朝食の支度をした後、15分ほど居眠りをしました。
その時に観た夢です。
建物の中にいる。
窓の外には木々が生い茂っている。
どこか別荘みたいなところにいるらしい。
窓を開く。
回りは緑一色だが、かすかに潮の香りが漂って来る。
「ああ。ここは岬みたいなところだ」
岬の上に別荘が建っている。後ろはすぐに山が迫っている。
「おそらく俺はここの景色を見るために、この別荘を買ったのだ」
こりゃいいぞ。
後ろは森で、その先は山。
前には水平線が広がっている。
なるほど。のんびりするのにうってつけだ。
仕事をして疲れたら、裏の緑を眺めていれば目が休まる。
涼みたければ、前のテラスに出れば、海から風が吹いて来る。
ここはさぞ高かったことだろう。
山側の窓に行ってみる。
窓の外にはうっそうとした森が見える。
テーブルに戻って、コーヒーを淹れる。
何気なく後ろを振り向くと、窓の外に女が立っていた。
若い女だ。
その女は窓から部屋の中を覗き込んで、俺のことをじっと見ていた。
「このひと。どっから来たんだろ」
この周囲にはほとんど家は無い。隣の別荘までだって、1キロ近くあるぞ。
女はどこか寂しそうな顔をしていた。
俺はその女に声を掛けてみることにした。
「こんにちは。最近ここに来た者です。ご近所の方ですか?」
俺が声を掛けると、女はびっくりしたように両目を見開いた。
「あなたはどちらの方ですか?良ければ、一緒にコーヒーでもどうですか」
さらに話し掛ける。
誘ってみたのは、当たり前のことだが、その女がなかなかきれいな女性だったからだ。
しかし、女は返事をせず、後ろを向いて立ち去ろうとする。
俺はその仕草が気になり、窓に近づいて女の背中を目で追った。
女はゆっくりと、山の方に向かって歩いて行く。
「あっちには何も無い筈だが・・・」
女の進む先の方に視線を移すと、遠くの森の中に人影が見えていた。
五人、十人。十数人の人が立っている。
「皆、若い女だ。あんなところで何をしているんだろ。あそこには何もなくて、ただ危険なだけだよな」
荒地があるだけの場所だった。
ここで俺は何とも言えぬ「嫌な感覚」にとらわれた。
さっきの女はあの場所に戻ろうとしているのだ。
あの荒地の中には湿地があるが、そこはとても人が踏み込んではいけない所だ。
だが、さっきの女は、そしてあの女たちは、いつもあそこにいる。
「だって、あの人たちは殺されて、あそこに埋められてるんだものな」
ここで俺は合点が行った。
この別荘はすばらしいロケーションにあるのにも関わらず、極めて安い値段だった。
「どこか薄気味悪い」という理由で、客に敬遠されたのだ。
元の持ち主はこの近くの木で首を吊っていたから、その話を知っていれば薄気味悪く思うのも当然だ。
しかし、ここの悪縁はそれだけではなかった。
「前の持ち主の男は、ここに若い女を攫って来ては、あの湿地に埋めていたんだな」
前にもこういうことがあった。
彼女とドライブに行き、静かな山の中に車を停めた。
もちろん、2人でゆっくりと語らうためだ。
ところが、すぐ前に見える山の後ろがどうにも気になる。
ブツブツと人が呟くような声も聞こえる。
道の先に行って、様子を見ると、山際に窓ガラスに目張りをした車が停まっていた。
「あの時と一緒なだけではなく、どんどん酷くなっている」
妄想と現実が繋がってしまうことほど、気持ちが沈むことはない。
この先も同じことが起きるかと思うと、さらに気落ちする。
ここで覚醒。