今朝方、ほんの少しの間、うとうとした時に観た短い夢です。
毎日が本当に憂鬱だ。
だんだん眠りに就くのが嫌になってきた。
寝ようと思って横になると、つい習慣的に、自意識だけが起き上がってしまう。
体は寝ているのだが、思考だけが勝手に起き上がって、うろつきまわるのだ。
大体はこんな具合だ。
自分の部屋で横になる。
疲れているので、すぐに眠くなる。
ほとんど同時に、オレの意識だけが起き上がる。
ドアを開けて、廊下に出る。
階段をゆっくり下りる。
階段の上の方には、お坊さんみたいな男がうずくまっている。
天井の近くなので、「うずくまっている」はおかしな表現だが、体勢はそうだ。
なるべくそいつに興味を持たないように、そこを通り過ぎる。
だんだんコツが分かって来た。
今は色んなヤツが見えてしまうが、「関わりを持たない」ことが肝心だ。
いざ波長が合ってしまうと、そいつはオレのことを自分だと思って、オレの後をついて来てしまう。
普段は動けないが、誰か生きている人間におんぶ出来た時だけ、あいつらは移動できるのだ。
あいつらが気になって来ると、お祓いをしたくなったりするが、それは逆効果だ。
遠ざけようとすることは、興味を持つことと同じだからだ。
一切無視し、関わりを持たないことが大切なのだ。
階段を下り、居間に入る。
テーブルには女が座っている。
じっとうつむいたままだ。
たぶん生前の自分のことを、何度も繰り返し反芻しているのだろう。
何もせず、そこに座っているだけだが、女の幽霊はどこか気味が悪い。
男と違って、からっとしたところが無い。
じめじめしているが、そいつの座っていた所に座ると、実際にじめじめ湿っている。
そう言えば、昔、朝方の喫茶店に入ったら、酔った中年ババアが椅子に座っていた。
オレが店に入ると、その女が出て行ったので、その場に座ったら、座席がぐっしょり濡れていた。
こう書くと、その女は幽霊で・・・みたいな書き方だが、実際には、その女は泥酔した挙句、座りションベンをしていたのだ。
その時みたいに気色悪い、という話だ。
ところで、女の幽霊が椅子に座っている時、そこに座りたい場合はどうするか。
手で払うのはダメらしい。
人の手だと、向こうもこれが人の手だと分かる時があるからだ。
そういう時は、タオルとか布巾で、さりげなくパタパタと払うのが一番のようだ。
「全然、気がつかなかった」というそぶりでだ。
今の窓の近くには、爺さんが立っている。
何を考えているのかはわからない。
ただ立って、呆然としている。
おそらく、死ぬ直前も認知症で、死んだ後もそのままそれを引きずって、ぼおっとしているのだろう。
居間を出て廊下に向かう。
玄関までの間は要注意だ。
ここには髪の長い女の幽霊がいるが、こいつは時々、オレのことを見ている。
死霊の感じではないので、生霊かもしれん。
まあ、オレは女に惚れられるタイプだし(苦笑)、まとわりつかれるのも仕方ない。
そう思わないと、さすがに気が滅入る。
魂だけの存在は、どうしてこんなに暗いヤツばかりなんだろ。
この女は廊下を塞いでいることがあるので、そういう時は段ボールだ。
「オレとお前とは何の関係も無い。お前を救えるのはお前自身だ。オレではない」
こう念じながら、段ボールでバタバタとはたく。
まるで、生きている女との別れ際みたいな感じだ。
「この女とは別れよう」と思ったら、関係をぶった切ってやる方が、相手への思いやりだろ。
諦めが早くつけば、次の男に向かうことが出来る。
もちろん、縁の切り方の加減を間違えると、刃傷沙汰になってしまうわけだが。
縁の切れ目は、円の切れ目。
まあ、別れ際には何がしかの金を払ってやるんだな。
口座にある現金を全額渡すくらいの覚悟があれば、「そこまで別れたいのか」と相手も納得する。
そこをケチるから、相手もこっちを殺したくなるのだ。
廊下の端まで行き、玄関の扉を開く。
ここからがもっと問題だ。
外に出ると、遠くまで見えるが、幽霊のこともそれと同じだ。
家の前の道を、それこそ「ぞろぞろと」歩いていやがる。
朝夕の駅のプラットホームなみだな。
ため息を吐いて、もう一度、今来た道を戻り始める。
さあ、玄関からだ。
ここを開くと、きっと髪の長い女がオレのことを待っている。
段ボールはどこに置いたっけ。
ここで覚醒。
夢の話第332夜の「霊感」の後日談でした。
ほとほとうんざりしながら目が覚めました。