこで何をしていたのかなどは、全然思い出せない。昨日の夜に食べたものも、今夜夕食を食べたかどうかも定かではない。
 ルーカスは、いつどこで誰を殺して、それがどんな相手だったかを詳細に語ることが出来た。それが三百人超だ。

 日本にも座間の連続殺人犯がいるが、自殺志願の女性を自宅に招き、次々に殺した。前日に殺して、翌日にも殺したケースがあるが、流れ作業的に行ったから、その行為に慣れて処置までが迅速だった。
 それでもこの犯人でも十人は殺していなかったのではないか。
 ルーカスは三百人だ。

 「首狩りキラー」は、ホテルに入り、すぐに男性を殺し、首を切っている。前後合わせて三時間だから、遺体の処置は迅速に行った。
 予め殺すつもりで、かつ肉切り包丁など専用の道具がないと、この時間内では全部やり遂げられぬと思う。
 肉を切る道具には、鋸の歯のようなぎざぎざの付いたものがあるが、ああいう刃物で首を一気にひかぬと切り落とすのは難しい。特に頸骨の分断に手間がかかる。

 いまだに犯人が「女性?」もしくは「女性の扮装」の扱いだが、こういう手口が「女性の犯行らしくない」ところによる。
 連続殺人犯にも女性がいて、かなり残虐なこともしている例があるわけだが、「首だけ持ち去る」のは、「心の歪んだ男性」のような気がするなあ。この場合は戦利品の扱い。
 仮に犯人が女性なら、持ち去りは愛情だったりもするケースがあるから対象範囲が広くなり、余計に追跡が厄介だ。

 

注記)一発殴り書きで、推敲も校正もしません。眼疾があり、自由に使える時間も無いので出来ないのです。不首尾は多々あると思います。