日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

夢の話 第539夜 チューブ

夢の話 第539夜 チューブ
 9日の午前6時ごろに観た短い夢です。

 瞼を開くと、病院のベッドで寝ていた。
 腹が包帯で巻かれている。
「また、どこか切ったのか」
 オレはこれまで心臓に4回手を入れているし、胃の裏側の動脈瘤も切った。
 大小腸も腫瘍ごと1丹幣綫攴釮靴拭
 いまさらどこかを切ったところで驚きはしない。

「目が覚めました?」
 頭の上の方で声が響いた。
 視線を向けると、今どき珍しいナース服の看護師だった。
 年齢は40歳くらい。ベテランだな。
 「オレ。どこを切ったんですか」
 「胃ですよ」
 なるほど。それで腹に包帯を巻いているわけだ。
 よく見ると、その包帯の間から、チューブが出ていた。
 直径が5センチくらいあるような結構太目のチューブだった。
「これは何なの?」
 看護師が小さく微笑む。
「しばらくの間は胃液が出るから、これで外に出すのです。そうしないと、自分の体を消化してしまいますからね」
 そうなると、胃を全部知り取ったわけではないということだ。

 オレの知人には、胃癌に始まり、すい臓を切り、小腸・大腸を切り、体にチューブを付けて暮らしている人がいた。排泄物をそこから出すわけだが、見た目より案外平気なものらしい。その知人もそういう状態になってから十年以上も生きている。
「ま、平気ではないだろうけどな」
 このオレの独り言を看護師が耳に留めたらしい。「はい?」と顔をこっちに向けた。
「いや。何でもない」
 看護師は元の作業に戻り、オレの周りの物を片付け始めた。
「このチューブは5辰△蠅泙垢ら、足を引っ掛けたりしないように、普段は巻いて置いてください。それと、お風呂に入る時には、袋を取り外して先端をシャワーで流してくださいね。浴槽の近くの壁にフックを付けるとチューブを架けられるので便利ですよ」
 え?風呂の壁にフックを架けるって?
「看護師さん。もしかして、オレはこのまま退院するわけですか」
「ええ。明日です」
「このチューブを付けたままってこと?」
 オレの質問に、看護師が苦笑いを漏らした。

 「貴方も都会育ちじゃないでしょうに。都会の子なら、自転車がパンクすると、親に自転車屋さんに持って行って貰うけど、田舎の子はそれくらい自分で直しますよね」
 「そりゃまあそうです。普段は都会の人を小馬鹿にしてますね。何ひとつ自分では出来ないのに、そのことを知らないから」
 「でしょう?自転車チューブのパンク穴など自分で埋めた筈です。だったら、こんなお腹のチューブくらい平気ですよね。ホホホ」
 オレは物事にはあまり動じない性格だが、さすがに驚いた。

 「なあんだ。胃を切り取ってチューブを装着してる状態って、せいぜい自転車のパンクくらいの故障程度だったのか。知らなかった。これくらいで動揺しているようでは田舎者失格だ」
もう少し根性を鍛え直さねばならんな。
 オレは大慌てて起き上がり、手術着を脱ぎ始めた。

 ここで覚醒。

 中学生の時に、下校の途中で自転車がパンクしたので、自転車屋に寄り、修理してもらったのです。確か料金が500円前後でした。
 家(商店)に帰り、山家育ちの店員にその話をしたら、一笑に付されてしまいました。
 「あんた。パンクも自分で直せないの。そんなの十分で直せるでしょ。それなら百円だよ」
 その時のあからさまな「上から目線」が記憶から離れないので、その後は悪用しています。
 例えば、「自動車のタイヤ交換」「チェーン装着」「包丁を研ぐ」とかを陰に隠れてこっそり練習しておき、いざという時には、ささっとやって見せる。
 その後で、「これくらいオレの田舎じゃ当たり前だよ。子どもの頃、お前は何やってきたの」とチクリ刺す、という段取りです。(実際は時間を計測しながら繰り返し練習しているわけですが。)

 攻め手には守り手も必要。
 当然ですが、そのレトリックを打ち崩す手法も考えます。
 一般に「金」「名誉」「地位」を持ち出された時の返しはこれ。
 「それって偉いことなの?」「どれくらい偉いの?」「どういう風に偉いの?」「他の※※とどこが違うの?」
 これをこと細かに訊いて行きます。
 普通の人は3つ目くらいで「コケにされている」ことに気付き、キレますね(大笑)。