朝、通勤・通学のため家族がバタバタしている最中に、うつらうつらしました。
これはその時に観ていた夢です。
谷の出口に、溝を掘っている。
20人が取りついて、大急ぎで作業を進めている。
溝の幅が2メートルで、長さは15メートルほどだ。
片側には、ワイヤーネットを張っているが、一目瞭然の獣罠だ。
熊や狸を掴まえる時のケージを大型にしたものということ。
「あいつらが動き出すのは夕方からだから、早いとこ終わらせないと」
何せ夜行性だからな。
暗くなったら、谷の上の方からあいつらが降りてきて、餌を探し始める。
羊を谷の中央に放せば、当然、それに目を付けたあいつらは狩り始める。
羊は反対側に逃げるが、それがこの罠の方向だ。
獲物の体長はほぼ3メートル。
恐竜にしては小さい方なので、俺たちは「ショーター(ちび)」と呼んでいる。
この谷には12頭のグループがいるので、このうち3頭くらいを掴まえる予定だ。
「先生。来ました!」
「何だ。今日はお早いお出ましだな」
罠を3つ設置する予定だったが、使えるのはまだ2つまでだ。
「ま、仕方ない」
急いで腰を上げ、谷の入り口の方に向かう。
すると、真ん中より手前で、羊がこっちに逃げて来るのが見えた。
「もう狩りが始まっているじゃないか」
俺たちは谷の斜面を上がり、通り道を開けた。
俺たちが羊の仲間に見えてしまっては、それこそやっかいな事態になるためだ。
羊が一目散に逃げて来る。
そのすぐ後ろには、ショーター3頭がついている。
羊が草むらから岩場に入ったところで、石に足を取られ転倒した。
「ああ。まずい。餌が捕まってしまう」
ここで羊が捕まったら、罠が役に立たなくなる。
ショーターたちは難なく羊に追いついた。
一瞬、「ダメだったか」と落胆したが、しかし、ショーターたちは羊では止まらず、そのまま前に走り抜けた。
羊を追い越して先に行ったのだ。
俺はすぐにピンときた。
「こりゃ不味いぞ。すぐにもっと上に行かないと」
「先生。どういうことですか」
「あのショーターたちを見ただろ。あいつらも逃げていたんだよ。てことは、後ろからでかい捕食恐竜がやって来ると言うことだ。走れ!」
俺たちは大急ぎで岩場を登り、20メートルほど上に登った。
岩の陰に身を隠し、様子を見る。
「やっぱり」
ほんの十秒後に、ティラノサウルスがやってきた。
息が荒い。
こいつなりに、全速力で走って来たのだ。
ティラノサウルスは、ほんの少しの間立ち止まり、息を整えると、また走り出した。
どす、どすと足音が響く。
「先生。すごかったですね。あれじゃ人間なんてひとたまりもない」
「体長はざっと8メートルから10メートルはあっただろう。かなり大型だな。あれで走れるのだから、本当に生き物は不思議だ」
しかし、驚いている暇は無かった。
すぐに、「ドッシーン、ドッシーン」と遥かに大きな音が響いて来たからだ。
「おいおい。まだ何か続いているのか」
岩陰から顔を出し、谷の前のほうを覗き見る。
木々の合間から見えていたのは、半端なく太い脚だった。
木の葉に隠れて、上の方は見えないので、どんなヤツかはわからない。
「何だありゃ。脚だけで6メートルくらいの太さがありそうだ」
「先生。もしかして、スーパ-サウルスとかジャイアントサウルスという奴ではないでしょうか」
なるほど。それなら5階建てのビルくらいの高さがありそうだ。
程なく、巨大な影が谷を覆った。
俺たちからは脚の付け根くらいまでしか、見ることが出来ない。
俺はここで思わずため息を吐いた。
「現実にあれを眼にしてみると、はっきりと真実が分かる」
あの巨大恐竜は、重力に逆らう存在だ。
かつては地球の重力自体が小さかったという説もあるが、たとえ3割くらい重力が弱くても、あの巨大な体躯を支えるのはほとんど不可能だ。ああいう帰結型は自然環境に適応した生じたもの、すなわち進化してああなったわけではない。
あの体では、自分の体の重さが苦痛になるだけで、良いことはひとつもないのだ。
あの生物が生まれたのは、自然や偶然のなせる業ではない。
「先生。それはすなわちどういうことを意味するのでしょうか」
助手の問いに、俺は大きく頷いた。
「それは君。あの生き物は、偶然が重なって出来上がったものではなくて、意図的に作られた造形物だってことだよ。あり来たりなものに飽きたから、時々暇つぶしに、ああいう変わりものを作ってみたくなるんだよ」
すなわち、この世は「神が作った」ということだ。
「しかも、その神さまは子どもみたいな性格をしているに違いない」
ここで覚醒。