日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第156夜 アトリエにて

10月2日、朝方の夢です。
 
私は33歳くらいです。
友人の画家がアトリエを借りたというので、見に行きました。
この友人は女性で、大学の同期です。
 
玄関のチャイムを鳴らすと、ドアが開きます。
出てきたのは、私の知人ではなく別の女性。
目がパッチリしていて、もの凄い美人です。ラテン系みたいな顔立ちをしています。
内心で「うっひゃあ」と漏らしますが、もちろん、声には出しません。
「いらっしゃい」
招き入れられると、中には知人女性もいました。
「来てくれたの?」
片手を軽く上げて歩み寄り、持参した包みを渡します。
「はい。これは開店・・・じゃないな。何て言うのか、とりあえずお祝い」
中身は高級なワインです。
知人は「どうも有り難う」と言うと、先程のラテン系の方を振り返ります。
「お姉さん。お土産貰ったあ」
あれって、お姉さんなの?全然、顔つきが違います。もしかして、お父さんかお母さんのどちらかが違うんじゃないかな。
でも、やはり声には出しません(失礼なので)。
 
ここで改めて回りを見ると、この新しいアトリエはとてつもない広さでした。
「広いなあ、ここ。ビルの1室かと思ったら、きっとワンフロア全部がアトリエなんだね」
100平米近くはありそうな大部屋の他に、まだ幾つか部屋がありそう。
「でしょでしょ。こんなに広いのに、家賃が安いの。もちろん、それでも1人じゃ大変だから、お姉さんとお姉さんのお友達の3人で借りることにしたの」
知人は若くして既に売れており、個展には沢山の人が見に来ます。
お姉さんには及びませんが、妹の方だってソコソコの美人です。それでも、ほこり臭い学生時代から知っているので、女性を意識したことはありません。
(本人はともかく、お姉さんの方は、意識するなという方が無理だよね。)
 
良からぬ考えを払うために、首を2度振ります。
雑念を捨てて、室内を見回すと、中央は空いていますが、端の方はぐちゃぐちゃに散らかっていました。
「相変わらずだな」
知人は掃除下手で、昔から散らかり放題です。私が時々、整理整頓を手伝うのですが、知人が時々、私に「遊びに来い」と言って寄こすのは、おそらく半分以上が「片付けてくれ」ってことでしょう。
「へへ。ここは借りたばかりだもの。まだ荷物の半分も解いていない」
それにしても、広い部屋だ。
「奥はあと何室?」
「3部屋。それとダイニングキッチン、バス、トイレの間取り」
「都心でこの広さ。いったいひと月幾らくらいするの?」
「12万円」
「は?」
「12万円よ」
嘘。桁がひとつ違うくね?
「ちょっと安過ぎないか」
「貴女たちなら良いよって、家主が言うのよ」
マジかよ。どうも変な匂いがする。
「オバケでも出るんじゃないか」
「冗談はやめてよね。お茶いれる」
知人はそう言い残すと、キッチンの方へ行きます。
 
椅子に座り、窓の外を眺めます。
ここは1階ですが、窓から見える庭も広く、十数本の木立が揺れていました。
次の来客があり、チャイムが鳴ります。
先程のお姉さんが出て、ドアを開けます。現れたのは40歳くらいの男性で、お姉さんの知り合いのようでした。
(さすがに、今はお客が多いよな。)
フロアの奥の方に目を向けると、そこでは別の女性が働いていました。
「ああ、あれはもう1人の芸術家なんだろうな。これで3人だ」
こちらも和風ですが、すっきりした美人です。
「オレ的には、あの人が好みだよね。どうでも良いけど」
奥の部屋から若い男女数人が出て来て、3人目の女性に近寄ります。皆で何ごとか話をしています。
絵や彫刻をどういう風に置くか、相談している模様です。
 
周りをぼんやりと眺めているうちに、あろうことか居眠りをしていました。
目が醒めると、前のテーブルにコーヒーが置かれていました。
カップを持ち上げ、口につけると、もはや冷たくなっています。1時間は経った感じです。
フロアは暗くなっており、人影が消えていました。
 
「やだ。最後になっちゃったね」
後ろから声がしたので、振り向くと、知人がバッグを持って立っています。
「一緒に帰ろ。今、奥の部屋の戸締りをしてくる」
窓の外も暗くなってます。ということは、3時頃に私がここへ来てから、3、4時間は経ったということです。
 
薄暗いフロアの中央に座っていると、右奥の部屋のドアが開き、人が出てきました。
白髪を後ろで束ねた、着物姿の婆さんです。お婆さんは右から出ると、真っ直ぐに左側の部屋に入っていきました。
「まだ人がいるじゃない。でもあの人。どっかで見たことがあるよね」
少しの間考えると、すぐに記憶が蘇ります。
「ありゃ。あれって、つい数日前の夢に出てきた幽霊じゃないか」
間違いなく、貸し別荘に出たオバケの1人です。
「何だよ。美人の出る良さげな夢だと思ったのに、やっぱ、オバケの話じゃん」
ここへ、知人が小走りで近寄ってきます。
「ケイイチ君。早く出ようよ」
「マミちゃん。やっぱ、ここもオバケ屋敷か?」
(私は「ケイイチ」で、知人の名は「マミ」でした。)
 
この時、カーテンが急に揺れました。窓は閉まっており、風が吹き込んだわけではありません。
カーテンの後ろでは、何やらもぞもぞと動く気配があります。
(また出たか。悪霊め。)
先手を打とうと、カーテンに走り、勢い良く引き開けました。
その後ろにいたのは・・・、オヤジでした(正確にはオヤジの霊)。
オヤジ霊は、上がランニング、下がステテコの下着姿です。
「何だオマエは!」
「へへ、勘弁してくれよ。どこにも行くところが無いんだからさあ」
「オバケなんだから、あの世に行けよ」
「どこがあの世だよ。行き方も道も知らないのに、行ける訳がない」
確信犯だな、こりゃ。とにかく楽が出来そうなら、誰彼構わずしがみつく雑な悪霊の類です。
「今日はせっかく、美人の出る良い夢だと思ったのに、結局は幽霊の夢じゃないか。ああ、腹が立つ」
今にも殴りかかりそうな私の表情を見て、オヤジ霊がとりなそうとします。
「皆に頼られてると思えばいいじゃんよ。皆、行くところが無くて集まってんだから」
「皆?沢山いるのか」
「へへ。当たり前じゃん。ほら」
オヤジ霊が背後を指差すと、そこには30人くらいのオバケたちが立っていました。
またかよ。もう怖くはなくなったけれど、ほとほとウンザリだ。
 
ここで覚醒。