車で海岸沿いの道路を走っていると、何やら小雨が降ってきました。
窓を閉め、そのまま数キロほど進んだところで、前には十数台ほど車が停止していました。先頭の車の先は道路が下降しているのですが、そこにはざんぶりと波が上がっています。
今いるところがちょうど丘陵の上のようで、後ろも低くなっているのですが、そこにも波が上がっています。
あれまあ。このままだと、いずれここも水没するのかも。
前の車もそのことを知っているのか、皆エンジンをふかしたままの状態です。
波が引く際に、ほんの少しの間だけ車が通れるくらいの水面の高さ(30センチくらい)になるので、その間に数台ずつダッシュして向こう側に渡っているのです。
うへえ。ぎりぎりのことをやってます。途中で波につかまったら、海に引きずりこまれお陀仏です。
でも、じっとしていても、きっと10分は持たず水没してしまいそうです。
気がつくと、私の後から来た車が横に並んでいます。向こうの運転手と眼が合い、無表情のまま互いに頷きました。
何回目かの波の引き際に、私もダッシュし、なんとか向こう側に渡ることができました。
前は急な斜面になってます。ここを登り切れば、波に攫われることもなさそう。
後ろを振り向くと、先ほど隣にいた車はまともに波をかぶり、海に引きずりこまれていました。エンジンをふかしすぎ、タイヤが空回りしてすぐに発進できなかったのでしょう。
こうとなっては、どうにも助ける手立てはありません。
もしかすると、今が9月の大津波かもしれないので、自分だってまだ安心はできません。
急いで坂を上りますが、これが勾配が30度に達しそうな急斜面で、全く前に進めません。前にも同じような車が何台か止まっているのが見えます。私が乗っているのは4駆なので、ソコソコは登れるはずなのですが。
ぎゅんぎゅん、アクセルを踏み、坂の半分を越えました。
よし、もうちょっと。
しかし、地面がぬかるんでいたのか、車がずるずる後退し始めます。
もう少しだったのに。また最初からやり直しです。
ここでふと、道路の脇に顔を向けました。
道路の30メートル横には線路があるのですが、そちらは山を切り開いて作ってあったので、道路よりかなり低くなってます。
すると、すぐさま後ろから列車が突っ込んできて、私の車の真横で思い切り脱線しました。
列車はぐしゃぐしゃに潰れ、物や人が乱れ飛ぶのが見えました。路上に土砂が崩れ落ちていたのですね。
今は負傷者を助けるどころではなく、次に来るであろう大津波を避ける必要があります。
車を降り、足でこの坂を越えるとして、何分で行けるかな。
そんなことを考えつつ、ドアを開け、車を降り、斜面を登り始めました。
20メートルほど上がり、ふと左側の海を向くと、はるか遠くに高い水の壁が見えます。
あと3、4分であの大津波が海岸に到達しそう。
それまでに上まで登りきることができるだろうか。上に登れたとして、そこが津波より高い位置にあるだろうか。
自分で想像していたより、はるかに冷静に、私は「この世の終わり」を眺めていました。
ここで覚醒。
先ほど、1時間ほど仮眠を取った際に見た夢です。
水に関係した話なので、感情に関わるものだろうとは思います。