◎怪談 第五話 『ほどが淵の河童』 <概要>
七年ぶりに郷里を訪れ、墓参りをした。
墓所からの帰路に、ふと思い立ち、かつての実家の周囲を見て回ることにした。
子どもの頃は、小学校に通うのに、毎日、「甚平衛坂」を上り下りした。その頃は児童が何百人かいた筈だが、今はその同じ小学校の児童数は十数人らしい。
甚平衛坂の裏に降りると、そこには北上川がある。
懐かしさから、川に沿って上流に向かって歩く。
「昔は、土手に供養塔があり、その近くに『ほど』があったはずだが」
『ほど』は北上川の澱みで、池のように水面が穏やかだ。
当時はそこで幾人もが水死していたことから、「河童が出て足を引く」という噂があった。
小学五年の時の同級生のタカオに、「ほどで釣りをしよう」と誘われたことがあったが、祖父に強く禁じられたので、私は行かなかった。
そして、その日のうちにタカオは溺れ死んだのだった。
これは「甚平衛坂」「ほど」の由来を語り継ぐための話で、怪異譚ではあるが、恐怖を煽るためのものではない。
「地点地点に歴史があり、先人のメッセージがある」がテーマになっている。
具体的な出来事を背景に置いてが、ショートストーリーでも、やはり負担が大きい。
まだしばらくは「慣れ」が必要らしい。
秋風が吹くようになれば、怪談でもないので、少しずつ内容をシフトさせる。