日刊早坂ノボル新聞

日々のよしなしごとを記しています。

◎「女」を蹴飛ばす

◎「女」を蹴飛ばす
 病院のベッドで横になっていると、足の血行が悪くなり、だるくなって来ました。
 そこで、脚を上げて「かあっと」伸ばしたら、人の脚を蹴飛ばした感触がありました。
 太股のあたりです。

 この日は血圧が下がってしまい、頭を下げて寝ていたので、足先の方は体を起こさないと見えなかったのです。
 つい先ほど、そこにいたのは、看護師のTさんです。
 こりゃ、私のお気に入りのTさんを蹴飛ばしちまったか。
 ちなみに、Tさんはオバサンで、F県の山奥出身。私は自分が山奥育ちのせいか、同じように山奥で育った人には、態度がまるで違います。普段は偏屈で、ぶっきらぼうですが、そういう相手にはトコトン親切。もちろん、えこひいきもします。

 「あ。ごめんごめん」
 大きな声で謝りながら、頭を起こしたのですが、しかし、そこには誰もいませんでした。
 私の声に、周囲の患者が振り向きます。
 すぐに看護師もやって来ました。

 「どうしました?」
 「いや、てっきり看護師さんを蹴飛ばしたと思ったのだが・・・。どういう理由があろうと、看護師を蹴るような患者はサイテーだよな。飲食店に行き、店員に横柄な口を利く客と変わりない。見苦しい」
 すると、オヤジ看護師が頷きます。
 「僕は若い時に、鉗子でチューブを挟むのに、うっかり患者さんの手を挟んだことがあります。逆の立場なら、さぞ痛かったと思いますね。気の毒なことをしました」

 みたいな世間話をしながら、つい先ほどのことを思い出したのですが、やはり女性の膝の上くらいを蹴った感触でした。
 うーむ。
 最近、自分のそばに、いつも誰か「女」が寄り添っているような気配があるのですが、まさかその「女」のことを蹴飛ばしてしまったんじゃあ。
 思い当たるふしは色々あります。

 看護師にその話をしようかと思ったのですが、そこで止めました。
 SNSやブログに書くくらいは、読んだ人が頭の中で「コイツは変なヤツだな」と思うだけですが、普段の付き合いの中で、気色悪い話をしたら、聞かされたほうがたまったものではないと思いますね。
 私の場合、話だけではなく、傍にいた人も、まったく同じ経験をすることがありますし。 

 「助けて」みたいな声を一緒に聞いてしまった人は、一発で私が言っていたことが事実だと理解してくれるのですが、その後はまったく傍に寄り付かなくなります。
 病室の中に、そこには居ないはずの「女」を聞いたり見たりした日には、看護師だって堪らない。

 自分の理解出来る範囲を超える事態については、ひとはまずそれを否定します。
 しかし、否定出来なくなってしまうと、ほとんどの人は大慌てで逃げ出しますね。

 足先に人の体の感触が残っており、今も気色悪いです。