日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第248夜 死後の世界

子どもたちを送り出した後、少しの間寝入ってしまったのですが、その時に観た夢です。

眼を開くと、大きな門の真ん前に立っています。
「ここはどこだよ?」
後ろを振り返りますが、そちらには荒涼とした荒地があるばかり。
前に進むしかありません。

門の中には、宮殿のような、神社のような大きな建物があります。
守衛の類は誰一人として立っておらず、森閑としています。
建物の中に足を踏み入れました。

大きな広間があります。
縦が70、80メートル、横が40メートルくらいです。
その広間の先に、テーブルのようなものがあり、向こう側に誰かが座っていました。
「ああ、良かった。あの人に聞こう」
とぼとぼと広間を渡り、向こう側に近づきます。
テーブルと思ったのは講壇で、その後ろに人が立っているのでした。

立っていたのは、プロレスラーのマサ斉藤さんみたいな風貌の人でした。
マサ斉藤さんは大好きだったなあ」
なんとなく気が楽になります。

「随分と時間がかかったね」
マサ斉藤さんみたいな男が口を開きました。
「どこで道草を食ってきたの?」
「道草を食う」とは懐かしい表現ですね。
馬に乗るかや牛を追うかして出発したが、途中でその牛馬が歩みを止め道端の草を食い始める。
そんなイメージが頭の中に拡がります。

「君はそれほど悪事は働いて来なかったけど、良いこともしていない。何もせず、無駄に人生を食いつぶしてきたわけだな。煉獄に100年くらい入ってみる?」
え?どういうこと?
「一応は色々やってるよね。例えば、蟻塚に水を流し込んで、何千匹もの蟻を殺した、とか。猫の子を洗ってやって溺れさせた、とか」
「なんでそんなこと知ってるんですか。本人も忘れているのに」
一瞬、「知らない」と言おうと思ったのですが、つい正直に答えていました。

「そりゃ、そうだよ」
「え?」
「ここでは嘘は吐けないんだ。だってここはお裁きの場だもの」
「お裁きの場って?」
「要するに、君は死んだんだよ」
「ええ~!」
「そんな馬鹿な」と思う反面、「そう言えば」という気も起きてきます。
病院のベッドで、妻や子どもたちが泣いていたっけな。
そこから、どこをどう歩いてきたのかは忘れちまったけど。

「となると、マサさんは一体誰?」
「マサさんて誰のこと?オレのことなの?」
「すいません。知ってる人に似ているので・・・」
知り合いじゃあないけどね。
「オレのことは、よく知ってるだろ。オレは閻魔大王だ」
閻魔大王さまですか・・・」
思わず苦笑いを漏らしてしまいます。

「マジかよ、と思ってるね」
「正直言えば、その通りです」
「死ねば、閻魔大王が出て来て、生前の悪事を暴くと教えられてきただろ。何百回も情報を提供したのに、どうして今までちゃんと聞いて来なかったわけ?」
「すいません。まさか本当にこうだとは思っていませんでした」
「くっ」と閻魔大王が笑います。
「皆そうなんだよ。あんなに何度も連絡してやってるのに、誰1人本気にしない。まあ、嘘を吐けば舌を抜かれるとか、火で焼かれるってのは、想像するのも嫌だろうけど。信じたくないのも無理はない」
「はい」
「でも、知っている・いないに関わらず、悪事を犯せば罰せられる。それと同じで、この先のことを知らなかったと言い張っても、行くべきところは地獄しかない」
閻魔大王が顎で示した方向には、小さなドアがありました。ドアは15センチくらい開いていましたたが、その隙間の奥からちらちらと火焔が見え隠れしています。

「ここから先には地獄しかないのですか?」
「そりゃそうだろ。大体、人は悪さしかしないもの。善行を積んでいそうな者だって、実際には虚栄心でやってたりする。人に褒められたたいがために、やたら寄付金を出すという具合にね。でも、それは身びいきの延長線上の話だから、嘘を吐き通すのと同じ罪になる。皮を剥がれるくらいが妥当だろ」
「そりゃ厳しいですね」
「外面の振る舞いではなく、心の持ちようがどうだったかというのが基準なんだよ」
「そりゃ参ったな。それなら間違いなく、オレも地獄行きです」
「だろ?」
「はい」
「たまに少しはましなところに行ける人もいるけど、そういう人は三途の川を渡った瞬間に、空の上に導かれるものなんだよ。歩いてここまで来たってことは、要するに地獄に行くヤツだって意味だよ」
「そうなんですかあ。参ったな」
なんだか、がっくりです。二重に裏切られたような気がします。
「お前さ。お前がどうして人と違うお前なのか、証明する方法はないだろ。科学なんぞが出来るのは、どうしてお前の人格が形成されたかという、いわば状況証拠だけで、何の説明にもなっていないんだよ。噂話と同じレベルだ。それを正すために、何万回も地獄のイメージを送り続けているのに、誰1人として信じない。生前、科学者だった者なんぞ、無知と嘘つきの罪で、この先では全員が舌を抜かれるんだぞ」

まさか、こんな事態になるとは。
本当に死んでみなけりゃわからない。
とりあえず、閻魔大王にもう一度確認してみた。
「オレは煉獄に百年でしたっけ?」
「少しまけて欲しいなら、火焔地獄に20年でもいいや。時々、全身の皮は剥ぐけどね。苦しいけど、そっちの方が短いよ。そっち行ってみる?」

ここで覚醒。
これは、昔、先輩の1人と交わした与太話をベースにした夢です。
年に1、2度は同じ夢を観ますので、もう何十回も観ています。
この、同じ大学のOという先輩は、たまに私を誘っては、少し高級な料亭に連れて行ってくれました。
実家がお金持ちなので、ひと晩じっくり飲むと十万円近くの勘定になる店でも、まったく平気だったのです。
そのO先輩は、40歳を少し過ぎた若さで、くも膜下出血のためあっさり亡くなりました。
もうじき、私もあちら側に行くと思いますが、三途の川の向こう側で、O先輩が「ようやく来たな。本当はこうなってるんだよ。びっくりするぞ」と話しかけて来そうな気がします。